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ふたり占め#4 ②
◇◆◇◆◇
ようやくテスト期間に入った。
教科書類に向かっている時はいい。
力を抜いた時、寒さを感じる。
寂しくて心が凍えそう。
早くテスト終わって……口の中で呟いて、先生の『始め』の合図で問題用紙を表に反した。
「…奏?」
「!」
名前を呼ばれてはっとすると、流風が俺の顔を覗き込んでいる。
「あ、流風…」
「どうしたの? ぼーっとしてたけど、なにかあった?」
「ううん、…大丈夫」
「熱があるとかじゃないよね?」
「うん…平気」
身体はなんともない。
心がおかしくなりそうなだけ。
「じゃあ帰れる? 藍流ももう来ると思うから」
「ん…」
バッグを持って椅子から立ったところで藍流が来て、三人で教室を出る。
いつもよりずっと早い電車に揺られて矢橋家へ。
ふたりの様子を見ていると、特別変わったところはない。
俺に触れてなくても平気なのかなって思ったら、もっと寂しくなってきた。
三人で昼食にスパゲティとサラダを作って食べる。
藍流と流風が俺の作った卵焼きを食べたいと言うのでそれも作った。
ふたりが甘えてくれるとちょっと寒さが和らぐ。
俺はふたりに求められないとだめになってしまったみたいだ。
昼食後はいつも通り藍流の部屋でテスト勉強。
勉強は嫌いじゃない。
好きか嫌いかって聞かれたら好きって答えると思う。
…でも、今は嫌い。
勉強なんかより藍流と流風に触れられる事が俺には必要。
そうじゃないと心が凍傷を起こしてしまう。
「…藍流、流風」
シャーペンを置いて声をかける。
「なに?」
「どこかわからない?」
流風と藍流は優しく微笑んで俺に聞く。
顔が熱くなってくるけど、そんなの別に構わない。
恥ずかしくたっていい。
寒いのはもう耐えられない。
「………抱いて」
「!!」
縋るように藍流と流風を見つめると、ふたりは目を瞠って言葉を詰まらせる。
テーブルに置かれた手を包むように握ると、ふたりの手がぴくっと少し震えた。
「奏?」
「どうしたの?」
突然の俺の言葉に藍流も流風も焦っているように見える。
俺に触りたくないのかな。
抱きたくないのかな。
…寂しいのは、俺だけ…なのかな。
「…もう、二週間以上キスしかしてない」
「そうだね」
「そういう約束だから」
そう、流風の言う通りそういう約束だ。
俺が『一緒に勉強するだけなら…』って言ったから。
でも。
「…もうやだ」
視界が滲んで、藍流と流風の姿がゆらゆらしてくる。
藍流がゆっくり口を開く。
「でもね、奏…」
「テスト勉強疎かにして藍流と流風の成績が下がっちゃったらって思うとすごく申し訳ないけど、でももう耐えられない!」
徐々に声が大きくなってしまう。
一度溢れてしまったら、もう止まらない。
今度は流風が口を開く。
「俺達の成績なんてどうでもいい。俺達は奏が…」
「俺の成績なんてもっとどうでもいい! 全教科赤点でも全教科1でもいい! そんな事より、俺はふたりに抱かれたい! …もう触ってもらえないのやだ…辛い…」
涙も一緒に零れ出る。
「奏…」
ただのわがままだってわかってる。
でも、もっと自分本位になっていいって言ってくれた。
それでも嫌いにならないって言ってくれたじゃん…わがまま言わせてよ…。
「でも…」
まだ理性を保とうとする声に涙が止まらない。
「……寂しいのは俺だけなの…?」
「……」
ふたりが顔を見合わせる。
なにかがプチッと切れた。
「もういい!!」
俺が自分のベルトに手をかけてスラックスのホックを外すと藍流と流風がまた目を瞠る。
「ふたりは勉強してれば!?」
「「えっ!?」」
「俺、自分でするから!!」
「「!?!?」」
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