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第5話

とある大学のカフェでのこと…。 「琉斗ー!!」 名前を呼ばれて琉斗は見ていたスマホから顔を上げて、声のした方を見た。 そこに居たのはゆいでV系のファッションに身を包んでいた。そして琉斗の向かいに座ると机にコーヒーを置いた。 「この間、広告を見たんだろ?マルス良かったか?」 そう言うゆいのスマホの画面には、この間のマルスのカードが映っていた。 ゆいは狂恋の重課金者で全てSSRのカードは持っているのだった。 「相変わらず凄いな、ゆい」 「ふふん、この為にあれやこれとしているからな。それでこの衣装を私が作るからマルスをやってくれないか?」 いつもこうやってゆいから誘われているのだった。コーヒーを一口飲んでから少し考えると琉斗ははっきり言った。 「奏多さんがレオンしてくれるなら」 今回のイベントはマルスとレオンがメインだった為、レオンも新衣装でカードが出ているのであった。 琉斗の言葉にゆいはため息をつくとスマホを弄ってから机に置いた。 「今、愛佳ちゃんにお願いしたから連絡次第な」 「ああ、助かる」 「あ、琉斗くーん!!」 甲高い声で名前を呼ばれて琉斗とゆいは声のした方を見ると、そこには同じ学部でまぁまぁ話をする女子達がいた。 胸を強調した服を着ていて琉斗の腕に抱きつき、その胸を押し付けてきたが琉斗は表情を変えず特に抵抗もせずそのままでいた。 「ねぇ、今度飲み会しない?」 「興味が無い」 「えー、可愛い子いっぱい集めるし…」 「興味無いって聞こえなかったか?」 ズバッと言い放つが、女子は引く気がなく…ゆいが間に入ろうと思い話しかけようとした瞬間…… バァン!! 勢いよく机が叩かれて、ゆいと女子達は全員ビクッと体を跳ね上がらせた。そして机を叩いた本人は無表情で女子を睨んだ。 冷たい目線に腕に抱き着いていた女子はゆっくり離れて謝罪をして去っていった。 「お、お前…いつもいつも怖いよ…」 「あれはあっちが悪い、俺の話を聞かないから」 「だからって、台パンは良くないだろう」 「まず人を叩いてないからいいだろう」 淡々と喋りながらスマホの画面を弄る琉斗の姿を奏多に見せてやりたいと思ったゆいだった。 高身長のイケメンで、大人びていて、同い年に見えない琉斗は女性人気が高いが…琉斗自身は恋愛系に興味がなかった。 だから女子達が狙っているのだが…まさかの琉斗のお気に入りは気怠げでワイルド系イケメン王子のレオンのコスプレをしているが、普段はほわほわしていて優しげな奏多なのであった。 「本当…琉斗は奏多さんにしか興味がないな」 ボソッと呟いたゆいだったが聞こえたらしく琉斗の目とバッチリ合ってしまい、まずい…と思ったが、フッと笑うと琉斗は口を開けた。 「ああ、奏多さんのこと大好きだからな…」 そう言う琉斗の顔は先程女子達に見せた冷たいものではなく、優しげな微笑みだった。今まで一緒にいて、あんまり見たことない表情でゆいは顔には出さずに驚いてしまった。 「あの人は可愛いのに、何でレオンの様なワイルド系のイケメンを選んだんだろう…でもレオンの格好でも可愛いとか天才だね…」 うっとりしながら呟く琉斗を見て、ゆいの頭には奏多のやるレオン王子が出てきた。 身長は琉斗には及ばないが、まぁまぁ高く…琉斗が美形でクールなイケメンなら素の奏多は優しい系イケメンで、ワイルド系イケメンとはレオンとは正反対であった。 だけど奏多のレオンはちゃんとワイルド系イケメンで気怠さが出ていた。 ふと頭の端にピースしている愛佳が出てきて、ゆいはフッと笑ってしまった。 「ゆい…?何に対して笑ったんだ?」 「いや、別に何でもないよ…しかし、お前…あまり近寄り過ぎるなよ?」 そう伝えたが琉斗には伝わっていないらしく首を傾げたので、ゆいは周りを見回してから顔を近づけて相手に聞こえるくらいの小声で話した。 「レイヤー同士が仲良しでも、外面はキャラの素敵な姿を借りているんだ。所謂…BLと見える様なポーズはコスイベ等の不特定多数の所ではしちゃダメだ」 「つまり…コスプレ姿じゃないならしていいと…」 「その場合でもちゃんと奏多さんの許可は得るんだからな!」 ゆいの私的に琉斗は首を傾げていて、こいつはやるな…と思ってしまった。だがそれは当人同士の問題の為…これ以上は言わない事にした。 すると、ゆいのスマホが鳴り響き、持ち主よりも先に琉斗が反応してしまいビクッとゆいの体を跳ね上がった。 「わ、分からないよ!?愛佳ちゃんじゃないかもしれないんだし!」 「いいから早く確認をしろ」 じーっと無表情で見つめてくる琉斗の威圧感を受けながら、確認するとゆいの口角は上がって琉斗の方を見た。 「愛佳ちゃんからだったよ」 「!何て?」 「お兄ちゃん連れていきます、だってよ」 聞いた途端、パァァっと琉斗の表情が嬉しそうになっており…ゆいはふーっと息を吐いて席を立ち上がって荷物を持った。 「琉斗、衣装の為に買い物行こうよ」 「ああ、行こうか。そういや…ウィッグも気になっていたんだ」 「それじゃあウィッグも見ようか…楽しみだね、琉斗」 「ああ」 2人は荷物を持つとカフェを後にして街へ向かい出したのであった。

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