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第23話 4章 義定討死
仙千代が松川家に来て三度目の年が明けた。
仙千代も自室にささやかではあったが、正月飾りをして新年を迎えた。
新年を祝うと言う気持ちにはならないが、年末年始は義政も何かと行事続きのようで、ここ離れ屋に来ないのは救いではあった。
「仙殿、新年あけましておめでとうございます。今年で十五におなりですか?」
ここに来て正月がめでたいと言うことは無かったが、十五になればそろそろ元服だ。元服すれば、伽からは解放される、その思いを込めて佑三は新年のあいさつをする。
「はい、十五になりました」
仙千代も早く元服し、この地獄から逃れたかった。ここに来てからの、伽を強いられた日々。
義政は『伽』というが、それは逃れられない凌辱だった。来る日も来る日も、屈辱を強いられた。
ここに来てどれだけの時が過ぎたのだろう……思い起こすのも苦痛だが、十五ということは、三年か……。
十二から十五、その年頃は溌溂とし、笑いさざめき……けれど己は……。三年もの時を、あの伽の部屋で過ごした。
「十五ですね……元服もそろそろですな」
佑三が言うのに、仙千代も頷いた。仙千代の元服は、二人の共通の願いでもあった。
仙千代が元服すれば、義政も仙千代を解放するだろうという望みがあった。
仙千代が来た最初の頃は、佑三も共に伽をさせられることもあったが、最近は全くなかった。義政が、大人の男に興味がないのは明らかだった。
しかし、佑三の懸念は、仙千代の体格だった。十五とはいえ、仙千代は華奢で、男の逞しさは全く感じられなかった。つまり、いまだ少年の体格だった。
佑三から見て、仙千代は義政から徹底的に受け身を覚えさせられ、その結果、男としての成長が阻まれているように思った。
十二歳で、いまだ精通も経験していない少年の身で、来る日も来る日も、受け身を強いられた。受けることだけを覚えさせられた。
三年が過ぎた今、仙千代はどこか妖艶な美貌が、ある種壮絶な色香をまとっている。その意味では成長していた。しかし、男らしさを感じられるかと言えば、それはあまり無い。
しかも、仙千代は義政から、剣や弓の稽古を許されていなかった。
そこが義政の狡猾なところで、仙千代が男の体になるのを阻んだのだ。つまり、仙千代は、男としての成長を阻まれていたとも言える。
義政は、仙千代を徹底的に女にしていた。男になることを許さなかったのだ。
それでも、永遠にこのままというわけではさすがにない。仙殿、早く大人になれ……それが今の佑三の最大の願いであった。
今一人仙千代の元服を待ち望んでいるのは三郎だった。主の苦悩を間近で見てきた三郎の苦悩もまた深く大きかった。
三郎も、仙千代が元服すれば、この地獄から解放されると期待していた。
この時代の衆道は、主君や上役が小姓や若衆を相手にしたが、その関係は受ける側が元服するまでだった。
三郎は、その慣習に望みをかけていた。
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