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第3話
ううん、と唸り、メアリルは寝返りを打つ。心地よく清潔なシーツからはお日様の温もりを感じた。
昨日、シーツを干しただろうか。いや、そんなことはない。昨日は突発的な発情期に見舞われ、古い物置小屋に身を隠して、その時に国王となったラインハルトと再会して、薬を貰い、口移しで水を飲ませてもらって。
そこまで思い出し、メアリルはがばりと勢いよく、身体を起こした。
(寝てる場合じゃない!)
窓がひとつしかなく、埃っぽい部屋で過ごしていたのに、今、メアリルが寝ているベッドは清潔で、広い。天井も高く、部屋も整えられていて、大きい窓から日差しが降り注いでいる。
ここは神殿の客間だ。なぜ自分がこんなところで寝ているのかわからず、メアリルは混乱した。
「身体はどうだ? 発情は楽になったか?」
新しいワイシャツに紺色のスラックスを履いたラインハルトと目があった。
「……おはよう、ございます」
呑気に朝の挨拶をしている場合ではないのだが、それしか言葉が出てこなかった。
「おはよう」
ラインハルトは挨拶を返し、柔らかく微笑む。そしてベッドに近づき、メアリルの頬に手を当てた。
「もう熱は下がったな、フェロモンも薄くなったし……、外には出られそうだ」
その言葉を聞き、いてもたってもいられず、メアリルはベッドから飛び出した。そのまま上等な絨毯が敷かれた床に平伏する。
「へ、陛下……、さ、昨日からの数々の非礼を、どうかお許し頂きたく……」
「やめろ、いきなり何をしている。お前に臣下の礼など求めてはいない。ラインハルトでいい」
不機嫌な声が上から振ってきて、腕を取られた。無理やり立たされたが、メアリルはラインハルトの顔を見ることができなかった。
「恐れ多くも、陛下のことをお名前でお呼びすることなど、とてもできません。私は貴方を誘惑した罪人です。そのような卑しい罪人と関わると、陛下のご威光にも影響が出ます。ですから……」
「お前は罪人などではない。十年前のあれは事故だ。それに不審な点もある」
十年前の事件に言及され、メアリルはぎくりとした。
「まだ幼かった俺ではどうしようもなかった。幾度もお前の冤罪を訴えたが、兄上の妃であるエレノア様の力が強くて、裁判結果を覆せなかった。あの時の俺は非力だったのだ。すまない」
引き寄せられ、強い力で抱きしめられた。
突然の行動に戸惑う。ダメだ、と思い、メアリルは離れようとするが、それ以上の力で抱きすくめられた。
「だが今は違う。引き離されてから、お前を取り戻すことだけを夢見て、力を蓄えて邁進してきた。そうしてやっと昨日、お前に会うことが出来たのに、発情期のお前をあんなところに閉じ込めているような、そんな劣悪な環境の中にいるとは……」
抱きしめられている力が強くなっていく。メアリルはラインハルトから怒りの香りを感じた。
「こんなところにいるお前を放ってはおけない!」
堪えきれなかったのか、最後は少し口調が強くなる。
だが、怒りの香りがしているとは思えないほど、繊細な指使いで髪を梳かれる。
「昨日、沿道で群衆に紛れた赤い目を見たとき、お前だと確信した。これはきっと運命だ。もう絶対に離さない」
ラインハルトはメアリルの白狼耳の側に口を寄せた。
「メアリル、お前を俺の妃にする」
「なりません! そのようなこと!」
大きく目を見開く。ラインハルトの言葉に、メアリルは思わず大きな声を出し、拒否した。
今は発情期もある程度治まっている。だから決してフェロモンに惑わされて言った言葉ではないだろう。
罪人のオメガを王妃にするなど、古今東西、どこの国でも聞いたことがない。
「私のような者を王妃にしたい、と申されれば、それだけで国王陛下の良識が疑われてしまいます! なりません、絶対に」
「なぜだ? 俺はお前を取り戻し、お前の冤罪を晴らすためだけに今まで生きてきた。あの時だって、俺のことを好きだ、と言ってくれたではないか。ゆっくりと心を確かめ合いたい、と。それとも……」
言葉が途切れたので、メアリルは顔を見上げる。ラインハルトは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「他に好いている者でもいるのか?」
次は焦り、嫉妬の香りだ。
「それならそれでいい。ここの神官を辞職したという形にして、生涯年金が出るようにすれば生活には困らないだろう?」
「そのような者はおりません。それに職権濫用はおやめください……」
何だかどっと疲れが押し寄せてきて、メアリルはラインハルトから身体を離し、ベッドの縁へと腰掛けた。
再び会えて嬉しいはずなのに、なぜこんなにもすれ違っているのだろう。しかもラインハルトも同じ思いだったのだ。なのに、どうしてそれを伝えることすらできないのだろう。苦しくて仕方なかった。
「陛下、私は遠くから貴方のことを思っています。それだけで十分ですから、どうか、国王としての役目を果たしてくださいませんか?」
「それならお前もあるだろう。最後の白狼一族としての役目が。それはどう果たすつもりだ? どこぞの生まれもわからないアルファに身を委ねるつもりか?」
もうこれ以上、ラインハルトの負の感情を煽りたくはない。メアリルは俯き、両手で顔を覆った。
「俺がお前の役目を果たしてやる。それなら構わないだろう」
国王と罪人の白狼のオメガの子など、どこの宮廷が王族として認めてくれるというのか。
「陛下、私の心情をご理解くださいませ。どうか、どうか……!」
二人の言い合いは平行線を辿っている。
ラインハルトの、自分に対する思いはとても嬉しい。少し強引だが。
おそらく群衆の中にメアリルを見つけたラインハルトは、メアリルがここの神殿にいることを突き止めたのだろう。そして予定を変更し、ここに泊まったラインハルトに、救民院の少女が何か言ったのだ。白狼一族と言えば、メアリルしかいないだろうから、そこでピンと来たに違いない。
「私がわざと陛下を誘惑したわけではないことを理解してくださっていただけで光栄なのです。それだけで十分なのです。貴方と引き離され、辛い日々を過ごしていたこれまでも、貴方がいないこれからも、全て救われた気持ちなのです」
「……メアリル」
ラインハルトは縋るような目をした。気丈に振る舞っていた彼の弱さを見た気がして、メアリルは心が折れそうになる。
(大切な人を傷つけてしまう……、そうであっても……)
それ以上は望みません、と言葉を繋げようとした時だった。
「陛下、起きていらっしゃいますか? 近衛騎士の方がお見えです」
三回扉をノックされた。扉の向こうから男性の声が聞こえる。
「余は起きている。入れ」
先ほど、縋るような表情だったラインハルトの口調が変わり、すっかり国王の顔へと切り替わった。
誰が来るならメアリルがいるのはまずいだろう。しかし身を隠す暇も場所もない。
扉が開くと、軽装備の騎士が入ってきた。
「おはようございます、国王陛下」
「ああ、おはよう」
立ち上がっているラインハルトの前で近衛騎士が片膝をつく。
そしてメアリルの方をチラッと見た。
「お耳に入れたいことがございまして……」
「なんだ? あの白狼は余の妃として迎える予定の者だ。何を聞かれても構わん、話せ」
「いや……、ですが、その」
騎士は気まずそうにメアリルをチラチラと見ている。
これはこの部屋を出るチャンスかもしれない。メアリルはすかさず口を挟んだ。
「私はこの部屋を出ますから、どうぞお二人で」
「良い、余とこの者が出る。お前はここにいろ」
そう言って二人は素早く廊下へ出て行ってしまった。メアリルの考えはどうやらバレていたようである。
白狼耳を動かし、外を探ってみると、二人が扉のすぐ前で話しているのがわかった。だが、内容までは聞き取ることができない。
しばらくすると、部屋にラインハルトが一人で戻ってきた。
「お前、一体どんな状況で今まで過ごしていたんだ」
香りを感じるまでもなく、ラインハルトが怒りを覚えているのがわかった。
「ここの神官どもは、お前を王都へ連れて行くのなら金を寄越せ、と言って来たらしいぞ」
これには、メアリルの眉間にも皺がよる。メアリルがいなくなれば神殿にとってはお荷物がひとつ減って好都合ではないのだろうか。
「どうやら田舎の下級貴族がお前を妾に、と言って、ここの神官どもに金を渡していたようだ。それで来月には引き渡すつもりだったらしい。今度は莫大な寄付と引き換えに」
ラインハルトの拳がぶるぶると震えている。
「もうだめだ、限界だ。お前が何と言おうと連れて行く。こんなところに居れば、お前は食い物にされるだけだ」
「そんなお金があったなんて……」
「大方、腐敗した神官たちの懐に入っていっただけだ。ここの貧民たちには何一つ還元はされていない。俺が国王になったのはこういう腐敗をなくすためなのに……」
今度は悔しそうにラインハルトは歯を食い縛る。
そして、メアリルに鋭い視線を向けた。
「あと少しの日程で、俺の地方視察が終わる。お前も一緒に連れて行く。その後は王都へ連れて帰るからな。異論は認めない」
キッパリと宣言され、メアリルは言い返すことができなかった。昔からラインハルトはは頑固だ。今、何を言っても聞き入れてはくれないだろう。
「俺がいない間は見張りをつける。もし逃げ出したら、お前の代わりに見張りが罰されることになると心得よ」
「……はい、陛下」
もうラインハルトの指示に従うしかない。メアリルはしゅんと項垂れ、自分の尾をかき抱いた。
ラインハルトの地方視察はメアリルがいた町で終わりであった。そして、一週間ほどの時間をかけ、王都へと戻ってきた。
王都へと足を踏み入れるのは十年ぶりだ。田舎の辺境とは違い、人も物も動物も多く、賑わっている。
国王が帰都されたということで、沿道には人が多く集まり、みんな馬上のラインハルトに向かって手を振り、声を掛けていた。
メアリルはと言うと、外から中が見えない馬車に乗っていた。見張りが付けられている。
外から見えないように、とお願いをしたのはメアリルの方だ。
あの事件は公にはされていないものの、罪人とされたメアリルが王都に戻ってきたことを知ったら、反対する者もいるだろう。そうなれば、メアリルを連れてきたラインハルトに対して横槍を入れる者が出てくるかもしれない。
(私の存在がバレていくのは、時間の問題だとはわかっているけれど……)
自分の存在を極力目立たせたくなかった。
公道を進み、列は王宮の敷地内へと入っていく。
突然馬車が止まり、扉が開いた。
「ご苦労、余が変わろう」
メアリルに関してはこういうことも増えてきたので、見張りも不思議そうな顔はしない。
メアリルの目の前にラインハルトが座った。
「これからお前の住まいへ連れて行く」
「もうお好きになさってください。私の意見はどうせ聞き入れてくれないのでしょう……」
ひたすら悲しい。昔も強引なところはあったが、ここまでだっただろうか。
メアリルの呟きに対して、ラインハルトは何も応えなかった。膝の上で拳を握り締めている。
馬車の中は気まずい沈黙が続いていた。
「陛下、メアリル様、着きましたよ」
しばらく敷地を走っていると、扉が開けられた。
「足元が危ないから気をつけてくれ」
メアリルは返事をする気が起きず、こくり、と小さく頷き、つけられた階段を降りた。
もう屋敷まで用意されていて、心がざわついた。ここで働く使用人たちはメアリルのことをどう見ているのだろう。
品のいい屋敷だ。かなり大きい。そして庭もあった。
「なあメアリル。明日、昼頃に時間を作ってくれないか? 見せたいところがあるんだ。今日はもう俺はここまでしか時間がないから」
「……わかりました。また明日お会いしましょう、国王陛下」
ちらり、とラインハルトの顔を見ると、不安げに視線が揺れていた。メアリルはすぐに目を伏せ、ラインハルトがいなくなるまで見送った。
昨日からここに住み始め、与えられた屋敷は国王が愛妾や愛人を住まわせるところだと気がついた。
(愛妾や愛人なんて……、ラインハルト様のために私は何も役に立てない、ただのお荷物なのに)
いっそ、使用人棟の一室とかの方が気楽だったかもしれない。
ふう、とため息をつき、出してもらったハーブティーを飲む。ハーブの効いたそれは香り高く、後味に爽やかさを残してくれる。
草木の涼やかな香りにメアリルは傷ついた心を慰められた。
「御髪を解きますね」
側にいた侍女に、髪に触れられる。
今日は昼からラインハルトと会う予定がある。
ラインハルトが来たら、どこかへ連れ出されるだろうから、動きやすい髪型を頼むと、後ろで一つにまとめ上げられた。
服も尾がきつくないよう、ゆったりとした一枚布のような服を選んでもらった。
今は春と夏の間だ。長袖を着ていないと、風で身体が冷えてしまうし、かといって厚着をするほどでもない。
良い季節だと思う。地方にいたときは花を育てる余裕もなかったが、屋敷の庭をいじるのも良いかもしれない。
どうなるのかわからないのに、植物のこととなると、ついそちらへ考えが向いてしまう自分を少し面白く感じる。
(悪いことばっかりじゃない……)
遠方にいた時は様々な雑用を押し付けられ、働きつめで、発情期の関係もあり、植物を育てるということはできなかったし、『余計なことをするな』と言われ、植物を育てることをそもそも禁止されていた。なので植物図鑑を眺めて、無聊の慰めとしていたのだ。
だがここではまた植物を育てられるかもしれない。そこはラインハルトにも感謝をしないといけないな、と思い直す。
側のテーブルの上の白い花瓶にはダリアが一輪挿しにされている。
ダリアは秋に咲く花だった、と記憶していた。だから今の季節、こんなに綺麗に咲いているダリアが飾られているのは妙だ。
メアリルが侍女の一人にダリアの出どころを尋ねようとした時だった。
「メアリル様、国王陛下がお見えになられましたよ!」
年若い侍女の弾んだ声がメアリルを呼ぶ。
「今、向かいます」
ラインハルトに会うのは気が進まない。また彼のことを否定してしまうかもしれないからだ。本当にそれが嫌だった。
(また王妃になってくれ、とか言われたら、どうしよう……)
メアリルは顔色を暗くしながら、玄関まで向かった。すでにラインハルトが待っている。
「お待たせしました、陛下……?」
その姿を見て、メアリルは驚いた。いつもラインハルトは上等なワイシャツにキッチリ皺が引き伸ばされたスラックスを履き、靴は滑らかに磨かれているような、完璧な服装をしている。
だと言うのに、今はどう言うことだろう。
どこかの農民に使い古したシャツやパンツを借りてきたのではないか、と思うような格好をしているのだ。
しかしメアリルの侍女たちも、ラインハルトの使用人たちも、別に不思議そうな顔はしていない。
(おかしいと思うのは私だけなのかな?)
ちょっとした疎外感を覚えていると、ラインハルトは男臭く笑った。
「挨拶なんか良い、早く行こう。見せたいところがあるから」
そう言って、ラインハルトはメアリルの手を取ろうとしたが、メアリルは自分の手を引っ込めた。
そんなことをして、嫌われるかもしれない、という思いが胸の中に湧き上がり、怖くなった。不安で、手の小指の先が震えた。しかしここで手を取ってしまえば、ラインハルトはメアリルが応じてくれるかも、と期待をしてしまうかもしれない。
(私はラインハルト様には何も……、できない)
メアリルに拒否され、一瞬、傷ついた表情をしたラインハルトだったが、すぐにまた笑顔に戻り、白い歯を見せた。
「行こう、お前の機嫌もきっと治るぞ」
「は、はい……」
違和感を覚えつつも、メアリルはラインハルトについていく。バレないよう、くん、と嗅いでみると、わくわくしていて、昂った感情の香りがしていた。
(何だか子供みたいにはしゃいでいるなあ……、珍しい)
再会してから、どちらかと言えば、ラインハルトの『国王』としての顔を見ることが多かった。
メアリルと話している時は素に近いとは思うが、二人はとにかく意見が衝突することが多い。未だにこの待遇に納得していないメアリルはラインハルトのことを否定しがちだ。その度にラインハルトは焦りや悲しみの香りを纏っていた。
先ほどもラインハルトを傷つけてしまった。好きな人を、自分を好いてくれる人を傷つけてしまうのはメアリルとて不本意である。
「ここは……!」
「見てくれ」
視線の先にあるものを見て、メアリルは懐かしさに思わず涙が溢れそうになった。
十年前と全く変わらない。少し建物は古くなった気がするが、綺麗に管理されていて、中から色の濃い花々が垣間見えている。
そこは温室だった。メアリルが十年前に管理し、植物や花々を育てていたところだ。
「嬉しい、よかった……」
実はもう既に取り壊されているのではないか、と考えていた。なのでそのまま残されていることがすごく嬉しくて、勝手に尾が揺れてしまう。
メアリルは温室に駆け寄る。扉の側には季節外れのダリアが花を咲かせていた。
「これは屋敷にも飾ってあったダリアですね」
「そうだ、お前が残したものだから……、色々と工夫して、季節外れのダリアを今でも咲かせている」
「ありがとうございます……」
胸に込み上げてくるものがある。ラインハルトはずっとメアリルのことを思ってくれていたのだ。
「俺は絶対にお前を取り戻すと兄上の墓前で誓った。だからここも、いつお前が戻ってきても良いようにそのまま残しておいた」
ダリアの奥をみると、園芸に使う器具も整理されて、きちんと磨かれているし、当時、メアリルが育てていなかった草花も植えられ、育てられている。
「今度はお前にここを任せる。好きな時に来て、好きなように花々を育ててくれ。そしてたまに俺も手伝わせてほしい」
昔と変わらないラインハルトを見て、胸が熱くなる。本当に好きだ、と心の底から愛しい気持ちが溢れそうになった。
メアリルは何も言えず、こくこく、と頭を縦に振る。堪えきれずに溢れた涙がきらきらと頬を濡らす。
「ありがとうございます、嬉しくて……、私は陛下に、貴方に何を返せるのか……」
「お前が幸せそうに過ごしているだけでいい。それだけの環境を整え、俺は準備をしてきた。まずはゆっくり過ごそう、ほら腕をあげてくれ」
素直に右手を上げると、上着の袖を肘あたりまで捲られる。左腕も同じようにされた。
「これで袖が汚れないだろう?」
悪戯っぽく笑われた。いつかの、ラインハルトとメアリルのやりとりだ。懐かしくて、あの頃に戻ったようで、胸が熱くなった。
「今度は中を案内しよう、俺だけで育てたものもあるから、お前に自慢がしたいんだ」
「はい、見たいです。貴方が育てたものを」
メアリルは、今度は自分からラインハルトの手に自分の手を重ねた。
(今はこれぐらいしか、私にはできないけれど……)
メアリルから手を握られ、ラインハルトは目を一瞬だけ大きく瞠った。驚いたようだ。しかしすぐに柔らかな視線をメアリルへと向ける。
日差しがガラス張りの天井から降り注いでいる。もうすぐ夏の気配がしていて、青臭い植物の香りに、メアリルはわくわくした。
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