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第1話:要と愛之助の場合

「ただいまー」 ドタドタ・・・ 「聞いてよぉ!要ちゃ〜ん!!」 会社から帰るとすぐに、家の奥から駆けてきた男に抱きつかれそうになり、要はその人物の頭をガシッと掴み阻止する。 「帰ってそうそ、ううるさいぞ」 無表情で答える要に、彼の目の前の男・愛之助はぐすぐすっと泣きながら、 「ひどいよ!傷心の弟にそんな冷たい言葉」 彼の言葉を聞いて、 「また振られたのかよ」 呆れて呟くと愛之助はまたじわっと泣き出す。 要は煩いとばかりに彼を押しやり、家の中に入っていく。 要(26)の母親と、愛之助(20)の父親が再婚したことで、2人は6年前から義理の兄弟になった。あまり人と馴れ合う事のない要は自分から話すことはなかったが、愛之助の方が人懐っこくあっという間に要に懐いた。そしてこの愛之助なんと惚れっぽく、すぐに誰かに一目惚れをし、そしてなぜかすぐに振られるらしい。その度に要に泣きついてくるのだった。 最初は年がら年中恋している愛之助に驚いたものの、さすがになれた要は自分の部屋に移動しながら、彼のぐちを右から左に受け流す。 「でさ〜、そいつなんて言ったとおもう?」 「なんて言ったんだよ」 「最初は可愛いと思ったけど、好き好きうるさいって」 「へえ」 自分の部屋に入り、カバンを置いて、着替えるためにネクタイを外す。 「付き合ってるんだからいいじゃんね」 「押されたら引くんじゃねえ」 「えー」 愛之助は要のベッドに座り、クッションを抱え、 「俺は付き合ったら四六時中一緒にいたいけどなぁ」 呟きながら、着替えをしている要の後ろ姿を見つめる。 自分より頭一つ大きい彼の、シャツを脱いだ筋肉の付いた背中をじっと見つめる。 あんな、力強い腕に抱かれたいなーと想像し始めると、 「おい、着替えるんだから出ろよ」 「ちぇー」 愛之助は残念そうに、彼の部屋を出ていく。 (ちぇじゃねーよ) と、内心毒づきながら着替えを終わらせ、食卓に戻る。 「あのさ」 遅めの夕食を食べながら、食べるわけでもないのに要の向かいに座り彼の食事をニコニコと見守る愛之助。 「要って本当に男前だよねぇ。それなのに恋人がいないなんて信じられない」 向かいで頬杖をつく愛之助に、要は呆れ顔で、 「お前と違って、興味ないんだよ」 「もったいない」 「めんどくさいんだよ。惚れたのなんだの」 昔から人と深く付き合ったことはない。人にもモノにも執着がない事は自覚がある。 恋人もいた事もあるが、それも相手から付き合って欲しいと言われ、何もリアクションをしない要に、あっさりと離れていき、それでも悲しいとか思わなかった。 要は食事を終え、向かいの愛之助に、 「お前はなんでこんなに振られても、懲りないんだよ」 愛之助は、じっと要を見つめ、ふと考え込むと、 「さあねー」 「ちゃんと考えたら?」 食器を片付ける要の後ろ姿を、愛之助はじっと見つめた。 実は愛之助の恋愛対象は男だが、要には言ってない。 きっと引かれる。普通の人はそうだ。人に関心のない要の事だから、もしかしたら何も言わないかも知れないが、何故か要には知られたくないと思った。 そんなある日、 仕事帰りに要は、大学時代の友達と飲んでいた。 「そういえば、上手くやってんの?家族とは」 進藤 和美とは何故か大学時代に気が合いいつの間にか、友達付き合いが続いている。 要は目の前の女性に、厳密には女装した男に顔を向ける。 声も昔から高めのためどっからどう見ても女性に見える。 はたから見たらまるでカップルである。 「まあ、もう親が再婚して6年だからな」 「愛之助くんだっけ?可愛い弟くん。もう大学生かー早いね」 「可愛いってなんだよ」 「うちの弟が、愛之助くんと同じ大学だからさー、大学で可愛いって評判らしいよ」 「だから、頻繁に恋人が出来るのか…」 要は頭を抱える。 「でも男が可愛いって評判って、付き合う女も大変だよな」 「え?」 「ん?」 『……』 二人は顔を見合わせる。 少しして、和美は、あー、となにかを察したらしく、 「なるほどね」 「?なんだよ」 「別に」 和美は曖昧に答える。 (愛之助くん、要には言ってないんだ) なら、自分がバラすのはダメだとそれ以上は口を噤んだ。 妙な反応を返す和美を不思議がる要に、 「要も頑張んなよ」 「俺はいいんだよ。めんどくさいし」 「愛之助くんも気の毒に」 「?何がだよ」 「いいえ」 そして二人はそれぞれの帰路につく。 その途中、 「何だよ、やっぱり付き合えないって!」 ある店に影で声を荒げる男の声、 (痴話喧嘩かよ…) なるべく見ないようにすどおりしようとすると、 背の高い男に肩を掴まれているのは、愛之助だった。 「ごめん…」 要は思わず建物に隠れて、悪いとは思いつつ聞き耳を立てる。 (なんて場面に遭遇するんだよ、俺は) 「さんざんしつこくアプローチしておいて、いざホテル行こうって時におかしいだろ!」 「だって、そんな気にならなくなったんだもん」 そんな気?相手は男だぞ? どういう事だ? 要は思考が追いつかなくて、ただ話を聞いていた。 男は恥をかかされたのか、怒り心頭で、 「何が気に食わないんだよ」 「だって」 愛之助は、目の前の男から顔を背ける。男はつづける。 「俺の友達も、前にお前と付き合った事あるらしいけど、いつもお前から告白して、相手を振ってるんだってな。なんか理想の男が兄貴で、いつも比べてるんだってな」 それを聞いて、 「?????????」 全く何を話しているのか分からなかった。要も理解に苦しんだ。 「だって兄貴よりカッコいい男なんていないもん!」 「だったらその兄貴にでも抱いてもらえ!ばかやろう!」 吐き捨てて男は走り去っていった。 それを見送り愛之助は踵を返すと、 そこには要がいた。 呆然と立っていた。 愛之助はサアっと青ざめた。 「い、今の聞いてた……?」 「え、あ、う、うん」 まだまだ呆然と愛之助を見る。 聞かれた。全て。 聞かれたんなら、もう隠す必要はない。 要は、脱力したまま、 「お、お前、男と付き合って、てかさっきのって…」 愛之助はグッと拳を握りしめ、 「そうだよ…」 嫌われてもいい、引かれても良い、もうどうにでもなれ。 「そうだよ!!俺の恋愛対象は男だし、俺はっ、俺はっ」 愛之助は顔を真っ赤にして、 「俺は要が好きなんだよ!!」 「は、はあ!?」 何だかつられて赤くなる要。 「初めて会った時から、顔もドタイプだったし、風呂上がりなんてずっとムラムラして、要に抱かれる妄想して抜いてたし」 「なっなっなっ」 「要は兄弟だからって、絶対手なんて出してくれないだろうから、他に好きな人でも出来れば諦められると思って、色んな人と付き合ったけど、キス以上は無理だったし要以上にカッコいい人なんていないし!!」 泣きながら叫ぶ愛之助。 「!!!!」 これ以上無い告白をされて、要は完全に固まる。 愛之助はびしっと要を指差し、 「見てろよ! これから絶対に俺のこと好きにさせてみせるからな!!」 「はあ!? ち、ちょっと、お前何言って…って、聞けよ」 言うだけ言って、駆け出す愛之助。 …いや、帰る家一緒だから。 弟が俺を好きだと言ってきた。 これからどうする? どうしよう、俺。 どうしよう! 俺!! 「で、どうするの?」 相談があると呼び出されて、和美は頬杖をついた。 一応女装バーを経営している和美は、結構忙しいが、 電話でも分かるくらい、切羽詰まった要が面白すぎたので来てみた。 「ど、どどどどうしよ」 明らかに動揺している。 「あんたって、ほんと鈍いもんね」 「そ、そんなことないだろ」 「言っとくけど、あんたの話聞くだけで、愛之助くんがアンタの事好きだって分かるわよ」 「えぇぇ」 「もう抱いちゃえばいいじゃん」 「ば、馬鹿言うな!弟だぞ」 「義理でしょ」 「うぐぐ」 慌てる要を、そのあとぐちぐちと、 和美は要にどれだけ鈍いか説教して、その夜は解散となった。 (疲れた…) 脱力して、要はベッドに倒れ込んだ。 この数週間、どうしたら良いか分からず、思考をフル回転させていた。 慣れないことをして要はそのまま眠ってしまった。 「要ー、ご飯たべ」 部屋を開けると、要は深く眠っていた。 愛之助はそーっと近づき、顔を覗き込む。綺麗な寝顔をして眠っている。 (あー、襲いたい…) 愛之助はぐっすり眠る要を、グイッっと仰向けにし、 彼の頬を押さえ、チュッとキスしてみる。が、起きない。 要の口を開けさせ、舌を入れる。 部屋にヤラシイ音だけが響く。 はあっと、口を放して、愛之助が気が付くと要のモノが勃っていた。 まあ、自分も勃っているが。 愛之助は要のワイシャツのボタンを外し始める。 筋肉質な胸板が顕になる。自分もシャツを脱ぎ彼の上にまたがる。そのまま肌と肌をくっつける。肌のぬくもりが気持ちいい。そのまま要のズボンのファスナーを下ろし、彼のモノを出し、自分のモノと擦り合わせる。 「んっ……」 感じるような声を漏らす要に、愛之助はさらに興奮した。 そのまま下をいじりながら、要の首にキスをする。 そこで、 バシッ!! 愛之助の頭にチョップが炸裂する。 翌朝 要は不機嫌だった。 歯を磨いている要の後ろで、愛之助はじっと彼を見て、 「まだ怒ってるの?昨日寝てる間に、オナったこと」 「…‥」 「気持ちよさそうだったのに」 すると、バッと要は振り返り、 「…じゃない」 「え?」 「そうじゃなくてっ、いや、それもあれだけどっ」 赤くなったまま愛之助を睨み、 ぐいっとワイシャツの襟をめくった。 「これだよ、これ!」 「え?」 言われて愛之助は、要の首をじっと見つめる。 要の首に付いた赤い痣。 愛之助は、ニヤニヤしながら、 「あら、気がついちゃった?キ・ス・マーク♡」 「やっぱり、お前わざと…」 これ以上無いくらいわなわなと顔を赤らめる要に、愛之助は嬉しくなり、 「もっと、意識して俺のこと」 耳元で呟いて、 赤くなって動きを止める要を置いて大学に行った。 予想外だった。 要は完全に愛之助に押されていた。 しかも、最近愛之助が可愛くて仕方がない。 どうした俺… ーーーーなんて事があったのに。 ここ2ヶ月、愛之助の帰りが遅かった。 大学との往復だったら、夜10時を回ることはなかったが、 ここ最近バイトを始めたらしい。 家の前で車の音が聞こえ、要は窓から外を除いた。 タクシーで誰かに送ってもらったようだ。 愛之助が降りた時にタクシーの中にいる人物が見えた。 キレイな男性が乗っていた。男性は窓から覗くこちらに気がついたのか、 愛之助をぐいっと引張り彼と何かを放し一緒に降りてきた。 そのまま愛之助は、彼を一緒に連れてきた。 「ただいまー」 愛之助はつかれた様子でドアを開けた。 「おかえり。遅かったな」 「え、うん」 「そちらは…?」 要が促すと、綺麗や長身の男はお辞儀をする。 「バイト先のバーの店長の柴田レイヤさんだよ。片付け手伝ったら送ってくれたんだ」 「初めまして。柴田です。愛之助くんにはいつもお世話になっています」 「こちらこそ、いつも弟がお世話になってます」 あまりに綺麗で見とれてしまいそうだ。 「今度うちのバーに来てください。お兄さん」 「ど、どうも」 その後、両親にも遅くなって申し訳ないと、謝罪をして店長は帰っていった。 「キレイな人だな店長さん」 両親が寝静まり、部屋着に着替え終わった愛之助と、 ソファでアイスを食べながら、要は呟いた。 「でしょ?優しいし、男前だよね」 言ってちらりと隣の要を見る。彼は黙ってアイスを食べ終わり、 「妬いた?なーんて…」 愛之助は冗談っぽく笑い飛ばそうとするが、 要は、ソファの上で体育座りをして、顔を隠したまま、 「………………」 黙り込んだ。 「……?」 愛之助の反応がなく、要はそっと顔を上げた。 すると、愛之助はわなわなと震えてこちらを見ていた。 「要が……俺に、ヤキモチ妬いた……」 「ち、ちがう!!」 要は慌てて部屋へ帰っていった。 バタン! 勢いよく部屋に戻り、要はドアの前でへたり込む。 (そ…そんなわけない) さっきあの店長に嫉妬した。認めざる負えない。 『あっ…』 色っぽい声で、愛之助は一人でシていた。 「かな…め、はあっ」 愛之助は自分で乳首をイジりながら、後ろに指を挿れていた。 いけない場面を見ている。でも、要は目が放せなかった。 『要…挿れて』 汗と精液であられもない姿で、悶えている。しかも要の名前を呟きながら。 要はたまらず、彼の部屋に入り、愛之助を抱きしめ後ろに挿れ…‥ 「!?」 そこで目が覚めた。 やけに生々しい夢だった。要は呆然として天井を見つめた。 (なんて夢だ…) たまたま仕事で遅くなったある日、 そういえば、愛之助は今日バイトだったはず。 気になって、要は一緒に帰れないかと,あのバーに行くことにした。 繁華街の一角に、『オレンジストーン』というバーが会った。 前に愛之助に店長の名刺を見せてもらっていたため覚えていた。 ちらっと中を除くと、愛之助は明るく接客をしていた。 何だか上手くやっているようだ。 「おつかれ。愛之助くん」 店長のレイヤは、掃除を終えた愛之助に声かけた。 「あとは俺がやっておくから、もう帰りなさい」 「ありがとうレイヤさん」 愛之助はエプロンを外す。 「愛之助くんのお兄さん、カッコいい人だったね」 「はい」 嬉しそうに返事する愛之助に、 「でも、両思いになるのは難しいんじゃない?」 「え」 「彼はあくまで君を弟としてしか見てないよ」 急に核心を突くことを言われ、ドキッとする。 「…そ、そうかも知れないけど」 レイヤはドアの前にいる人物に、気がついて。 愛之助の顎をぐいっと上に向け、小声で彼に耳打ちをする。 「君の、愛しのお兄さんが,心配して迎えに来てるよ」 「え」 そのまま愛之助の腰にそっと、手を回し、 「僕が、ここで君にキスしたら、彼どんな反応示すかな」 完全に面白がっているレイヤ。 「愛之助くん、可愛いから俺でも抱けるかも」 と、愛之助の顔にキスしようとする。 ガシッ 愛之助は、レイヤの胸ぐらを掴んでグイッ持ち上げる。 身長差があるため釣り上がることはないが、 多少苦しい、 「あ、怒った?怒っちゃった?愛之助くん」 明るく笑うレイヤ。 「あんまり要をからかうと、淳さんにチクります」 「うう」 淳とは、この店の常連客でレイヤの想い人。 彼も恋愛対象は男だった。 「しかもレイヤさんネコでしょ」 「ふふふ」 愛之助は彼の胸ぐらから、手を放し帰り支度をする。 「俺たちに八つ当たりしないでくださいね」 ニコっと笑い、愛之助は店を出る。 今の二人のやりとりを始終見ていた要は固まっていた。 「要ちゃん、おつかれ。心配して迎えにきてくれたんだ。ありがと」 いう愛之助は、固まったままの要を見上げ、 「おーい」 「ちょっと‥‥説明してくれ」 「はいはい」 愛之助は呆然とする要を引っ張って帰る。 「要が迎えに来てるのに気がついて、からかっただけだよ」 「そうなのか…?」 「それに、あの人常連客に片思いしてるから」 意外な話を聞いて、要はびっくりする。 「それに」 愛之助は要の手を握り、 「俺は、誰に迫られても、要一筋だし」 「…っ」 ドキッとして要は彼を見下ろした。 はっきり言い切った、愛之助が何だかカッコよくて。 「お前カッコいいな」 「今頃気づいたか」 愛之助はははっと笑う。 「要」 「来週のの土日空いてる?」 「?うん」 「二人で温泉行かない?要来週、誕生日でしょ?」 「え、うん」 「旅行プレゼントしてあげる」 愛之助の言葉に、はたっとする要。 「お前もしかして、バイト始めたのって……」 その言葉に愛之助は嬉しそうに笑う。 そう、愛之助は要の為にバイトを始めたのだった。 社会人の要とは、どうしたって対等になれない。 まだまだ、追いつけないけど。 早く二人の間の距離を縮めたい。 愛之助は必死だった。 そして週末。 電車で2時間程の、有名な温泉街。 その一番いいホテルを愛之助は予約していた。 内風呂のある、景色のいいツインの部屋。 荷物をおいて、二人は付近を探索した。 近くの滝が有名な公園を見に行って、繁華街で買い物をして、 要と愛之助はめいいっぱい楽しんだ。 両親が再婚後、長く一緒にいる時間は今までなかった。 「こんなに一緒にいるの初めてだね」 「そうだな」 遠くに大きな滝を見ながら、ぶつやく愛之助に、要も賛同する。 「親の再婚で、初めて兄弟が出来て、最初は戸惑ったけど」 「そうは見えなかったよ」 愛之助にはいつも要は冷静に見えた。緊張なんてしてないt様に見えた。 いつも飄々としていて、慌てたりするのは自分だけだと。 要は、愛之助の頭を撫でながら、 「お前は始めて会った時から、可愛かったよ」 「へ?」 いつもより優しい顔で要がこちらを見ている。 愛之助はやけにドキドキした。 そのまま手を繋いで歩いた。 その夜。 夕食のバイキングを食べ、浴衣に着替えて花火を見に行く事。 その際も、愛之助は要に手を引かれていた。 ドキドキが止まらない。 夜空に広がる大輪の花を二人で見上げながら、 人の少ない丘の上に、並んで立って花火を見上げていた。 「俺さ」 ふいにつぶやき始める要。 「小さい頃から、母親しかいなかったから、家族が増えるって聞いてすごく嫌だった」 愛之助は綺麗や彼の横顔を見つめた。 要は愛之助の方は見ずに、 「昔から家に一人で留守番が当たり前だったから、人との接し方が分からなくて。でも直之さんは…お前のお父さんは本当に優しい人で、母さんを幸せにしてくれるんだって、ホッとしたんだ」 本当に要は優しい息子だ。 愛之助は自分の父親が、要のことをすごく、褒めていたのを覚えてる。 「ましてや、初めて兄弟が出来て、こんなに甘えられるとはさ」 「うぅ」 「でも悪い気はしなかったよ」 「え……」 要は少し緊張しながら、言葉を選んだ。 「今考えれば、とっくの昔に、お前のこと好きだったんだ」 「……すき?」 「うん。好きだ」 要は正直に、伝えた。全力な愛之助の愛に、もう抗えない。 かんねんするしか無いのだ。 要は、愛之助の肩を抱き寄せ、優しくキスをした。 深く深くキスをした。 顔を放して、 「今日、抱いていい?」 「うん」 愛之助は嬉しくて涙を流しならが、笑顔で彼に抱きついた。 「はあっ」 部屋の内風呂に二人で入るやいなや、要は愛之助を後ろから抱きしめ身体を撫で回した。 キスしながら、乳首をイジるとこれ以上無い反応返してくれる。 二人ともすでに完全に勃っていた。要は愛之助のモノを優しく握り手を上下に動かす。 「あっ、いやぁ…」 まるで女の子のような、可愛い声を出して喘ぐ愛之助に要は興奮を押さえられない。勃ってしまった自分のモノを愛之助の後ろに擦り付ける。 男の場合後ろに入れるが、始めはそう簡単には入らないだろう。時間を掛けてほぐしてやらなくてはと考えていると、 愛之助は、要と向かい合わせになり彼の濡れた肌にキスしながら、 「少し解せばきっと入るよ。いつも自分でイジってたから」 「へえ、俺のこと考えながら?」 「うんっ、むう」 いいながら、愛之助は自分の後ろに指を入れる。 「はあっ」 自分で入れながら、声が漏れる。要は愛之助の後ろに指を入れていく。 「あぁん、か、かなめぇ待って…んん」 くっそエロいな。喘ぐ愛之助を要は口を塞いで黙らせた。 ベッドに愛之助を運び、我慢できずに要はすぐに彼の後ろのに挿入した。 これ以上無いくらい彼の身体を揺さぶり、止まらなくなる。 「あっあっあっ」 愛之助の声はずっとエロかった。 その声を聞くだけで、何度も腰が勝手に動く。 愛之助は、夢を見てるようだった。 あんなに遠い存在だった要が、今自分を抱いている。 「好きだ」 好きだといって、何度もキスしてくれる。 要の硬いモノが、ギチギチにハマり愛之助の奥まで突いてくる。 気持ち良すぎて止まらない。 「愛、好き。好きだ」 要に何度も突かれては、イッてしまう。 「俺も、好き」 愛之助はそう言って、今度は要の上に乗った。 翌日。 「大丈夫か?」 「……身体が、動かない」 ベッドの上で全身の痛みに耐えながら、起き上がる愛之助。 思ったより、要の愛が重くて、嬉しいが身体が持たない。 (体力つけるか…) 何とか起き上がり二人は家路についた。 「ふうーん。散々周りを騒がせて、あっさりくっつくとはね」 呆れ顔で要を睨み、頬杖を付く和美。 「…その節は、すみませんでした」 要は、和美より大きな身体をいつもより小さくしながら、平謝りした。 「自分でも驚いてる。あんなにすんなりと愛之助を受け入れられるとは思わなかったけど」 「まあ、あんた何だかんだ言って、愛之助くんのこと可愛かったもんね」 「え」 「ここ最近愛之助くんの事ばっかり話してたの、気が付かなかったの?」 「いや…」 本当に気が付かなかったらしく、きょとんとする彼に、 和美はコーヒーを飲みつつ、 「親には言ったの?」 「愛之助が、言いたいって」 「で、どうだった」 和美はそこをずっと心配していた。 義理の兄弟で、ましてや男同士。親が反対しても可笑しくない。 いざとなったら、自分が二人の味方をしてなんて和美が思っていると、 要は困った顔をして、 「うちの親は……喜んでる」 「え?」 「俺の母さんは元腐女子だし、愛之助の父さんは愛之助が男が好きなことは知ってから。 俺と愛之助がくっくつか賭けて立って…」 「へえ……」 大物な親だな。 困った顔ををする要。それを見ながら同じ顔をする和美。 「親が認めてくれてるんなら、何でそんな訝しげな顔をするのよ?」 「うーん」 唸って、 「認めてくれたのは、嬉しいんだけど。家の親って変だなって」 和美はフッと吹き出し、 「まあ、アンタの親だからね」 「え、どういう意味だよ」 「そのままの意味よ」 コーヒーカップを置き、 「まあ、アンタの両親が認めてくれなかったら、私が説得に行こうと思ったけど杞憂で済んで良かったわ」 「和美…」 「よかったわね」 「うん」 和美が味方で良かった。 要は嬉しく思った。 「要、おまたせー」 二人のデーブルに近づいてきた愛之助と、和美の弟の洋一。 彼の大学が終わるのを待っていた。 「おう」 愛之助は、和美にお辞儀をして、 「こんばんは和美さん、今日も綺麗ですね♡」 「ありがとう愛ちゃん。愛ちゃんも相変わらず可愛いわね♡」 会うようになってから、やけにノリの合う二人である。まあもともと愛之助の友達の兄にであるから、全く知らない間柄ではないけど。 「じゃあな」 要は、愛之助と手を繋いで去っていった。 二人の後ろ姿を見送りながら、 「あんたは知ってたの?愛ちゃんの気持ち」 と、弟の洋一に尋ねる。 「てか、あいつ大学ではブラコンで有名だからな」 「あっそ」 せつなそうな兄の顔を見て、 「羨ましい?」 ぼそっとつぶやく。 和美は、フッっと笑い、 「そうね。本当の兄弟には叶わないことだわ」 悲しげに呟く和美に、洋一はポンと彼の頭を撫でる。 「帰ろか」 「そうね」 和美はため息を付いて、踵を返すのだった。 終

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