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第8話:明日もきっと快晴。

「・・・」 これは夢か。 新見 虎太郎(24)は、自分の家のドアの前で体育座りで眠っている男を見下ろす。 誰だこの男は? 自分は一人暮らしで同居人はいない。 離れて暮らしている兄弟もいない。 眠っている男を見つめると、綺麗で男でも見とれてしまうほどだ。 (ん?よく見ると、なんだか見たことがあるような・・・) 虎太郎が考えていると、ふとスマホが鳴り画面をのぞく。 『大学生になったイトコの快晴くんが、しばらくあんたの家に居候することになったからヨロシクね♡』 と、母親からLINEでメッセージが来ていた。 「・・・・」 それを何度も読み返し、 「そうだ・・・こいつイトコの快晴だ」 虎太郎の母親の姉の息子が快晴という男の子だった。 小さい頃は家が近くてよく遊んでいたが、親の仕事の関係でアメリカに引っ越していったのだ。 父親がアメリカ人でハーフの快晴は外国人の様な見た目でよくいじめられていたが、 高校生になってからモデルのバイトを始めたとか言ってたな・・・ 仕方なく、虎太郎は自分の頭1つ分大きな快晴を抱き抱えて運んだ。 「こたろーくん・・・」 運ばれながら、快晴は虎太郎の頬に自分の頬をスリスリした。 「!!」 びっくりして虎太郎は快晴をベッドに投げる。 快晴はそのままスヤスヤと眠りについた。 「・・・ソファで寝るか」 疲れた身体をがっくりさせ、虎太郎は風呂に向かった。 翌日。 「昨日遅かったね、コタローくん」 朝からケロッっとしてそう言うのは、 昨夜家の前で眠っていたハーフイケメンの快晴。 平凡な家庭や学校にしか縁のない虎太郎には、 ハーフのイケメンは物珍しかった。 男から見てもカッコいい。 「残業だったからな」 言いながら、コーヒーを淹れてやる。 ありがとうと、カップを受け取り快晴はコクコクと飲む。 コーヒーを飲んでもイケメンだ。 などと考えながら、 「ていうかお前が家に来るなんて、聞いてないぞ」 「そうなんだ」 「いきなり来て・・・だいたい会ったのだって8年くらい前だろ?」 「10年だよ」 はっきりと訂正され、虎太郎はたじろぐ。 「・・・10年でお前かなり変わっただろ?最初分からなかったよ」 「カッコよくなった?」 「はいはい、ムカつくくらいカッコいいよ!」 すると快晴は少しだけ照れた顔をする。 その姿に昔の面影を思い出す。やっぱり快晴だ。 それに嬉しくなり、 「成長して分からなかったけど、本当に快晴なんだな。そうやって笑うとなつかしいよ」 そう言って笑う虎太郎に、快晴はうれしくて胸が苦しくなる。 アメリカ人とのハーフで小さい頃はよくいじめられていたが、 それを助けて、いつも側にいてくれたのは虎太郎だった。 時に友達みたいに、時に兄弟みたいにいつも一緒にいた。 それに快晴は嬉しくなり急に涙目になって、 「ありがとうコタローくん」 と、がばっと虎太郎に抱きついた。 快晴の長い腕が虎太郎を包み込む。一瞬ドキッとした。 快晴の碧眼で見られると、昔から胸がザワザワした。 理由はよくわからない。 「はいはい、朝ごはん食べるぞ」 虎太郎はポンポンと快晴の背中を叩く。 「うん」 笑って快晴は虎太郎の頬にチュッとキスをした。 「!!ちょっ」 「?なに」 「何ってなんだよ今の」 「感謝のキスだよ」 感謝? まあアメリカが長かったし、外国人とのハーフなら日常なのか? 彼女もいなかった虎太郎には刺激が強すぎる。 「そ、そうか」 「何?ドキドキしたの?」 快晴はニヤニヤする。 「しないって」 気にしていないふりをして、虎太郎は朝食の支度を始めた。 その夜。 「おかえり、コタローくん」 快晴はまるでずっと暮らしていたかのように、呑気に会社から帰った虎太郎を出迎えた。 一瞬、?となったが快晴が来ていることを思い出し、 「そうか、快晴がいたんだった。ただいま」 「ひどっ、夕食作ったのに」 そう言って快晴は笑って虎太郎の頬にキスをする。 「・・・これは何のキス?」 すると快晴はニコッと笑い、 「おかえりのキス♡」 「ああ、そう・・・」 また、ザワザワした虎太郎。気を取り直して快晴と夕食を取る。 料理は中々上手だった。 話を聞くとアメリカにいた頃は、両親はあまり家にいなかったので自分でよく食事を作っていたのだそうだ。 学校に友達はいたが、家にはいつも一人だったという。 それを聞いて少し寂しくなるが、気を取り直し、 「そう言えば、大学の合間にバイトしてるって言ってたけど、どこで働いてんの?」 「ああ、モデル」 「?もでる?」 「モデルのバイトしてる」 「へー・・・」 実感の無い顔をする虎太郎に、快晴は自分の部屋に行き、 1つの雑誌を虎太郎に投げてよこす。 「?」 そのファッション雑誌を受け取り、疑問符を浮かべる快晴。 「その表紙、俺」 「え!」 渡されたメンズファッション雑誌の表紙には、外国人女性とポーズを決めている堀の深い男の顔が・・・ その表紙をじーっと見つめる虎太郎。 メイクや写真の撮り方でまるでプロのモデルのように見えるが、よく見ると横顔とか目元とかで快晴であることは虎太郎にはわかった。 「モデルのバイトをしてることは、母さんから聞いてたけど、マジか・・・」 あまりにも綺麗でカッコよすぎて、別人のような快晴。 「《KAI》として、一応少しだけ人気あるんだけどね」 「表紙ってすごいな、いや元々キレイだったけど」 褒められて、快晴は静かに照れる。 「まあ大学生活に支障が出ないように、身バレしないように撮ってくれる約束で契約したから、日常生活には支障はないけど」 「スカウトされたの?」 「モデルをやってる大学のセンパイが紹介してくれた」 「へえ、意外だな。あまり目立つ事好きじゃないとおもってたけど」 「それは、そうだけど」 快晴はふと目をそらす。 「・・・見つけて欲しかったから」 「え?」 聞こえなかったのか、聞き返してくる虎太郎。 虎太郎に見つけてほしかったから。 ・・・とは言えない。 「経験としていいかなとおもって」 別に理由を答えた。本音は言えない。 風呂に入り、虎太郎はようやく届いた客用の布団をベッドの隣に敷きながら、 「そういえば、お前ベッドじゃなくていいの?今さらだけど。アメリカではベッドで寝てたんだろ?俺が布団でもいいんだし」 「平気。居候なのにベッド使っちゃ悪いし」 「別に気にしなくていいのに。ベッドがもう少し広かったら一緒に寝られたのにな」 「えっ」 素っ頓狂な声を上げる快晴を不思議に見ながら、虎太郎の言葉に他意はない。 「まあお前身長高いからどっちにしたって無理だろうけど」 「ええ・・・」 なぜだかガクッと肩を落とす快晴。 虎太郎はベッドに、快晴は虎太郎の敷いてくれた布団に腰を下ろし。 「ありがとう、コタローくん」 「ん?」 虎太郎が快晴の方を向くと、 快晴は虎太郎に抱きつき、 「ここに置いてくれてありがとう」 神妙につぶやく快晴。 「どうしたの?」 「俺、小さい頃はずっといじめられて、いつもコタローくんに助けられてたから、引っ越した時ずっと・・・ずっと会いたかったんだ」 ぎゅっと、快晴は虎太郎を抱きしめる腕に力を込める。 「ずっと会いたかったから、今一緒にいられて嬉しい」 そういって微笑む快晴の顔はこれ以上無いくらいイケメンだが、その中に小さい頃の可愛い快晴の面影が残ってた。 虎太郎は快晴の背中を擦る。 快晴は虎太郎から身体を離すと、じっと彼を見つめる。 そのまま虎太郎の顎をくいっと持ち上げて、 チュッとキスをする。 「おやすみ」 がばっと、布団にくるまる快晴。 ん・・・? 虎太郎は黙ってベッドに入る。 しばらく思考が止まっていたが、だんだん動き出す。 今、キスされたよな。 いつもは頬にされるが、 今、口にキスしたよな? あれも挨拶? それとも感謝のキス? 口にするか、普通? 男が男に? アメリカでは普通なのか? いやそんなことないだろ。 じゃあ今のは? 「・・・・・」 その日は眠れなかった虎太郎だった。 その翌日から、 夜寝る度に、快晴はチュッと口にキスして寝るようになった。 これはあえて聞いて良いのだろうか? それともこういうものだと飲み込むべきか・・・ 自分が意識しすぎかもしれない。 虎太郎は悶々と考えた。 一週間程経った、ある夜。 いつものように快晴は、虎太郎の口にキスをしようと彼の肩に手をのせる。 快晴はふと、虎太郎の顔を見つつ、 「あのさコタローくん」 「なんだよ」 「いやじゃないの?」 「なにが?」 「チュー」 「だって挨拶なんだろ?」 「口にキスしてるんだけど」 「?うん」 「気持ち悪くないの?」 「?別に」 「じゃあどう思った?」 「えー、口にするのかなぁ、とか」 「あ、一応思ったんだ」 「え?どういうことだよ?」 「嫌なら拒否して良いんだよ?」 「別に嫌じゃないって」 平然と言う虎太郎に、快晴ははあっと頭を抱えため息をつく。 何だ?その反応は? 彼が何を言いたいのか分からかいという顔をする虎太郎に、 快晴はジッと彼を見て、 「じゃあちょっと違うキスしていい?」 「え?」 「一応聞いたからね」 「何ん」 言葉の途中で快晴は虎太郎の唇を愛撫するようにキスをする。 柔らかく撫でるように。 気持ちいい。もっと深くキスしたい。 そう思っていると、快晴は虎太郎から離れる。 じっと見つめあう2人。 すると快晴は急に顔を真っ赤にさせる。 何、その反応? 「ごめん、おやすみ」 快晴は急に布団に潜り込んだ。 いや、ごめんって・・・ 「おやすみ・・・」 そうつぶやく虎太郎の顔も真っ赤に染まっていた。 翌日、 会社の休憩室で虎太郎は自販機でコーヒーを買いながら、はあっとため息を吐いた。 「何ため息ついてんだよ」 そう言われて振り向くと、休憩室のベンチに座っている同僚の池田優心がいた。池田は入社して同じ大学だったことを知り、それから仲良くなった。 虎太郎はコーヒーを片手に池田の隣に座る。 「今イトコが泊まりに来ているんだ」 「へえ、女の子?可愛い?」 「ばか、男だよ。大学生の」 「へえ」 気のない返事をしながら、手元には男性向けファッション誌。 池田はいつも服装のセンスが良いからな。 「どんなやつ?イトコって」 「そんなやつ」 と、池田の雑誌の表紙を指さした。 「?」 「その表紙のヤツが、俺のイトコ」 「え!?」 本気で驚く池田。 表紙と虎太郎を見比べる。 「イトコって、今人気上昇の《KAI》?」 「え、そんな人気なの?」 やべ。 言っちゃいけなかったかな? 今さら虎太郎は後悔した。 「妹がファンなんだよ!今度合わせてくれよ」 しまった・・・ 「あいつ今大学生だから、紹介はちょっと・・・」 「えーなんだよ、自分から言ったくせに」 「それがイトコだとは、言ったけど紹介するとは言ってない」 「何だよ、やけに守るな」 「そりゃ一応保護者からお預かりしてるからな」 「口外しないから、妹に紹介するだけは?」 「んー・・・聞いてみるけど、断ったらしつこくするなよ?」 「もちろん!」 池田は元気に返事する。 その日の夜。 「ごめん!」 帰ってくるなり突然謝罪する虎太郎に、快晴はきょとんとする。 「説明してくれる?」 冷静な快晴におずおずと虎太郎は話をする。 同僚が快晴の載っている雑誌を読んでいて自然に自分のイトコであるとつい言ってしまったこと。 その同僚の妹がKAIのファンで紹介したいと言われたこと。 「なるほどね」 一通り話を聞いて、快晴は半ば呆れた顔をしてため息を吐いた。 虎太郎はしゅんとして、 「ごめん・・・お前に彼女がいるかとか聞かないで勝手なこと」 「本当にな」 「う・・・」 「恋人は、今はいないよ」 「ああそう」 「でも好きな人はいるけど」 「え、そ、そう」 快晴にじっと見つめられ、虎太郎は一瞬ドキッとする。 ふっと笑い快晴は面白がるように虎太郎を見つめ、 「コタローくんが俺のお願い聞いてくれるなら、1回だけ会ってあげる」 「ほんとか?嫌なら断って良いんだぞ」 「いいよ別に。俺の顔が知られてきた証拠だし」 と、ありがたいと、半ば投げやりにつぶやく快晴。 その途端悪いことをしたような気がして、 「分かった、お願いなんでも聞いてやる」 「ほんと?」 急に嬉しそうな顔をする快晴。 急に尻込みし、 「で、できる限りのことなら」 「もう遅いよ。何聞いてもらおっかな−」 (し、仕方ない・・・) そして週末、 待ち合わせの噴水の前には、虎太郎の同僚の池田と小柄な高校生くらいの女の子。今日のためのおしゃれしてきたんだなと言う気合の入れたボルドーチェックのワンピースとベレー帽。彼女の栗色の髪にもよく似合っている。 快晴は黒いシャツに全身黒のシャツにチノパン。ボルドーのカーディガンを羽織っている。黒いハンチングに黒縁の伊達メガネ。 緊張する彼女に、快晴はニコッと営業スマイル。 「初めまして、有栖ちゃん。KAIです」 「はっ、初めまして。いつも応援してますっ」 ガチガチの彼女と握手する。 そのまま有栖のリクエストで動物園に行き、 虎太郎と池田は少し離れた場所から2人を見守る。 「なあ、イトコイケメンだな」 「アメリカ人とのハーフなんだって」 「へえ、昔からモテたんだなきっと。俺たちとは世界が違うなぁ」 「そんなことないよ」 池田の意見を否定する虎太郎。 「あいつはよく人と違うことで虐められてたから。おれいつも見てたから知っている。人一倍努力しなきゃ、あそこまで頑張れないよきっと」 「ふうん」 池田は、何だか面白くないような顔をして、虎太郎に顔を近づけ、 「あの2人がもし付き合ったら、俺たちももっと会うことになるのかな」 「?どうだろうな」 池田の言葉に虎太郎は単純にそれを否定した。 だって快晴は好きな人がいるって言ってたし、多分あ有栖ちゃんとは付き合わない。池田には悪いけど。 それにきっとそうなったら、自分が嫌だと思う。 ? 何で嫌なんだ? 自分で思って、ふと疑問符を持つ。 池田のことは忘れて、虎太郎は考え込んだ。 快晴に話があるといい、虎太郎と池田を離れた所に追いやり、 「今日は会ってくれてありがとう。KAIくん」 有栖は一日遊んでとても満足した。 「俺の方こそありがとう。楽しかったよ」 そういう快晴の事を、有栖はふふっと笑い、 「KAIくんて、わかりやすいよね」 「え」 「今日虎太郎さんの事ばかり、気にしている」 「そんなことないよ」 「私、KAIくんのこと好きだから分かるよ。虎太郎さんのこと好きでしょ?」 「そりゃ、もともと大好きなイトコのお兄さんだからね」 「そうじゃないでしょ?」 有栖は快晴をまっすぐ見つめて、 「うちのお兄ちゃん虎太郎さんのこと好きなんだよ?」 「・・・」 「ウカウカしてたら盗られるかも。頑張ってね」 と、有栖はKAIの頬にキスをした。 何だか見透かされたような気がして、快晴は完全に降参した。 「私モデルだからKAIくんのこと好きなんじゃないの。3年前に留学してた時にアメリカのスクールで快晴くんに会っているんだよ」 「そうなの?」 驚く快晴。 顔をじっと見つめるが、覚えがない。 「私昔は太ってたから、酷いイジメにあってて、そんな自分が嫌でアメリカに留学したんだ。日本に帰国する時は痩せて、性格も前向きになる事ができたけど」 自分と一緒だ、アメリカに行って自分を変えた。 元々の自分が嫌で変わった人だ。 「だから地味な快晴くんも知っているよ。これはお兄ちゃんには言ってないけど」 なんてしっかりした学生だろうか。心が強い。 「有栖ちゃんて、カッコいいね。コタローくんがいなかったら好きになってたかも」 「ふふっ、ありがと」 快晴も有栖の肩をそっと抱きしめる。 「ありがとう。勇気出たよ」 「私も会えてよかった」 そんな2人を見て、 虎太郎は複雑な顔をした。 仲良くなった二人を見て心がざわつく。 自分にだけべたべたしてくれればいいのにと、無意識に考えた。 キスするのか俺だけでいいのにと。 有栖が快晴の頬にキスをするのを見て、 胸がざわついた。 その日の夜。 家に帰り夕食を済ませ、 快晴はちょっと気にしていた。 虎太郎の元気がない。 どうしたんだろ? 「コタローくん」 「ん?」 「どうかしたの?」 「何が?」 「何だか元気ないね」 「そんなことないよ」 「でも、何か違うから」 そういって心配そうにこちらを見る快晴に、 虎太郎は何だか優越感のようなものを感じた。 しゅんとする快晴の頭を虎太郎はくしゃくしゃと撫でて、 「久しぶりに出掛けて疲れただけだよ」 「そう」 まだ気にする快晴に、 「お願い、考えたか?」 「えー、うん」 「言ってみて」 虎太郎に促され、快晴は言いにくそうに、 「・・・今日、一緒に寝たい」 「え」 「ごめん、嫌なら拒否して」 「そんなことでいいのかよ?」 「・・・気持ち悪くないの?」 「ないよ」 むしろ隣に寝られるとカッコよすぎて緊張するかもしれないし、 同じベッドで寝るなんて子供の頃みたいだ。 シングルベッドに2人で横になる虎太郎の肩にべったりくっついて、 快晴はスヤスヤと眠っていた。 今日は本当に疲れたんだろう。 虎太郎は快晴の頭を優しく撫でる。 サラサラの茶色い髪。小さい頃はブロンドで目立つことが本当に嫌だったと快晴はよく話していた。 『太陽みたいだ。快晴の名前と同じだね』 小さい頃、快晴をよくそう褒めたいた。 そうだ自分は、快晴の金髪が好きだった。 明るくて快晴の綺麗な顔にすごく合ってて、 陽の光を浴びてキラキラしてて。 でも見た目だけが好きなんじゃない。 優しい快晴が好きだった。 虎太郎は快晴のオデコにキスをする。 「う〜ん・・・コタローくん・・・」 快晴は虎太郎の肩に埋めてた顔を上げる。 その顔を見つめ、 虎太郎は優しく、快晴に口づけした。 優しく甘咬みするようなキス。 いつも唇が重なる度に、身体が暑くなる。 何だか口を離せない。 ずっとキスしていたい。 快晴をひとりじめしたい。 有栖ちゃんと付き合ったら嫌だ。 好きな人って、だれだ・・・? 翌朝、 「ん・・・」 快晴は目を覚まして、ぼーっとまどろむ。 今日は休日なため虎太郎の目覚ましは止めていた。 時間は6時半。 目覚まし時計からふと、虎太郎に目をやって動きが止まる。 なぜかって、 寝る時は自分が快晴にくっついて寝ていたはずなのに。 今は快晴の肩に虎太郎が、べったりと抱きついて眠っていた。 快晴のシャツが胸まではだけてて、その中に虎太郎の手が入っている。 肌に直接虎太郎の手が触れている。 恥ずかしくなる快晴。 でも・・・ 虎太郎のシャツも胸の上までボタンがはずれていて、左肩があらわになっている。シャツのボタンがはずれているため、片方の乳首も見えている。 快晴は自分のシャツの中に伸びた、虎太郎の手をそのまま引き寄せ、 虎太郎の顕になった胸にキスをする。 「ん・・・」 わずかながらも反応する虎太郎。 その虎太郎を見て、一人で顔を赤らめる。 急に恥ずかしくなり顔を虎太郎の肩にくっつけ。 「ねえコタローくん」 小声で一人つぶやく快晴。 「おれ、ずっとコタローくんに会いたかったんだ」 きっとこの呟きは、けっして本人には言わない。 きっと一生。 「アメリカにいた時もずっと会いたかった」 虎太郎はいずれキレイな彼女ができて、結婚して、良いお父さんになって・・・ そんなまだ来てない未来を想像して、快晴の目には涙が溢れてくる。 「ずっと好きだよ、コタローくん」 想いと、悲しみが溢れて、 「これからも一生」 この想いはもう閉まっておこう。 数時間後。 虎太郎は快晴を起こす。 「おーい、もう朝だぞ」 「・・・おはよう」 「おはよう快晴」 快晴が起きるとそこには、 いつもの優しい虎太郎がまっすぐこっちを見ていた。 いつもどおり、 それが一番いい。 身支度をして大学に向かう快晴。 「快晴今日夕飯家で食べる?」 その虎太郎の言葉に、快晴は彼に背中を向けたまま、 「今日は大学のあとに仕事が入ってるから、いらない」 「そう」 快晴は振り向かない。 「コタローくん」 「ん?」 「おれ来年大学卒業したら、一人暮らしするから」 「え」 快晴の言葉に、虎太郎は面食らう。 「モデル続けるの?」 「んー、一応」 「そうなんだ。仕事順調で良かったな」 「ありがと」 そういって立ち上がって、笑う快晴。 「べつにずっと居て良いんだぞ」 虎太郎の言葉に、快晴はハッと彼を見る。 彼は何だか居心地の悪い素振りを見せる。 「ほ、ほら仕事が忙しくなったら、家のことなんてやってられないだろ?2人で居ればどちらかができるし、費用とかも折半にできるし」 何だか、慌てる虎太郎。 「ずっといればいいだろ」 だめだ、勘違いするな。 快晴は自分にそう言い聞かせながら、 「やさしいねコタローくん。考えてみるよ」 「うん」 「いってきます」 足早に快晴は家を出ていった。 快晴が出ていったあとのドアをずっと見つめる虎太郎。 快晴は虎太郎から離れようとしている。 昨日の朝の快晴の呟きを聞いてなかったら、きっと気が付かなかった。 快晴は家を出ていったら、 きっともう虎太郎には会わないつもりだろう。 それに気が付いて慌てて引き止めた。 (必死じゃん、おれ・・・) 虎太郎は自分の頭をくしゃっと掻きむしり、 絶対快晴を一人にさせない。 あの日以来快晴は、虎太郎にキスをする事はなくなった。 虎太郎からある一定の距離を取り、 近くに来ることも、同じベッドで眠ることもなくなった。 その態度に動揺したのは虎太郎の方だった。 自分の気持ちが快晴に近寄ると、快晴は離れようとする。 なんだよそれ。 虎太郎は少し怒っていた。 会社で虎太郎は、池田に飲みに誘われて帰りに飲みに行くことに。 会社近くの居酒屋で久しぶりに2人で飲んでいた。 お座敷の個室。 「こうやって2人で飲むのも何年ぶりかなー」 「まあお前が忙しくなったからな」 そういって虎太郎は池田のグラスにビールを注ぐ。 「そうだな、前までは一緒の仕事が多かったけど、今はそんな機会もなくなったからな」 「まあな」 虎太郎はビールをぐいっと飲み干す。スマホを確認して、快晴が帰ってないか確認する。 そんな快晴を見つめ、 「こないだは妹のわがまま聞いてくれて有難うな」 「え、うん」 「付き合うことにはならなかったけど、俺はもう少し新見と会う機会がふえればいいなって思ってる」 真面目な顔をして語る池田。 虎太郎は黙々とつまみを食べる。 彼が気になるのは、快晴のことだけだった。 池田は虎太郎の隣に移動し、壁際に手をついて虎太郎を見つめる。 「好きなんだ。俺と付き合ってほしい」 池田にそう告白されて、 キスをされそうになる。 その顔をぐっと避けて、そのキスを拒否する。 池田の身体をぐいっと押しやり、 「酔ってるのか?やめろ」 「酔っているけど、冗談でこんな事言わねえよ」 池田は今度は虎太郎の腰をぐいっと引き寄せる。 顔を近づけてくる。彼の目は真剣だった。 「入社したときからずっと好きだったのに、何だよあのイトコは」 一緒に暮らしてるって聞いて、本当は気が気じゃなかった。 「お前から浮いた話を1回も来たことなかったから安心してたのに、 あのイトコのやつがお前を見る目ときたら・・・」 そういってもう一度キスをしようとする。 顔を背ける虎太郎。 池田は良いやつだ。同僚としては尊敬している。 でも・・・ 「ごめん」 腰に回された手を力を込めてどかす。 「池田のことは好きだけど、違う」 そう言って、先に帰る虎太郎。 その夜。 「おやすみコタローくん」 と挨拶をすると、すぐさま布団に入って眠ろうとする。 「快晴」 「ん?」 返事をして振り返る快晴の口に、虎太郎の唇が重なる。 快晴は動きを止めた。 しばらくそのまま2人は動けないでいた。 キスをしたまま、虎太郎は全身が熱くなるのを感じた。 ただ唇が触れているだけなのに、身体がぞくぞくした。 快晴の方も、久しぶりの虎太郎の感触が自分の思考を完全に止めていた。 我慢してたのに、どうして虎太郎は・・・ でも離れられない。 ずっと我慢していた虎太郎の熱、感触、柔らかさ・・・ たまらない。 口を離し、呆然とする快晴に虎太郎は、 「じゃあ、おやすみ」 とベッドに潜る虎太郎。 「ち、ちょっと!」 快晴は、ベッドに横たわる虎太郎の身体を布団の上からパシパシと叩く。 虎太郎は壁の方から振り返る。 「なに、今の!?」 その質問に、虎太郎はきょとんとして、 「おやすみのチュー」 何いってんのという顔をして、 「いやいや、あんなの反則でしょ?」 「なんで?お前だってしてたじゃん」 「いや、そうだけど・・・」 「なに?嫌なの?」 そういう虎太郎に、とっさに言葉が出てこない快晴。 嫌なわけない。 「い、いや、そういうあれじゃないというか、それはその・・・」 しどろもどろ。 虎太郎は起き上がり、快晴の布団に降りて彼の身体の上に跨り、 快晴の肩に腕を回し、もう1回キスをする。 甘く、やわらかく、ゆっくりとキスされて、ふわふわとする快晴。 「何だよ・・・何でだよ!せっかく人が諦めようとしてたのに!」 たまらず快晴は声を荒らげた。 「どうしてっ」 泣きそうな快晴を虎太郎は抱きしめる。 「諦めなくていいよ」 優しく快晴の頭を撫でる。 「俺も好きだよ」 おれも・・・? 「あの時の快晴の呟き、全部聞いてた」 「お・・・おきてたの?」 頷く虎太郎。 快晴は顔を隠す。 これはやばい。聞いてないと思って、話していたのに。 「まさか、起きてたなんて・・・」 これは恥ずかしい。 だめだ。 虎太郎の顔を見れない。 虎太郎はうなだれて、 「今日、池田と飲みに行ったんだ」 彼が何を言いたいのかわからず快晴は次の言葉を待った。 「池田に好きだって言われた」 「!?」 急に焦る快晴。 「キスされそうになったけど、身体が勝手に拒否した」 知らない時にそんなことがあって、背筋が凍る。 「大丈夫だったの?」 「うん」 うなずいて虎太郎は快晴を抱きしめ、今度は口を開いてキスをする。 積極的な虎太郎に快晴は夢心地でキスをされ続け、 気持ちよくなると同時に彼の言葉1つ1つを頭の中で繰り返し・・ 「さっき、好きだって言った?」 「?うん」 「それって・・・俺のこと?」 「この状況で他に何があるんだよ?」 「えぇ、だって・・・」 そんな事あるわけない。 でも、 「これでも信じられない?」 虎太郎は快晴の身体にまたがったままお互いの股間を押し付ける。 お互いが勃っていた。 「!」 自分は当然だが、虎太郎が勃っていることに驚いた。 本当に? 本当に俺のこと・・・ いつもただ、虎太郎に甘えてた。 ただそれだけの自分なのに。 自分を好きになってくれることはきっとないと思ってた。 自分の気持ちを知ってもらえる日が来るなんて思ってなかった。 アメリカ人とのハーフで恵まれていると周りからは妬まれ、 誰に告白されても心は動かなかった。 告白される度に、ちらついたのは虎太郎の顔だった。 ずっと、ずっと好きだった。 その虎太郎が、今自分を欲している。 快晴もずっと触れたかった。 「好き」 心から、声を絞り出す快晴。 胸が一杯で言葉がうまく出てこない。 「うん」 昔と変わらない優しい虎太郎はいつもどおり頷いてくれる。 違うのは、 2人がベッドで裸で抱き合っていること。 虎太郎の後ろに快晴は自分の硬くなったモノを根本まで挿入していること。 そのまま揺り動かしながら、 「おれも好き」 虎太郎は熱っぽく好きだと言ってくれる。 腰を揺り動かす度に、虎太郎の甘い喘ぎ声が部屋に響く。 「あぁ・・・ん」 耳に響くその吐息に、快晴は照れる。 でももっと聞きたい。 ずっと繋がっていたい。 「夢みたい」 虎太郎の白い肌に沢山キスをして、 心から願っていた。 もう二度と離れたくないと。 翌朝、 快晴のスマホの音で2人は起きた。 電話は快晴の母親からだった。 彼の父親が倒れたと。 不安なまま、快晴はアメリカに行く準備を済ませた。 とりあえずカバン一個で支度を済ませ、虎太郎は玄関で彼を見送った。 「着いたら連絡してくれ」 「ん」 そのまま急いで快晴はアメリカへ旅立った。 昨日までの甘い時間はすぐに崩れ去り、虎太郎は会社へ向かった。 2日、3日経っても、快晴からの連絡はなかった。 きっと忙しいのだろう。 そう思った。 一週間が経過して、虎太郎のスマホが鳴った。 相手は母親だった。 快晴の父親が亡くなったと。 その後は、虎太郎は夢心地で母親からの電話の内容を聞いていた。 快晴の荷物はアメリカの住所に送って欲しいとの事。 大学はアメリカの大学に通うこと。 もう日本には帰ってこないこと。 もう会えないんだ。 そう思って、部屋で暫く時が止まった。 今まで一緒にご飯を作ったキッチン。 一緒に眠った、抱き合ったベッド・・・・ 気がつけば一人で泣いていた。 「・・・快晴っ、好きだ・・・」 こんなことならもっと好きだと伝えれば良かった。 もっと早く気がつけば良かった。 「会いたい」 一人涙が止まらなかった。 快晴の笑顔や照れた顔、 今でも鮮明に思い出せる。 好きだと言ってくれた時の顔。 「会いたいよ・・・快晴」 虎太郎のスマホが鳴る。 メールだ。 快晴からだった。 その画面には、 『ごめん』 そう一言だけ。 虎太郎は部屋で朝まで泣き崩れた。 半年後。 いつものように、会社の休憩室で虎太郎はコーヒーを飲んでいた。 「お疲れー」 池田が声かける。 どうやら最近恋人と同棲を始めたらしく、 「聞いてくれよー、こないださー」 と、よく口という名の惚気を聞かされる。 嫌々ながら聞いてやる虎太郎。 相手が面倒くさいが、幸せならそれでいいか。 「お前は?」 「ん?」 「あのイトコから連絡はないのかよ?」 「んー」 残りのコーヒーを飲みつつ、席を立つ虎太郎。 快晴がいなくなって暫く、呆然と仕事をしていた虎太郎を心配して根掘り葉掘り聞いてくるので、全て打ち明けた。 時々心配して、聞いてくるのだ。 「別に何も」 「イトコなんだから、親は知ってるんだろ?」 「多分」 「聞かないの?」 「んー」 深く聞く気はなかった。快晴が聞いてほしかったらきっと自分から連絡してくる。彼はそういうやつだ。 「別にお前から連絡しても良いんじゃないの?」 池田がそれとなく諭すが、 「いいんだ、もう」 虎太郎はあれから笑っていない。 心がポッカリ穴が空いたようだった。 でもいつもスマホを気にしている事を、池田走っていた。 快晴の連絡を待っていた。 そんな時、 虎太郎のスマホが鳴る。 メールだ。 スマホを覗く虎太郎を見つめる池田。 池田は気がつく。 虎太郎の目に光が戻る。 「ごめん、行くわ」 虎太郎は慌てて会社を出ていく。 それを見送り、池田は一人微笑むのだった。 虎太郎は会社に有給届けを出して。 一目散に向かったのは空港だった。 メールには、 『今日午後18時、帰国する』 快晴からのメールだった。 虎太郎はそわそわと空港で出待ちをした。 そこには、ファッション誌の表紙を飾っていた男でもなく、 幼い頃の、虐められていたハーフの少年じゃなく、 「コタローくん!」 一緒に暮らしていたそのままの快晴がいた。 嬉しそうに小走りで虎太郎の方へ駆けてくる。 本物だ。 「快晴!」 虎太郎は人目を憚らず快晴に抱きついた。 匂いも体温も、快晴だ。 抱きついたまま、黙る虎太郎の背中をポンポンと叩く快晴。 「会いたかった・・・コタローくん」 その言葉だけで、虎太郎は胸がいっぱいだった。 虎太郎はぐいっと、自分よりも頭1つ大きい快晴の顎を下から鷲掴み、 「何が『ごめん』だぁ!」 と、怒りをぶちまける。 「うぐぅ!」 顎を鷲掴みにされ、面食らう快晴。 「あれから一言も欄楽よこさねぇで!舐めてんのか?」 「ごっごめんなしゃい・・・」 「俺がどんだけ心配したかわかってねえだろうがよ!」 こんな怒っている虎太郎は初めて見る。 そこで虎太郎は顔を背ける。 快晴は自分の顎を掴んでいる虎太郎の手から力が抜けていくのに気が付いて、その手を握る。 「・・・ごめん、コタローくん」 虎太郎は黙る。顔を背けたまま。 その彼の顔を抱きしめ、 「ごめん、連絡できなくて。ごめん。ほんとごめん。会いたかったよコタローくん。この世でたった一人の僕の好きな人」 「っ・・・」 虎太郎は快晴の腕の中で泣いていた。 快晴はアメリカに渡ってから、父親の葬儀後、父親の経営する会社や資産の整理に母親と取り掛かっていたそうだ。 父親の会社の後を継いだのは母親だった。 「実は会社を継がないかって、言われたんだけど」 「えっ」 2人で家に帰ってから落ち着いて話を聞いていた。 「断ったんだ」 「よくおばさん納得したな」 「まあ会社を継ぐには俺は不向きだし、俺自身にやりたいこともあるから、それに・・・」 快晴はまっすぐ虎太郎を見つめて、 「日本に大事な人がいるからって」 その顔にドキッとする虎太郎。 「母さんは始めは納得してくれなくて時間がかかったよ」 親を説得するくらい、帰ってきたかったのか・・・ 少しだけ罪悪感と優越感。 「それに」 快晴は少しだけいたずらっぽく笑い、 「コタローくんのおばさんが、母さんを説得してくれたんだ」 「おれの母さんが?何で?」 きょとんする虎太郎に、快晴は、 「だっておばさんは俺の気持ち昔から知ってたし」 「・・・?」 気持ち? なんの? そう言いかけて、はっとする。 快晴がこの家に来る際の母親の態度を思い出し、 「まさか・・・」 「おれがコタローくんの事好きだって知ってたし、何なら応援してくれたし」 あのヤロ・・・ 虎太郎は母親に毒吐いた。 その日は同じベッドでくっついて眠った。 ただ隣りにいるだけで、体温を感じるだけで幸せだった。 虎太郎は久しぶりに熟睡した。 その後、 快晴はモデルの仕事を再開して順調に過ごした。 大学は休学にしていたので復学して無事に卒業した。 虎太郎と快晴はそれぞれの親に挨拶をして。 (まあもともとイトコだし知ってはいたが) 晴れて公認の仲になった。 虎太郎は快晴とスーパーに買い出しに行った帰りに、一緒にたい焼きを食べて、何気ない会話をする そんな普通の日常を噛み締めていた。 ふと、手を握られたことに気がつく快晴。 「どうしたの?コタローくん」 「いいや別に」 そう幸せそうに笑う虎太郎を見つめ快晴も、変なのー?と笑う。 彼が居れば、心はいつも快晴だ。 虎太郎はそうふと思ったのだった。 ーーーーーーエピローグ。 「コタローくん!」 眠る直前にいきなり快晴は、虎太郎のベッドの上で正座した。 「なっ何だよ、改まって」 快晴は顔をじっと近づけて、 「あれから1回もシてないよね」 「何が」 「セックス」 「そうだな」 「したくないの?」 「・・・お前は?」 「俺はしたいけど、コタローくん、俺が帰ってきてから全然そんな雰囲気なかったから・・・あまりしたくないのかなと」 いよいよ我慢できず問いかけた快晴。 虎太郎は頭をくしゃくしゃと掻き目をそらす、 「・・・お前がヤりたくないんじゃないかと思って」 「はあ?」 「おはようのキスもお休みのキスもしないし」 どうやらお互いが相手の気持ちを探っていたようだ。 「そ、それはゴメン。何だかあれ以来だったから緊張して・・・」 あんなに毎日キスして来たやつとは思えないな。 虎太郎はふっと笑い、 「何だよ、以外にヘタレだな」 「コタローくんに対してはいつもそうだよ」 「俺だから遠慮はしなくていいのに」 そう言って、虎太郎は快晴の首に手を回しキスをした。 吸い付くように、愛撫するように。 快晴は好き勝手にキスをされたまま、わなわなと手を震わせて、 ゆっくりと彼の背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめる。 大事なモノを守るように大きく包む。 「本当は毎日キスしたかったし、抱きたかった」 「うん」 「してもいいの?」 「今さら遠慮するな。それに・・・」 虎太郎は快晴の高揚した顔を見つめつつ、 「もっと、愛されてる実感がほしい」 「!!」 快晴は虎太郎を全身脱がせ、その白い肌を撫で愛撫し堪能する。 その度に小さく喘ぐ虎太郎がたまらない。 虎太郎は快晴のスエットを脱がせる。お互いの肌を触れさせ、それがまた興奮を誘う。 快晴は虎太郎の乳首をコリコリとも手あそびつつ、舌を絡ませやらしいキスをしてそのまま首に肩にとキスをしながらドンドン下に降りていく。 お互いが完全に勃っていて快晴は嬉しそうに虎太郎の勃起したモノを咥えしゃぶる。裏筋を舐め先を撫で回し。 「あっあっ待ってっ、出ちゃうぅう」 同時に後ろに指を入れられ、 限界まで舐められ、バシバシと快晴の肩を叩く。 快晴は虎太郎を後ろ向きにして背中に軽くキスをして、 「挿れるね」 「ん」 大きくて硬い快晴のモノがどんどん虎太郎の中に押し込まれていく。 ググッ・・・ 「っあ」 挿れられるまでは声を抑えようとか、反応を見せるのが恥ずかしいとか散々考えていたのに、そんな事を考える余裕はまったくなかった。 虎太郎の奥の良い所に快晴の先が届いて、押し込んで揺すられて虎太郎は訳が分からなくなっていく。 「はああっあっ、おかしくなるぅ・・・」 「ち、ちょっと、何いってんのっ」 快晴はそう言いつつも虎太郎が締め付けてくるからもう本当は限界だった。 イキそになり、快晴は虎太郎の身体を仰向けにさせる。 向かいあい急に恥ずかしくなる虎太郎。 「な、何で急に仰向けにっ・・・」 「顔見てシたい」 そういって、大きく激しく腰を動かす快晴。 「んあっ、あっ」 快晴が腰を上下に動かす度に、ちゃぷちゃぷとずっと先走りが虎太郎の先から出ている。ずっと気持ちよくて感じてる。優しくしたいのに虎太郎の反応を見て快晴はもう限界だった。 「ごめんもう無理」 ぐいっと奥まで押し込んで激しく早く揺する。 「ああっもうイク!」 「おれ・・もっ」 ドクドクと同時に出す。 ずっと止まらないのか、快晴は激しく悶える。 「っ・・・」 まだ出てる。 荒い息をして2人はベッドに横たわる。 あんなに出たのに、快晴はまだ萎えない。 「もう1回シていい?」 控えめに、でも身体が控えめじゃないそのギャップに、虎太郎はふっと笑い。 「いいよ。もう1回して」 そう言って虎太郎は快晴の上に乗った。 終。

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