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第7話:妄想的フレンドシップ

三上 純と、青葉 祐太朗は生まれた時から隣の家で幼馴染。誰よりも親友でお互いの事は何でも知っていた。 ただひとつ、純の祐太朗への気持ち以外は… 「おはよう祐ちゃん」 純はいつものように家を出て、隣の家のドアの前で待つ祐太朗に挨拶した。 「おそよう純」 頬を膨れさせ、朝の挨拶をする祐太朗。 そのまま一緒に高校に行くのがいつものルーティン。 それは小学校から変わらなかった。 二人は家が同士で生まれた病院も一緒で、小中と同じクラスだった。高校から初めてクラスが離れて、純は当初落ち込んでいた。 でも祐太朗は家が隣なんだから落ち込むことないだろ?と励ましてくれた。 祐太朗は純に甘かった。とても甘やかしていた。同級生なのに二人が並ぶと兄弟だと勘違いされる事も多かった。 純は自分より15センチも背が高い祐太朗を見上げ、マジマジと見つめる。 祐太朗は高校中学からバスケ部に入り途端に背が伸びた。体格もしっかりして男らしくなった。相変わらず勉強は苦手だったが。堀が深い顔は女子に人気があった。その大きな腕で後ろから抱きしめられたら・・・・・ 『純』 突然祐太朗に後ろから抱きしめられ、顎を掴まれ顔を向けられ 『キスしたことある?』 と強引にキスを・・・・ ・・・なんて事を妄想したり・・・ 祐太朗は純の視線に気が付き、 「なんだよ純、じっと見て」 「べーつに」 素っ気なく言って、純は祐太朗から目をそらす。 代わりに今度は、悠太郎が純を見下ろす。 純は男にしては小柄で幼い顔をしていた。同じ年なのに最近は可愛い弟のように扱っていつも怒られていた。華奢で色白、目がくりくりとしててまつげが長い。勉強ばかりしているせいか視力が悪くてメガネを掛けている。その眼鏡を外してその柔らかそうな唇を奪ってやりたい。 ・・・突然メガネを外し、顔を見上げる純。 『祐太朗の背が高くて、よく見えないからもっと屈んで、 じゃないと、キスできないよ』 と、純は祐太朗のシャツの襟を引っ張り、強引にキスを・・・ ・・・なんて事を妄想したり・・・ 祐太朗の視線に今度は純が気が付き、 「お前こそなんだよ」 「別に」 言ってそっぽを向く。 お互いへの妄想を暴走させている事は、お互い知らない。 「おっはよ〜、純、祐太朗!!」 がしっと二人の後ろから二人の腕を掴んで間に入ってくる女子高生。 「お、おはよう、かおり」 突然、腕を掴まれびっくりしながらも挨拶をする純。 その女子高生の名は、西条かおり高校一年。 茶色のふわうわの髪をポニーテールにして、一重が特徴の女子高生。 純と祐太朗の近所に住んでいる、二人の同級生の妹で二人の幼馴染。 かおりは二人には黙っているが、いわゆる腐女子で、密かに二人の進展を見守っている。 かおりは二人の顔を見比べて。 「進展なしか・・・」 『え?』 二人はかおりの呟きに疑問符を浮かべる。 何を言っているんだという顔を見せる二人から、腕を離し、 「何でもない」 と、そのまま走り去った。 「何だあれ?」 「さ、さあ」 二人は首を傾げた。 純と祐太朗は、家が隣同士。 いつしか勉強が苦手な祐太朗のために勉強の得意な純が提案して、週末は二人でどちらかの家で泊まりで勉強会をしていた。 …というのは建前で、純は週末祐太朗と一緒にいたいが為に提案したのだ。 今週末は純の部屋ですることになった。 祐太朗は純の見慣れた部屋にいくと、純の匂いが充満している部屋の空気を吸って満足した。 お互い自分の家で晩ごはんを済ませ、純の家に集まった。 二人の両親は皆公務員で、お互いの両親も幼馴染で週末は四人で飲みに行っているため、自然と純と祐太朗は二人で集まる流れになっていった。 「はあ〜、過去問終了!」 「おつかれ」 祐太朗は純の用意した数学の過去問をすべて終え、バタッと床に倒れた。 夕食後、2時間勉強して、純はアイスを用意した。 アイスを食べながら、祐太朗は純を見つめた。 学校から帰ってきて純はすぐに部屋着に着替える。季節も暖かくなると純はTシャツとハーフパンツ姿が多くなる。キュッと色白で細い足が太ももまで見えていてそこに手を入れたくなる。 ・・・・純は祐太朗の視線に気が付き、 『視線で俺のこと触りたいのバレてるよ』 と、純は祐太朗の腕を掴み、自分の太ももにいざなう。 『奥まで触って』 その言葉に興奮して祐太朗は太ももからもっと奥を撫で回す。 ・・・なんてことを妄想し、悶える純を想像する・・・・ (なんて汚れた思考をしているんだ、俺は) 祐太朗はアイスを食べ終わり自分を懺悔した。 対して純は、何を着ても映える祐太朗を盗み見る。 祐太朗はスエットにTシャツで胸板が厚いことが透けている。 あの暑い胸板に抱かれたい。 ・・・祐太朗は、突然純を抱き寄せ、 『俺のアイスの味確かめる?』 と、祐太朗から強引に唇を奪い、口を開けて舌を絡ませる。 『純のアイスも甘いな』 ・・・なんて妄想で、今度抜くか・・・ 二人は妄想をしながら、お互い冷静を装って、 寝る準備を済ませた。 その深夜、 急に重さを感じ、純は目が覚める。 「…!?」 自分の部屋に祐太朗が泊まりに来ていて、自分がベッドににていて祐太朗は床に布団を敷いて寝ていたが、いつの間にか祐太朗が純の寝ているベッドに入っているではないか。 さっきトイレに行った音がしたが、その後寝ぼけてベッドに入ってしまったのだろう。 しかしこんな事初めてだった。 それに何より驚いたのは、祐太朗は純をしっかり正面から抱きしめて眠っているからだ。 これは自分の妄想なのではないかと思ったが、祐太朗の堀の深い顔が目の前にあって、静かな息遣い、心臓の音も、感じる体温も、全てリアルでそれが現実であることを物語っている。 「ゆう…」 静かに起こそうとして声を掛けようとして、声を止める。 祐太朗は寝たまま、抱きしめる純のシャツに手を入ていき、背中を撫で始めた。 (う、うそ…) ゆっくりと上から下に手を滑らせ、腰を撫で回す。 「っ…、あっ」 ぞくぞくして、思わず声を漏らし、自分の口を抑える純。 妄想では何度も触ってもらっていたが、 多分これは夢じゃない。現実に身体が熱くなる。 (これは、マズイ) 思考は何とか祐太朗の腕から逃れようとするが、身体は身を任せたいと思っているのか、 全く抵抗できない。気持ち良すぎて。 祐太朗の手は純のお尻の柔らかい部分に伸び、ぎゅっと掴み自分の股間を押し付ける。 お互い勃っていた。 (や、やばい、前触ってないのに、イきそう) お互いのが擦れてどんどん硬くなる。 純は無理やり祐太朗の腕から逃れ、トイレに逃げる。 はあっ、はあっ、 大きく息を吐きながら、純は冷静になろうとして頭を回転させる。 どうしよう… 妄想じゃなく、祐太朗に触られてしまった。 自分の固くなったモノを自分で擦り処理をする。 この手が祐太朗の手だと想像しながら、 「はあんっ」 本当はもっと奥まで触れられたい。 挿れて欲しい… 妄想じゃなく本当に触れられてしまった。 もう、妄想じゃ満足できなくなる。 純は処理を終え、トイレの床にしゃがみこんだ。 対して祐太朗はしっかり起きていた。 寝てるふりをして、純を触ってしまった。 もう妄想じゃ我慢できなかった。 実際の純の肌は滑らかで、すべすべで妄想以上だった。 抵抗されればすぐに止めたが、純の反応は想像以上に素直でたまらなかった。 もっと気持ちよくしてやりたい。素直になってほしい。 寝てる振りをして触ってしまったのは、少々ずるかったが、 そうしないと、純の素直な反応はおそらく確かめられなかっただろう。 祐太朗は自分の処理を済ませ、純がトイレに行っている間に自分の布団にもどった。 こうして少しだけ変化のあった夜は翌日の朝を迎えた。 ボーッとベッドの上で窓の外の青空を見つめた。 先週のあの出来事は、やっぱり妄想だったのだろうか? 純はあの時起こったことを思い出す。 寝ぼけた祐太朗に抱きしめられ、背中やお尻を触られてそれに反応した自分。 でも、妄想では何度も触れられれいるので、どこまでが妄想かわからなかった。 なぜなら、現実ではないと思ってしまうくらい、祐太朗の態度が普通だからだ。 何事もなかったように振る舞っている。寝ぼけて覚えていないだけなのか… 触られた感覚がリアルで、どうしても妄想には思えなかった。 今までの妄想では感じたことのない熱や感触をしっかり覚えてる。 あの時のことを思い出して何度も抜いた。 そして、次の週末が来てしまった。 いつものようにお泊り勉強会をするために、今度は祐太朗の部屋で集まった。 祐太朗の部屋は潤の部屋より広くてベッドがセミダブル。背が伸びてシングルから買い替えたらしい。 (どうしよう…) 純は緊張していた。 何故なら祐太朗の部屋に泊まる時はセミダブルのベッドに一緒に寝るからだ。 祐太朗はいつもの部屋着に着替えて、純の向かいに座り、集中して勉強をしている。 純はそんな祐太朗をチラチラと盗み見ながら、麦茶をゴクゴクと飲み、 ・・・祐太朗は純を自分の足の上に座らせ、 『こないだの気持ちよかったろ?』 『起きてたの!?』 『当たり前だろ。いつもエロい目で見てた』 と、祐太朗は純の顎をグイッと掴んで強引に純の唇を奪う。 舌を絡ませ深く深くキスをする。 『俺のを純のお尻に突っ込んで、奥まで挿入したい』 強引に服を脱がせ、身体中にキスをしていく。 ・・・・なんて、妄想が暴走する・・・・ 「き、今日は帰ろうかな」 夕食の後片付けを終え、純がつぶやいた言葉に祐太朗は振り返る。 「なんで」 「なんで、って、理由はないけど」 と、視線を逸し頬を赤らめる純を見て、 (やべ、めっちゃかわいい…) おもわずトキメク祐太朗。 前回のを意識しているのだろう。 素直で本当に可愛い。 今すぐにでも全身可愛がりたい。 「せ、せめて俺布団で寝るよ」 「だから、何で」 純はもじもじしながら、 「も、もう祐太朗も成長したし、一緒に寝るのは狭いんじゃない?」 祐太朗はふっと笑い、 「俺の母さんかよ。セミダブルだから大丈夫だって」 ニコッと笑う祐太朗に、純はうなだれる。 「う、うん…いや、まあ」 しぶしぶ納得する純。 その反応に祐太朗は冷静を装いつつ、 (誰が別々に寝るかよ) ただでさえ純の家に行くと別々に寝なきゃいけない。自分の家に来たときだけ唯一同じベッドで寝られるのだ。 ベッドだって、今のような理由で一緒に寝るのを拒否されないために、背が高くなってシングルじゃ狭いと理由をつけて、わざわざセミダブルのベッドに買い替えたのだ。 「ほら、もう寝よう」 「う、うん」 純の緊張はピークに達していた。 冷静を装いつつ、純はすやすやと眠りにつく祐太朗の横で全く眠れないでいた。 今までは何も考えずに、祐太朗の隣で眠れていたのに、 シンとした部屋に、隣で寝ている祐太朗の息遣いだけが耳に届く。 その息遣いを耳にしつつ、やっとうとうとと眠りにつく… はずだった。 「う〜ん…」 「!?」 突然寝返りを打った祐太朗が純を後ろから抱きしめた。 純は身体をこわばらせる。 祐太朗は寝ぼけたまま、純の首にキスをしはじめる。 「ち、ちょっと…」 祐太朗はそのまま片手て純の身体を弄り乳首をつねる。 「んっ、あん…」 声を漏らして自分の口を抑えようとするが、その手を祐太朗の腕でガシッと押さえられ、そのまま祐太朗は純の小さい乳首を抓ったり優しくクルクルする、 「はあっ…」 祐太朗の手はそのまま、純の足の付根から股の間を撫でまわし、パンツの中に手を入れすでに固くなったモノを擦り始める。 「ああっ、ゆうっそこはダメぇ……」 純のお尻に祐太朗の硬いものが当たっている。 しんとした部屋に純のやらしい息遣いが響く。 「何でダメなの?」 祐太朗は純の耳元で囁く。 「こんなに反応しているに」 「お、起きてたのかよ!?」 「寝ぼけてこんな事するかよ。前回だって」 祐太朗は自分の固くなったモノを、純の股に挟んで擦りながら、抜き差しする。 「本当はこうやっていつも触れたかった」 「ゆう…」 純は祐太朗の顔を見た。 高揚して感じている顔をしていた。 お互いのモノが擦れ合って、今度は二人の荒い息遣いが部屋中に広がる。 祐太朗は強引に純の顎を掴んでその唇を奪う。 「んんっ」 もう抵抗できない。このまま身を任せたい、そんな思考に支配される。 二人はすぐにイッてしまい、純は気を失うように眠ってしまった。 「夢か」 窓から差す、朝の光をぼっと見つめふと隣を見るといつものように祐太朗が眠っていた。 昨日のはどこまでが夢だったのだろうか。 いつも祐太朗の事を妄想しすぎて現実がどこまでか、分からなくなっているのかも知れない。 少し距離を置いたほうがいいかも知れない。 純はそっとベッドから抜け出し、自分の家に帰った。 翌週月曜日。 いつものように家の前には祐太朗が待っていた。 純は祐太朗の方見ずに、 「あ、あのさ祐太朗」 「なに」 「俺しばらく一人で学校行こうかな」 「・・・・どうして?」 「ど、どうしてって、そ、それは…」 純は言い訳を考えていなかった。 気まずいからとは言えない。 「気まずいから?」 「え」 「純」 祐太朗は純の腕を掴み、じっと彼を見つめ、 「夢じゃないよ」 「え」 「こないだの。夢じゃないよ」 純の心臓はドクンと跳ね上がった。 祐太朗の視線はまっすぐに純を捉えて離さない。 「ベッドに寝てる純の首にキスしたのも、乳首をコリコリしたのも、ちんこさわったのも、身体中撫で回したのも、素股したのも、その唇に…深く深くキスしたのも、 全部…夢じゃないよ」 掴んだ純の手に優しくキスしながら真っ直ぐに言われ、純はボッと全身の血が上がっていく。 「なっなっなっ」 口をぱくぱくとさせるが、言葉が出てこない純。 「それに」 祐太朗は純の首をそっと撫で、彼の耳元で 「気づいてる?首のキスマーク」 「!?」 純は首をバッと押さえる。 昨日風呂に入った時に気がついたアザはキスマークだったのか!とやっと気が付く。 ちょうど襟に隠れて見えないが、シャツを脱ぐとはっきり跡が付いていた。 純は下を向き、 「何でこんな事するんだ」 「そんなの」 「好きだから」 祐太朗ははっきりと告げた。 祐太朗に告白された。 それも、いつもの妄想かと思ったが、一つ違うことがあった。 純の手にキスしながら、好きだと言った祐太朗の顔は、 今まで純が見たこともない様な表情をしていたからだった。 恥じらいながらも、冷静にかつ、はっきりと好きだと口に出した。 純の妄想にはそんな祐太朗はいなかった。というか、あんな祐太朗は見たことがなかった。 ドキドキするような、熱い視線。 思い出すだけで全身の血が上がっていく。 ますますどう対応していいのか分からなかった。 「あれ?どうしたの、純ちゃん」 後ろから声を掛けられ振り返ると、幼馴染で純達の同級生の真の妹のかおりがいた。 かおりは、純の顔をマジマジと見つめ、 「純ちゃん、何かあった?」 「え」 「切羽詰まった顔してる」 そう言い当てられ、純はぶわっと涙を溢れさせる。 かおりは純の肩をさすりながら、 「祐太朗と何かあったのね」 「どっどうして分かるの…?」 戸惑う純に、 かおりはきょとんとして、 「なんでって…」 「昔から純ちゃんの悩みは祐太朗しかないじゃん」 「ええ」 本人に自覚はなかった。 かおりとカフェに行き、話を聞いてもらうことになった。 「実は、その…なんて言っていいのかわからないんだけど、その…」 もじもじとアイスティーに入っているストローをクルクルさせる。 女々しいな… 「はっきり言いなさいよ」 かおりはアイスコーヒーに乗っているバニラアイスを突きながら、 「純ちゃんが祐太朗を好きなことは昔から知ってるから、遠慮しないで言っていいよ」 「え…なんで」 「わかるでしょそんなの。あんだけ好き好きビーム巻き散らせば。しかもお互い」 「お互い…?」 「祐太朗なんて純ちゃんにだけ優しいじゃん。昔からいつも」 「え、嘘だ」 「ホントだってば、祐太朗は純ちゃんしか見てないし、高校に入って純ちゃんとクラス別れた時すごく落ち込んでたし」 「何で今更、悩むことがあるのかと思うくらいだけど」 かおりは、じっと純を見つめ… 「二人の間に、変化があったとしか思えない」 純は、下を向き、 「……告白された」 「おお、祐太朗やるじゃん」 「いつも妄想では祐太朗とベタベタしてたんだけど、その…俺らいつも週末どっちかの家に泊まってて、最近その…」 純は顔を真っ赤にして声を萎ませる。 ピンと察するかおり。 「ヤッたのか」 「まだヤッてない!」 慌てて否定し、急に声が大きくなって我に返る。 「ヤッてないけど…近いことはされた」 「わーお」 祐太朗も思い切ったものだ。まあ祐太朗からすればずっと我慢していたと思うけど。 「今、祐太朗とどう接したらいいのかわからない」 と、涙ぐんだ。 かおりは腕を組んで、 「何でどう接したらいいのかわからいの?」 「……え」 「いつも一緒にいるのが当たり前なのに、純ちゃんは祐太朗の事好きなんでしょ?なんで悩む必要があるの」 「なんでって…」 「黙って身を任せればいいじゃん。ベタベタすればいいじゃん」 「……」 「告白された返事はしてないの?」 「…してない」 「なんで」 「…」 「祐太朗はちゃんと返事を聞きたいと思うよ」 「変わるのが…こわいんだ」 純はぎゅっと拳を握りしめ、 「今までの二人が変わるのが怖い」 言って涙をながす。 まるで違うものになってしまうような、 今までの二人がなかったことになってしまうような、 そんな気がして、怖くなった。 全身触れられて、気持ちよかった。 妄想の比じゃなかった。 いつもよりずっと優しくて、でも強引でそれがまた、堪らなかった。 全身で好きだと言われてるのがわかった。 気持ちが大きすぎて戸惑った。 真っ直ぐこちらを見て、好きだと言う祐太朗にどう返していいのか戸惑った。 「何も変わらないよ」 後ろからそう声が掛かって、純はドキリとした よく知ってる、祐太朗の声だ。 走ってきたのか、何とか荒い息を落ち着かせようとしている。 「早かったわね、悠太郎」 かおりはスマホを振ってみせる。 どうやら彼女が祐太朗を呼んだようだ。 「来て」 「ちょ…」 祐太朗は純の手を引いて店を出ていった。 近くの公園に純を引っ張って行き、 「なんで二人のことなのに、かおりに相談してるの」 祐太朗は悔しいという顔を見せ、 「二人のことなんだ、思ったこと俺に言ってよ」 せつなそうな祐太朗の表情に、純はズキッと罪悪感を感じる。 「…ごめん」 顔をそらし、でも逃げずに… 「ゆ、悠太郎の気持ちが、知りたい」 「俺の気持ち?」 「俺とどうなりたいの」 純がそうぶつやくと、祐太朗は真っ直ぐ純を見つめて、 「言っても、引かない?」 「え」 「純に毎日顔見て好きだって言いたい」 「純と手を繋いで歩きたい。純をもっと甘やかしたい。全身撫でて、グズグズにしてトロトロにして、奥まで…繋がりたい」 言われて先日の光景を思い出し、ボッと赤くなる。 「俺も、純に甘えたい。俺のこと好きになって欲しい」 「……」 ずっと好きだった祐太朗に、告白された。 それなのに、どうして素直になれないんだ。 「しばらく、一人で考えさせて」 言って、一人で帰った。 祐太朗は自分の部屋でベッドに横たわりながら、目を閉じて純のあられもない姿を想像した。 白くて細い腰を撫でて感じてる純の声を思い出しながら、祐太朗は自慰に耽っていた。 思えば今までは自分の妄想をネタに自分でしていたが、あの本物の感触や反応は妄想の比じゃなかった。妄想より純の反応は堪らなかった。 「んっ」 思えば純をネタにしている事が、後ろめたいと思う時もあった。 でも時が経つにつれて、それが罪ではなく愛だと確信した。 愛のどこが罪だというのだ。ずっと一緒にいて、これからも一緒にいたいだけだ。 でも、もしも純の気持ちを傷つけていたら… 「はあっ」 果てて、祐太朗は天井を見つめた。 しばらく考えたいという純と距離を置いていた祐太朗。 ある休日、 「よっ」 家に誰か訪ねた来て、祐太朗は玄関に出るとそこには同級生でかおりの兄である真がいた。 「突然なに」 「かおりから聞いた」 「何を」 「片思いを拗らせてるって」 祐太朗はムッとして、 「からかいにきたのかよ」 「最近純とかおり仲いいって知ってる?」 「…最近純とは顔合わせてないから」 気になりながら冷静を装う祐太朗。 でも、ムッとして、 「何でお前から純のこと聞かなきゃいけないんだよ」 「ん?」 「俺が今までずっと純のこと何でも知っているはずだったのに!何でお前が俺の知らない純の事話すんだよ!」 玄関先で思わず叫んでいた。家の中に家族はいない。 気持ちが高ぶって、 「誰よりも俺が純のこと知ってたいし、純の時間を独り占めしたいし、誰にも触られたくないし…!!」 祐太朗は、玄関に座り込み、 「純の、一番になりたい……」 と、ぐすっと泣き出した。 真ははあっとため息を付き、 「だってさ、純」 真のその言葉に、祐太朗はハタっと顔を上げた、 玄関に立つ真の後ろから、ひょこっと顔を出す純。 祐太朗は、涙を流しながら、夢心地で純を見上げる。 「あとは二人で話し合えよ」 真はそっと玄関から出て扉と締めた。 バタン… 玄関には、泣きながらしゃがみこんだ祐太朗と、それを見下ろす純。 取り乱した所を見られ、気まずい心持ちの祐太朗。 いつの間にか玄関に正座していた。 「純の気持ちを蔑ろにして……勝手に色々触って、ごめん」 祐太朗は素直に誤った。 まるで身体だけが欲しいように思われたかも知れない。 自分は最低な事をしていた。 「いつも、純に触っている妄想をしていたから、その、どこまでが妄想なのか現実なのか分からなくなって…」 再び涙がこぼれてしまい、 「最低なことをした。あんなことをして…好きになって欲しいなんておこがましいかも知れない。ごめん」 嫌われても仕方がない。 純は祐太朗の前にしゃがみこんだ。彼の頬に手を添えて顔を上げさせ、 そっと彼の涙を吹いてやる。 「一杯考えさせて、ごめん」 純は優しい口調で呟いた。祐太朗は涙でグチャグチャの顔で、 「何で純が謝るんだよ」 純は首を横に振り、 「そんなに悩ませて。祐太朗の気持ちを傷つけて、ごめん」 今度は祐太朗が首を振る、 「俺が悪いんだ。勝手に気持ちを押し付けて…」 「違うってば」 純はそう言って、祐太朗の肩をギュッと抱きしめ、 「そんな、必死に一番になろうとしなくていいよ。 だって、……もうとっくに祐太朗は俺の一番だから」 祐太朗の涙が止まる。 「それに……その、俺も色々妄想してたし」 「え!!」 祐太朗は一番大きな声を上げた。 「う、うそ」 「ほんと」 そう言って祐太朗の肩から離れた純の顔は真っ赤に染まっていた。 「俺も、その、祐太朗に触られたりしている妄想して、その、自分でシテたし。だから、その、俺も勝手に妄想してごめん」 祐太朗も思わず赤くなる。 純は涙する祐太朗も愛おしいと思った。 「好きだよ。祐太朗」 真っ直ぐ祐太朗の顔を見て、そう言って、そっと彼の口にキスをした。 祐太朗は再び泣き出し、 「うっ…」 「もういつまで泣いてるの」 「だって」 再び泣き出す祐太朗を笑いながら抱きしめる純。 その夜、 泣いて疲れ果てた祐太朗と手を繋ぎ彼のダブルベッドで、純は久しぶりにゆっくり眠りについた。兄弟のように育った二人には最初から壁なんてなかった。 それから二人は毎日以前のように、一緒に学校に行き一緒に帰り、 時々、カフェに寄ったり公園に寄ったりしてデート感覚を味わった。 一緒に入られるだけで何よりも幸せだった。 そして週末。 いつも交互にお互いの部屋に泊まっていたから、今日は純の部屋のターンだったが、純が祐太朗の部屋がいいと言うので、彼の部屋に決まった。 その日はいつもと同じく夕食を食べて、勉強して、祐太朗の次に風呂に入った純がいつもより戻ってくるのが遅かった。 (おそいな…) 祐太朗は、バタッとベッドに倒れ、ふうと息を吐く。 目を閉じて、そういえばあれ以来純に触れていない。軽いキスをしたり手は繋いでいるが、あれ以来純に無理矢理したくなくて、触れるタイミングを完全に逃していた。 祐太朗は、あられもない純の姿を思い出し、少しだけ自分のズボンの中に手を入れる。 すでに妄想で固くなったモノを自分で弄びながら、純の帰りを待つ。 「ん…」 ホントは早く挿れたい。 ギシッとベッドが軋んで祐太朗は目をはっと開ける。 そこには風呂上がりの純が祐太朗の上に跨っていた。 「一人で何やってんの」 「ごっ、ごめん」 「妄想の俺じゃなくて、現実の俺は欲しくないの?」 艶っぽく笑う純に祐太朗は釘付けだった。 「欲しい」 そう呟いて。 石鹸の香りのする純を優しく抱きしめた。 純を優しく寝かせ、丁寧にキスをしていく。 口にキスをして純の反応を確かめる。純は素直に答えてくれる。純から口を開けて舌を入れてくる。深い深いキスをして、祐太朗は純の首から全身を愛撫して、純の後ろをほぐそうと指を入れると、すでに柔らかかった。 「もしかして自分で準備したの?」 「うん」 純の風呂が遅かったのも、そのためか。 「じゃあ、今日俺の家にしたいって言ったのは」 「祐のベッドのほうが広いから」 最初から、今日はそのつもりで… それだけで堪らなかった。 「また泣きそう」 「ばか」 ふふっと笑い純は足を広げて、 「早く、挿れて」 まるで妄想の中のように、いや、それよりも甘く呟く純を、 祐太朗は優しく抱いた。 甘い一晩が明け、祐太朗は隣で眠る純を見つめた、満足した顔で眠る彼を見つめ、 「一生大切にするよ、純」 彼の手にキスをしがら、小声でそう呟いた。 「俺も」 返事を返され、ふと目を開けると、優しく微笑む純がそっと目を開けた。 祐太朗は枕に顔を埋め、 「何で起きてるの」 「何で起きている時に、言わないの」 「……また今度」 「もー」 言って二人は笑う。 小さい頃から一緒にいる二人。 密かにこれからも一緒にいることを誓い合うのだった。 終。

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