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城壁の皇帝3
残された少年はカタカタと小さく震えながら怯えていた。ときおり上目遣いにチラリと頭上の様子を窺うも、すぐにまたうつむいては震えている。
「坊主、名前は?」
「え……? あ、はい……。ひょ、冰 です。ふ、ふふふふふぶぶき……」
怯えてはいるものの少年に逃げる様子はなく、訊かれるまま素直に答えてよこしたまではいいが聞き取れる状態ではない。
「ふふぶ……? 埒があかんな。まあいい、親はどうした。何処に住んでいる」
今は日付が変わる少し手前の深夜だ。如何にこの世界でも、子供が出歩く時間帯ではない。
「親……?」
「そうだ。お父さんとお母さんだ」
「お父さんとお母さんは……いません」
「いない? 出掛けているのか?」
「うううんん……そ、そうじゃなくて……。もう……し、死んじゃったから」
少年の言葉に思わず瞳を見開いてしまった。
「亡くなった? ではお前さん、今は一人で暮らしているというわけか?」
その問いに少年はブンブンと首を横に振ってみせた。
「今は……じいちゃんと住んでます」
「爺さんがいるのか」
「うん……じゃなくて、あの……はい。じ、じいちゃんは僕の家のお隣に住んでたんだけど、お父さんとお母さんが死んじゃってからじいちゃんのお家に行ってもいいって言ってくれたから……」
「隣の住人だと? では本当の爺さんではないというのか」
少年はコクリとうなずいた。
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