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城壁の皇帝7
「腹が空いていると言ったな。来い、メシを食わせてやる」
焔 は少年に向かってクイと手招きをし、歩き出した。だが当の少年は未だ震えが治らないのか、壁を背に突っ立ったままだ。
「何をしている。来いと言ったのだ」
「は……い、あの……でも……」
「遠慮せずとも良い。来るんだ」
「は……い」
おずおずと歩き出すも、恐怖でか思ったように足が進まないようだ。
焔 はやれやれと溜め息ながらも、少年の元へ歩み寄ると、クイと軽々彼を抱き上げた。
「うわ……ッ! あの……お兄さん……!」
「お兄さん――だ? 面白い呼び方をする。そんなふうに呼ばれたのは初めてだな」
「す、すすすすみませ……ッ! あの……僕、歩けますからッ」
「何を言う。こんなにガタガタ震えているじゃねえか。いいから素直に抱かれてろ。すぐに着く」
「……はい、あの……すみませ……」
焔 は少年を肩に担ぎ上げながら、これまで味わったことのないような不思議な感覚に胸躍る心持ちにさせられるのだった。
◇ ◇ ◇
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