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城壁の皇帝6

 長男坊の周風(ジォウ ファン)は王道育ちゆえ紳士的で頭の切れる穏やかな性質だ。反面、弟の周焔(ジォウ イェン)は妾の子という立場からか、兄よりはずっと野生味のある男に育っていった。もちろん(イェン)にとって家族は誰もがやさしく、分け隔てなく接してくれたものの、ひとたび気を緩めれば組織の中で妾の子を快く思わない連中から毒殺などされないとも限らない。そんな緊張感の中で(イェン)は上流社会の優雅な一面とは別に、悪事が横行する裏の面でも顔が効くようになっていった。  以上、諸々の理由から、父の隼より香港一の闇と言われたこの九龍城を統治する役目を仰せつかったのである。(イェン)、二十二歳の秋であった。  それから丸二年が経つ頃にはすっかりこの闇の街の統治者として崇められるようになり、いつの頃からか九龍の皇帝と呼ばれ、この街で暮らす常識人にも悪人にも一目置かれる存在となっていったのである。

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