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ルナと紫月2
「上手くいったな。感謝する」
焔 の邸へと戻りがてら遼二が頭を下げる。
「しかし――カネ。お前さんの咄嗟の判断には感服だが、何もあの男を男娼にするという名目でなく、例えば俺の世話係に鞍替えさせる――でも構わんぞ? そうすりゃあの頭取もルナを男娼として稼がせようと期待することもなくなろう」
今からでも自分の側近に取り立てると言った焔 の気持ちは有り難いものの、遼二は同意しなかった。
「そんなことをすればおめえの立場を悪くしかねない。いかに皇帝命令といえど、遊郭一期待の高い容姿を持つ男を側付きとして引き抜けば、この街の者たちには皇帝が公私混同していると映るだろう。俺は――とにかくもあのルナをお前の手元に預かってもらえるだけで御の字だ。しばらくあいつと過ごしながら本物の紫月かどうかを探りたいと思う」
遼二は遼二で、焔 の立場を思ってのことだったのだ。
そんな友に熱い思いが込み上げる。
「本当に――てめえときたら。そういうところは昔から変わらんが、実際頭が下がるぜ。それよりカネ、おめえに紹介したいヤツがいる。もしかしたらあのルナと引き合わせれば、案外いい方向にいくかも知れねえと思ってな」
焔 はルナに冰 を紹介したいと思っていた。
冰 は子供でルナとは年も大分違うが、素直でやさしく穏やかな性質だ。彼と共に過ごす内にルナも心穏やかになって、意外にも良い方向へ向かうのではないか――焔 にはそんな予感がしてならなかった。
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