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ルナと紫月3

 邸に着くと、ちょうど中学校から冰が帰って来たところだった。側近の(リゥ)に向かって送り迎えしてくれたことへの礼を述べている。小さくて細い身体を目一杯曲げながら、深々と頭を下げては『今日もありがとうございました』と言っていた。(イェン)によれば特にそうしろと教えたわけでもないのに、自ら進んでそうしているらしい。礼儀をわきまえているというのか、子供ながら一目でその性質の良さが窺えるようであった。 「あの子供が冰か?」  遼二が訊く。 「ああ。まだ中学生になりたてのガキだが素直でいいヤツだ。共に過ごす内にルナという男の気持ちも和むだろうと思う」 「そうだな――」  間もなくしてルナを迎えに行かせたもう一人の側近である(リー)が彼を連れて戻って来た。 「お荷物も全て引き上げて参りました」  こちらですと言って荷車を指す。ルナの所持品はわずかばかりの着替えくらいしかなく、引っ越しは一度で済んだようだ。 「ご苦労だったな、李。持ち物はこれだけか――。では後程服など必要な物を揃えてやらねばならんな」  必需品の調達は追々するとして、(イェン)と遼二は早速に冰とルナを引き合わせることにした。

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