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ルナと紫月4
ところが当のルナは特に興味を示さない。かといって子供の冰を見て小馬鹿にするというわけでもないのだが、物事に対する関心自体が希薄のようだ。遼二はとりあえずルナが紫月と同一人物であるのかどうか、まずは彼の身体的特徴の観点から調べてみることにした。
紫月には左腕の肘の部分に特徴的な傷がある。子供の時分に実家の道場に置いてあった真剣を無断でいじった際に、その刀先が触れて切れた傷だ。怪我自体は浅く、大したことはなかったものの、当時父親の飛燕 から大目玉を食らって泣いていたのは遼二もよく覚えていた。家に入れてもらえないと言って泣きじゃくっていた彼を慰めたものだ。大人になった今でもその時の傷はしっかりと痕になって残っている。
もうひとつは太腿の付け根あたりにある割合大きめのホクロだ。遼二はその二つの特徴がルナの身体にあるかどうかを確認したかったのだ。
焔 が邸内にある空き部屋を当てがってくれたので、遼二はルナと共に持って来た荷物などの整理をすることにした。といっても荷物はごくわずかだ。すぐに片付いてしまい、夕飯までにはまだ少し時間があったので、早速身体検査に取り掛かることにした。
「ルナ――ここへ来い。まずはお前さんが男娼として使い物になるかどうかを確かめねばならん。服を脱いで身体を見せるんだ」
「ふぅん? 了解――」
ルナは嫌がるわけでもなく恥ずかしがるわけでもなく、言われた通り素直に服を脱ぎ始めた。
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