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ルナと紫月6
「紫……! いや、ルナ。ちょっと脚を開いて見せろ」
「ん? ああ、これでい?」
スイと持ち上げられた太腿の付け根にはこれまた見覚えのあるホクロ――。ルナは紫月で間違いない、そう確信した。
「お前……この傷はどうした」
腕を掴んでそう訊くと、ルナは不思議そうに首をひねった。
「傷? さあ……俺、こんなトコに傷あったんだ」
どうやら本人も覚えがないようだ。
「大分古いものだな。ガキの頃に負った傷だろうが――覚えてねえのか?」
「ん、全然」
「そうか――」
「なあ先生、じゃなかった。遼だっけ。こういう傷があると男娼になるには不利なのか?」
どうもこのルナは男娼になるということにすら嫌悪感も不安もまったく抱いていないようである。何が彼にそれほどまで自我を忘れさせているのか、原因は分からないものの、身体の傷といいホクロといい彼が紫月であるのは事実のようだ。
「不利というわけではないが――、それよりもう服を着ていいぞ。そろそろ夕飯の時間だ」
遼二はとりあえずこのことを焔と相談してみることにした。
◇ ◇ ◇
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