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第3話 アオハルな僕ら(1)

 全国高等学校総合体育大会――通称、インターハイ。その予選が六月に開催された。  弓道部に所属している陽翔も出場選手の一人である。先日行われた団体予選を勝ち抜き、今日は準決勝および決勝が行われる日だった。  試合では矢の的中数を競う。二十八メートル先に設置された直径三十六センチの的に向かって、矢をあてるのが競技内容だ。  大前として的の正面に入場を始めると、当然のごとく試合の空気に緊張する。  しかし、弓を引くときの精神が研ぎ澄まされるこの感覚は嫌いではなかった。 「――……」  団体戦は五人で弓を引く。団体としての試合の流れもあり、ここ一番の精神的な強さだって求められることも多々あるけれど、間違いなく今日はいい流れがきているように思えた。  が、残念なことにも、結果としては決勝で惜しくも敗退してしまった。相手の高校とは二中差――的中した矢の数が二本及ばなかったのだ。  個人戦の予選も通過していたため、陽翔は個人としても決勝に挑んだが、こちらは四位という結果だった。  全国大会に出場できるのは、団体戦は優勝校・個人戦は上位二名のみ。団体でも個人でも表彰こそされたものの、やや悔しさが残る結果となってしまった。 (高校もこれで引退かあ……)  表彰式のあと、LINEで智也にメッセージを送った。 『団体は二位で、個人は四位。インハイ駄目だった』  すると、すぐに既読がついて、『お疲れ、惜しかったな』と返事が届く。今はシンプルな言葉がありがたかった。     ◇  休日明けの月曜日。全校朝礼で表彰式があり、クラスでもその話題で持ち切りだった。「結城くん、おめでとう!」「見に行きたかったあ!」などと、女子生徒から次々に声をかけられて少し辟易してしまう。 (なんか疲れた……っ)  放課後になってやっと人がはけると、陽翔はぐったりとした様子で机に突っ伏した。すると、そこへ智也がやって来て、頭をがしがしと揉みくちゃにされる。 「なーに腑抜けたツラしてやがんだ、コラ」 「……なんでいきなり喧嘩腰なんですか、こら」  智也の当たりが強いのはいつものことなので、特に気にしないのだけれど、先日のように素直に労ってほしくもある。  そんなことを考えていたら、智也はため息まじりに言った。 「せっかくだし、メシ食いに行こうぜ」

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