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第6話 セックスリベンジ(1)★
あっという間に夏休みが終わって、はや数週間が経っていた。
陽翔と恋人同士になったものの、やはり幼なじみとしての付き合いが長いため、正直なところ、関係が大きく変わったという実感はない。
ただ、ふとしたときに恋人らしい雰囲気にはなるし、そんなときはいつだって陽翔にドキドキとさせられてしまう。
とはいえ、まだ高校生――ましてや男同士なのだから、おおっぴらには触れ合えない。
せいぜい人目を忍んで手を繋いだり、ハグやキスをしたり。互いの家だって普通に行き来するけれど、家族がいる手前それ以上のことはなかなかできなかったりする。
陽翔が言うには「焦らず、ゆっくりやっていこう?」とのことだが、智也の性格上、辛抱強く待つだけなんてできっこなかった。
「っ、は……」
ある休日の昼前。ベッドの上でうつ伏せになっている智也の姿があった。
下半身は何も身に着けておらず剥き出し。コンドームを装着した指を後ろの穴に挿れた状態で、時折ヌチヌチと水音が響いている。
(相手がハルじゃなきゃ、ぜってーここまでしてやんねえ……っ)
陽翔と付き合いだしてからというもの、ようやくセックスについて考えるようになった。
そして、確信してしまったのだ。男としてどうかとも思うが――彼になら抱かれてもいい、と。陽翔が好きだからこそ身も心も繋がりたくて、最近ではこうして自ら拡張するような行為をしている。
(でも、あいつのすげーデカいし……ちゃんと入っかな)
そのようなことを考えつつ指を増やす。
先日、陽翔がしてくれたときよりは、いくらか挿入がスムーズになった気がするが、実物はこの比ではないだろう。あれほどの質量が自分の中に入るだなんて考えられない。
「んっ、ハル……」
陽翔の雄々しいものを想像していたら、無意識のうちに名前を呼んでいた。
そのことにドキリとしたのも束の間。まるで呼びかけに応えるかのようにスマートフォンの通知音が鳴る――陽翔からのLINEだ。いくらなんでもタイミングがよすぎて、声が出ないレベルで驚いてしまう。
空いている手でメッセージを確認すれば、『課題あるんだから、そろそろノート返してもらわないと困るよ』とあって、そういえば数学のノートを返していなかったことを思い出す。けれど、今はそれどころではないのでひとまず無視することにした。
結論から言うと、その判断は間違っていて、思わぬ事態を招くことになるのだが――。
「ねえ! こっちは困ってるのに既読スルーって……え――?」
「~~っ!?」
LINEを無視して行為に没頭していたら、突如として部屋のドアが開け放たれた。
聞こえてきたのは陽翔の声で、反射的に振り向けば、彼は目を丸くしながらこちらを見つめている。
こちらは尻を突き出すような格好で、まさに己の秘部を弄っている最中。ハッと下着を上げたものの、言い逃れできない状況なのは明らかだった。
「お、お邪魔しました……」
気まずそうな顔で陽翔が告げ、ドアを閉めようとする。すぐさま智也はそれを阻止した。
「おいコラ、待てや」
「みっ、見てない見てない! 何も見てないよ!」
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