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第8話 もう守られてばかりじゃない(7)★
「いいっ――ぜんぶ、俺んなかにだせよっ……」
「じゃあ遠慮なく……っ」
今日何度目かもわからない煽りを受け、陽翔は欲望のままに一番深いところに自身をねじ込む。そして、ドクンッという脈打ちとともに精を放った。
「……くっ」
「あ、ああぁぁ……ッ」
直後、智也もまた絶頂を迎えたようで、甲高い嬌声が上がった。
内壁がきゅうきゅうと収縮を繰り返す。最後の一滴まで搾り取られる感覚を味わいつつ、陽翔はたっぷりと己の欲望を注ぎ込んだ。
「ハルの、すげ……まだ出てる」
肩を大きく上下させて智也が呟く。若干の恥ずかしさを陽翔は覚えた。
「ご、ごめん、すごく気持ちよくって。……大丈夫? お腹、ヘンな感じしない?」
「平気だって。つーか腹んなか、あったかい感じして――ちょっとクセになりそうかも」
智也は体を弛緩しきって、体重を預けるように陽翔の胸板へ頬をすり寄せてくる。すると自身が抜け落ちて、先ほど出したものが溢れ出てくる感覚がした。
「……やべ、なんか出ちまった」
慌てて手をつき、智也が四つん這いになる。
陽翔が視線を落とせば、後孔から白濁が糸を引いている光景が目に映った。そのあまりの淫靡さに興奮を覚え、知らずのうちに再び自身が力を取り戻してしまう。
「あの、ちゃんと責任もって掻き出すから……もう一回いい?」
結局、それから二度も交わってしまい、智也にまた怒られる羽目になったのだった。
◇
翌朝、いつものように陽翔は智也と一緒に登校した。教室に入った途端、早速クラスメイトに囲まれるのだが、今日は思わぬ人物が声をかけてきた。
「坂上、その……昨日は殴って悪かったな」
佐藤である。彼は智也に深々と頭を下げ、謝罪の言葉を口にした。
「……別に。こんくらい何ともねーわ」
智也は面食らったようだが、そう静かに返して席に着いた。
相変わらずぶっきらぼうな智也の姿を目で追いつつ、陽翔も自分の席に荷物を下ろす。なぜかその後を佐藤がついてきた。
「俺、結城に訊きたいコトあんだけどいい?」
「うん?」
「ぶっちゃけ、俺のこと――どう思う?」
「……え」
「いやいや、今さらこんなこと言うのもどうかって思うよ!? けどさ、あのときからお前のことが頭から離れねーんだ! こう、胸のあたりがすげードキドキしちまって……」
見れば、佐藤は頬を赤く染めて緊張している様子だった。思わぬ展開に笑顔のまま固まってしまう。
「だからさ、俺と付き合って――」
「ごめん、無理」
最後まで聞かずに即答していた。ところが、なおも佐藤は食い下がってくる。
「なんでだよ! 俺のどこが気に入らねーんだよ!?」
「……君ね」陽翔は小声で返した。「あんな写真撮っておいて告白なんてよくできるね」
「あれくらいなら、俺にもまだチャンスあるかなって思ったし」
「昨日の今日で何言ってんの……」
「だって、手ェ繋ぐくらい――」
と、佐藤が服を掴んできたのだが、不意に視線が落ちたのがわかった。襟元が崩れて、鬱血の痕が目に入ったのは想像に容易い。
「そういうことなんで」
陽翔はそれだけ言うと、そっと襟を正した。
頬杖をついた智也が横目でニヤリと笑っているのが見える。きっと、今のやり取りの一部始終を眺めていたのだろう。
二人は人知れず視線を交わし、同時にほくそ笑むのだった。
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