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第31話 騒ぎの後
『ならば男娼たちへの賠償金 について、話し合うとしよう!』
と、始めにレウニールは言ったが…
実際は話し合いというより、むしろレウニールはセルビシオ伯爵を言葉巧 みに言い包 め、多額の賠償金を男娼たちのために、むしり取ることに成功した。
その結果、暴力を受けた被害者のフルタと… 以前、伯爵から暴力を受けた、風魔法でアユダルを助けようとした男娼。
この2人は、セルビシオ伯爵から支払われる賠償金で、借金を全額返済できる予定である。
だが… 男娼を始めたばかりの、アユダルの借金はまだまだ多く… 賠償金で全額返済までには至らなかったが、最終的に3分の1まで減らすことが出来た。
娼館の2階へと上がり、いつもの部屋のベッドに2人で座ると…
アユダルは自分の膝の上にレウニールの手をのせて、じわじわと慎重に治癒魔法をかけた。
「今夜は少し、手に違和感を感じるかもしれませんが… 組織が馴染 めば、明日には元通りになっていますから、ケガをした手を、あまり使わないようにして下さいね?」
「ああ、わかった!」
ザックリと切れて、骨まで見えていたてのひらの傷が綺麗に治り… レウニールはにぎったり、開いたりして、手の感覚を確かめる。
「痛みはありますか?」
「鈍い痛みが少しだけあるが、気にするほどでは無いな… 敏感なてのひらの傷だから、治療をしても不快な感覚が残ると思ったが… ほとんど何も感じない! アユダルは、良い腕をしているな!」
レウニールは誇 らしげな顔で、アユダルを褒めて頬にキスを落とした。
「僕は骨の治し方を習ったことがないので、骨まで砕けていたら、お手上げでしたが…」
「そうなのか?! 手慣れた治療に見えたから、そうは思わなかったが… それにしてもアユダルの治療の腕を、このまま埋もれさせるのは惜しいなぁ…!」
「あっ! レウニール様、実は昼間… 治療師様が僕に会いに来てくださって、治療師見習いにならないかと、誘われました! 僕の場合、男娼をするよりもそちらの方が稼げるからと」
「何?! そいつは本当に治療師か? 詐欺師ではないだろうな?!」
心配そうな顔をして、レウニールはアユダルを見下ろした。
レウニールが疑うのも無理のないことで、治癒魔法を使える者自体が少ないため… 治癒魔法が得意な家門も、王国では数えるほどしかない。
その希少さから、その家門は同じ血筋の治療師を守るため… 別の家の出身者で、そのうえオメガの見習いを受け入れることなど、まず無いのだ。
「いえ、大丈夫です! その治療師様は僕と同じオメガの女性で、平民を相手に安い治療費で治療するそうです… この娼館の男娼たちも、みんなお世話になっていると聞いています!」
「ああ、なるほど… アユダルと同じオメガの治療師だから、オメガの見習いを取るのか?」
オメガは子を産む道具、政略結婚の駒として扱われるため、働き手として扱われることは無い。
「はい」
「なら、アユダルは男娼を辞めるのだな?」
「……はい」
「・・・・・・」
なぜかレウニールは寂しげに、うつむいた。
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