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第1話・大きな傷を抱えて。(7)
だけど、男のオレとしては父さんの方に似たかったんだけどな……。
だってオレときたら、大きなくりっとした目にちょこんと真ん中に乗ってる小さな鼻。口だって小さいし……毛並みはいいに越したことないんだけどさ。人間の姿になったら女と間違われるし、たまったもんじゃない。
オレだって立派な妖狐族の男なんだ。
そんなオレもちゃっかり父さんの強力な妖力を受け継いでいる……んだけど、自分では力を制御できない。だから妖狐としての力を使わず、だけど最小の妖力を持って人型になるんだ。そんなわけで、自分の力を上手く使えないオレは、力を欲しがる奴らの格好の餌食になる。オレの力を狙ってくる奴は多い。オレの幼馴染みの神楽もそのひとりだ。だからそんなオレを父さんはいつも警戒して側に居てくれた。守ってくれたんだ。
なのに……神楽はここ数年間でもくもくと力をつけはじめ、父さんの妖力も超えたんだ。
力ある者はさらにその上の力を欲しがる。
神楽はオレに目をつけ、力を奪おうとした。
妖力を奪うのは簡単だ。身体を繋げさえすればいい……。
だから神楽はオレを襲ったんだ。
昔はさ、神楽はとても優しい奴だった。オレといつもツルんで遊んでいたんだ。
まさか父さんも母さんも、そんな神楽が牙をむけるなんて信じられなかっただろう。
それは一瞬の出来事だった。オレたち妖狐は成人を迎えると、単独行動をしてお嫁さんを連れ帰る。だから他の妖狐もそうやってオレたちから離れて行った。
オレの家族は、本当は兄さんが三人いるんだ。オレは末っ子。
みんな離れ離れになった。
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