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第1話・大きな傷を抱えて。(6)

 なんて心の中で呟くオレ。  幸は目線をオレと同じにして尋ねてきた。 「君の名前はなんて言うのかな?」  え? オレの名前?  だけど今は狐の姿だし、尻尾も一本しかないから妖力がない。言葉すらも発言することができないんだ。 「どうしようか……。なんて呼べばいいかな?」  そう言って真正面から見つめてくる幸。  なんて呼べばいいか……って訊かれても、今のオレはただの狐で言葉は言えないし。  オレはただただ黙ったまま幸を見つめ返す。 「そうだな~。お前は綺麗な目をしているね。それに気品がある。『古くから受け継がれた尊い都』で、古都(こと)っていうのはどうかな?」  目を細めてふわっと微笑む幸に、ドキっとした。だってそれが正真正銘、オレの名前なんだ。  なんで幸がオレの名前を知ってるんだろうって、そう思った。  それに気品があるって幸は言った。  人間の目にはオレはただの狐に見えるはずなのに……?  今のオレは尻尾がひとつだけど本来は違う。  オレたち妖狐は九尾の狐と言われる妖怪の一種だ。人の姿に化けて人間を襲ったり、困らせたり、食い物を奪って生きていたりする。  父さんは立派な九尾の狐としてあやかしの中ではけっこう名が知れている。母さんの毛並みもすごく綺麗で、同族の間じゃ美女として人気なんだ。  かく言うオレの容姿は、今は神楽にやられた所為で弱っていているからこんなだけど、本来は父さんのような立派な九尾の尻尾があって、母さんに似ているとよく言われる。

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