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第5話・恋ってなに?(2)
だけど、さ。悲しいかな、今のオレは妖力を失ったただの小さな狐だ。ドーベルマンは怯える素振りさえも見せずにオレを見ている。
『俺さ、お前に惚れた!!』
「…………」
――はあ?
輝いた目で話すドーベルマンに、オレは大口を開けていた。
……えっと?
コイツ、何て言った?
絶句するオレを畳み掛けるようにしてドーベルマンは続ける。
『昨日、暴れまくる猫を宥めていただろう?』
ああ、そういえば、そういうこともあった。
あの時は、せっかく気持ちよく眠ってたのに起こされたんだ。
すんげぇ眠くて仕方なかったから、宥めてやっただけだ。
ほんとにアレはもう、最悪だった。
そのことを思い出してオレは顔をしかめた。
だけど、オレの心情をまったく理解しないドーベルマンは目を輝かせている。まるでオレを崇拝するかのようだ。
『その姿がさ、すんげぇカッコよかったんだ。男の中の男っていうか……。な、俺の彼女になって!!』
ハアハアと荒い息をあげて話すドーベルマンにオレはタジタジだ。
――いやいや、ちょっと待て。オレは男の中の男なんだろ?
だったらなんでお前の彼女にならなきゃならないんだ?
だいたい、そう言うお前もオレと同じ男だろうが!!
ツッコミどころ満載なドーベルマンに、やっぱりオレは絶句しすぎて何も言えない。そのまま黙っていると、突然オレが入っていたカゴの中へと奴は顔を入れてきたんだ。
なんだよ!! 狭いだろうが!!
なんて思っていると、奴は突然オレの尻に鼻を当ててきやがったんだ。
オレは慌ててソコから飛びのく。
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