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第5話・恋ってなに?(1)

 その日から、オレに対する幸と女子大生の接し方が変わった。そしてオレの所定位置も大きく変わった。  まず、オレは上の階の寝室から一階の動物病院の受付カウンターの上に下ろされた。  二人はオレが居れるようにと等身大のカゴを用意し、中にふかふかの布を置いてくれた。  室内の換気も行き届いているし、何より見晴らしがいいそこは、オレの第二の定位置になった。 「あ、きつねちゃんだ」  受付カウンターにいると人間の子供はオレの頭を撫でる。  オレは……といえば、頭を撫でられるという行為がすっかり慣れてきたし、ココに来た当初の人間嫌いもそこまでなくなっていた。  リンっていう猫の一件で人間が嫌な奴ばかりじゃないとわかったからだ。  オレの人間に対する価値観も大分変わりつつあった。  こんな生活も悪くはないかもしれない。  そう感じていた。  突然、刺すような視線を感じたオレは、閉じていた目を開け、何気ないふうを装って、チラリと視線が感じる方向を見る。  すると、オレの目の前には大きなドーベルマンが鼻息を立ててオレを見ていた。 『なぁ、お前すごいな!!』  ドーベルマンとほんの一瞬目が合うと、そう話しかけてきた。  オレは素知らぬふりしてふたたび目を閉じる。  するとそこへ、ドーベルマンはクンクンとオレの耳に鼻を近づけて匂いを嗅いできた。  なんだよコイツ、失礼極まりない奴だ!!  オレは自分よりもひと回りもふた回りも大きなドーベルマンを睨んだ。

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