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第4話・『いっぴき』と『いっぴき』(5)
オレはそう言うと、猫は目をスッと細め、何かを考えるようにしてからコクリとうなずいた。
それを見たオレは、幸の側まで行くと、彼の袖を口でグイグイ引っ張った。
「古都?」
幸は目を丸くさせると、大人しくベッドの上で鎮座している猫を見る。
「リンちゃん!! ああ、狐ちゃん。あなたはすごく頭がいいのね。リンちゃんを説得させてくれたの?」
婆さんは涙を浮かべてオレと大人しくなった猫を交互に見てそう言った。
「古都、ありがとう」
幸は袖を引っ張っていない手でオレの頭をひと撫でして猫と向き合った。
あ、そうだ。
危うく忘れるところだった。
『あ、痛いけど我慢するんだぞ?』
立ち去り際、『消毒』というものを思い出したオレはほんの少し振り向いて観念した猫に話した。
猫は何を言っているのかわからないといった感じだったけど、その理由はその後すぐにわかったと思う。
……やれやれ。
これでゆっくり眠れるぜ。
オレは心地よい昼寝を満喫しようと、その場からゆっくり立ち去った。
その姿を、新たな敵が見ていたとも知らずに……。
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