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第4話・『いっぴき』と『いっぴき』(4)

 やっぱりな。  そんなことだろうと思ったぜ。  内心うなずくオレに、猫は続きを話す。 『だいたい、人間なんかのペットになったお前の言葉なんか信用できないね』  っはあ?  ちょっと待て!  この猫、今なんて言った?  ペット?  オレが?  ――冗談じゃねぇ!  オレは人間のペットなんかじゃねぇよ。  聞き捨てならない言葉を聞いたオレは猫に怒った。 『オレはそんなんじゃない! ――あることで世話になってるだけだ』 『あること?』 『ああ。この足を見ろよ、すんげぇ痛いんだ』  オレは後ろ足を見せるために背中を向けた。ゴクリと喉を鳴らすような音が聞こえる。  猫に見せたあと、オレはまた向き合うと、猫は目を瞬かせていた。  どうやらオレのことを少しは聞き入れる気になったようだ。  説得するなら今しかない。  オレはすかさず続けた。 『オレの足をここまで回復させてくれたのは、ここにいる医者と受付係なんだぜ?  それにさ、お前をここに連れてきてくれたお婆さんはすげぇ優しそうじゃん? もし、お前を痛めつける気があるなら、とっくの昔にそうしてるんじゃないか? ココにお前を運ぶのだって、実は『金』っていうものが必要みたいなんだ』  意味は分かんねぇけど、人間は紙きれを大切そうに持っているからな。それで欲しい物を手に入れたり手放したりするらしい。 『なぁ、その腹、治してもらえよ。大丈夫だって、オレもそうやって治してもらってるところなんだからよ』

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