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第4話・『いっぴき』と『いっぴき』(3)
その度に戸棚が揺れて、戸棚の中にあるいくつもの薬が入ったビンがガシャンと大きい音を立てて倒れていく。
いくつかは割れた後なのだろう。棚に設置してある開き戸からは得体の知らない液体が流れていた。
液体の薬が入ったビンが割れる音を聞いた猫はさらに敏感になり、神経を逆なでる。
よって、惨劇はさらに悪化するばかりだ。
ああっ、もう!!
大の大人が三人もいながら何やってんだよ!
でかい図体は見かけだけかよ。
見ていられなくなったオレは、猫がちょうどベッドへと着地した頃合いを見計らい、ベッドを支えている金具を利用してひょいひょいと猫の前に立った。
『お前、何だ!?』
猫が言った。
むろん、この声は人間からしたらただの『ニャア』という声にしか聞こえないんだけどな。
『俺たち動物のようだが、なんか違う匂いがする』
猫はそう言うと、オレは危害を加えないと言う意味を込めて後ろ足をかがめて腰を下ろした。
「古都?」
そんなオレと猫が対峙する姿を見ている人間三人は訝しげに見つめてくる。
それにかまわず、オレは前かがみになって威嚇しようとしている猫を見据えた。
『なぁ、何をされたのかわからないけどさ、少なくともココにはお前を痛めつける奴は居ないぞ?』
『んなこと信用できるか!! 人間は、俺がまだ幼いころに母さんと離れ離れにさせて俺を捨てやがった!! 誰にも拾われず、そのまま街中をウロウロするようになった矢先だ。奴らが乗り回している『自転車』とかいう化け物に弾き飛ばされ、この様だ!!』
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