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第5話・恋ってなに?(7)
だけど加奈子は違う。
いくら幸に近づくためだからと言っても受付の仕事はきちんとしてるし、病院とは関係ない弱りきっているオレの世話までしてくれたんだ。
あの人間はたぶん、加奈子と同じような動機があってアルバイトに応募したとしても、そこまで仕事をきちんとするようには見えない。
それ以前に、幸はあの人間を雇わないとは思うけどな。だって、あの女の服装はどう考えたって動物病院の服装じゃねぇし。
オレはそのことを伝えるために、加奈子の手にすり寄った。
「もしかして慰めてくれてるの? かわいいな……古都ちゃんは……」
かわいい。
――っていう言葉は、さ。
オレにとって侮辱なんだけど、仕方がないから今だけは許してやるよ。
オレは何も聞かなかったふりをして、そのまま加奈子の隣にいた。
「恋って、そう簡単にはいかないね」
ぽつりと加奈子は眼差しを遠くに向けてそう言った。
好き?
恋?
それってなに?
オレには理解できない感情だと思ったけど、なぜか彼女の気持ちが少しだけわかる気がした。
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