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第5話・恋ってなに?(6)

 どうしてだろう。  止めることのない涙を流しているそんな彼女を見ていると、オレもなんだか悲しくなった。  オレは泣いている加奈子の手の甲に顔をすり寄せる。  すると加奈子はまた嗚咽が入り混じった声で話しはじめた。 「一目惚れだったの」  ひとめぼれ? 「その時、ちょうど大学の学校帰りだった。動物に笑顔で話しかけている鏡先生をここの入り口で見た時だった。どうすれば先生に近づけるのかと思って、毎日ここの前を通っていたら、偶然受付のアルバイトの張り紙を見つけたの。これは運命だって思ったんだ。受付係として雇ってくれた鏡先生の側にいるとあったかくて――ああ、やっぱり好きだなって思ったの」  あたたか。  たしかにそうだ。  幸は傷ついたオレをそっと抱きしめて、包み込んでくれる。まるで、おひさまみたいな、そんな感じ。 「だけど……鏡さんはわたしの気持ちには少しも気づいてくれない。まだ学生だからっていうのもあるんだろうけど……でも……」  そう言って、加奈子は唇を噛みしめると、自分の身体を見下ろした。 「さっきの女の人みたいに綺麗じゃないし、わたしの性格もどちらかっていえば臆病だし……あんなに大胆なことはできないし……やっぱり鏡先生にはそういう対象としては見られないのかな……」  ――いや、オレはさっきの人間よりも加奈子の方がずっと好きだぞ?  だって、あの人間は自分のことばっかりで相手のことを考えてなかった。

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