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第1話
「……まじかよ」
松岡悠大 、三十歳。未婚のオメガ。
母親からの『お見合いの席を用意したから』のメッセージに口角を引き攣らせた。
悠大はこれまで、両親からあまり愛情を貰った記憶が無い。
確かに高校までは一緒に暮らして学費も払ってもらっていたが、大学に入ってからは一人暮らしを始めた上に学費も奨学金を借りていたので現在は返済中。
それでも大学生の時に立ち上げた会社がみるみると成長しているため収入に困ってはおらず、今は自宅でパソコン一つで働いている。
早く孫の顔が見たいのか、世間体を気にしているのか。
ここ最近両親からの結婚の促進がひどかった。
それを無視をしていたところ、届いたメッセージに大きな溜息を吐く。
「えぇ、もう……日時も決まってるし……」
日時と会場場所をが書かれている。
その文章に温度は無くて、これは自分を思って用意してくれたものでは無いと簡単に推測できた。
悠大は頭を抱え、このお見合いで縁が結ばれるのかそうならないかは置いておき、とりあえず決まってしまった手前、お見合い相手には迷惑をかけないようにしなければならない。
「……億劫だなぁ」
ボソッと呟いた言葉を聞く人は誰もいなかった。
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