6 / 6

恋人が可愛くて今日も人生が楽しい 4

 市場では収穫物の販売許可もらうため、先に受付をすませる。  「手続きがあるのでリリは好きに見てきてください」  「俺も手伝っていいですか」  「もちろんです。ありがとう」  市場は賑やかだ。  リリが活動するのはいつも山奥や森の中なので、活気溢れる人の姿は新鮮だ。  マワーがもらってきた許可証を販売スペースに置き、商品を並べる。  マワーの商品は人気で、あっという間に売れてしまった。  「さ、帰りましょう」  「はい」  「どこか寄りたいところはありますか」  「あ、はい。研師のところへ」  「わかりました」    市場の外れに鍛冶屋がある。  道中でふたりは、フルーツをたっぷり使ったパンと豆を挽いた飲み物を買った。  洞窟の前に、木組みのこじんまりした建物があった。  木組みのほうへ入っていく。    「こんにちは」  「らっしゃい、用件は」  「はい、この鋏とナイフを研いで欲しくて」  「どれどれ」  研師の助手がリリの鋏とナイフを受け取り、師匠に渡す。  「使い込んでるね」  「商売道具だからね」  「でもモノは良い。研ぎがいがあるよ」  「ありがとう、頼むよ」  外の木陰に座り、さっき買ったパンを食べながら研ぎ終わるのを待つ。  「おいしい」  甘すぎない果実を使っていて、リリの口に合った。  「そうだね…あ、リリ」  「はい」  口の端に小さなパンくずが付いている。  マワーは、ちょいと摘んで口に入れた。  「あ…ありがとうございます…」  みるみるうちにリリの頬が赤く染まる。  かわいい。  「いいえ、いつでもしてあげますよ」  「いえ、き、気をつけます」  つれないリリに気を悪くした風でもなく、マワーもパンを千切って口に運ぶ。  空は雲ひとつない快晴だ。  明後日には、リリはまた旅に出てしまう。  「今度はどの辺りへ行く予定ですか」  「ラフィーネクロの辺りを行こうかと」  大陸の西の果てである。  「そうですか、なるべく早く帰って来てくださいね」  「はい」  見つめ合って、ふたりの顔が近づいて…。    「お客さん、できましたよ」  「あ、はい」  「ちっ」  「ま、マワーさん…」  「もう少しだったのに…、さあリリ続きはまた今度、行きましょう」  「はい」

ともだちにシェアしよう!