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第5話
温泉でのぼせた九曜は、意識を取り戻してベッドから身を起こした。起き上がると濡れた冷たい布巾が額から滑り落ちた。
九曜は辺りを見回した。ここは仙洞内にある兄弟子としての幻以の部屋だった。岩壁に囲まれた部屋に、書物がぎっしりと並べられた書架や、最低限の調度がそろえられている。
九曜が懐かしさに目を細めていると、視界の端に幻以が現れた。
「起きたか」
ベッドの端に腰かけて、半裸で読書していた幻以が本を閉じて脇のテーブルに置いた時、部屋のドアがノックされて、湯呑を載せた盆を手にした沙羅が現れた。
「お茶を煎じてまいりました」
沙羅は半裸の幻以と浴衣のはだけた九曜に動揺しつつ、盆をテーブルに置いてすぐに踵を返した。
九曜は沙羅にこの場を取り繕う言い訳をしようとしたが、沙羅があまりに足早だったので機会を逸してしまった。
九曜は情事の痕跡に満ちた自身の肌に目を落とし、はだけた浴衣の前を閉じて、うつむいた。
(師匠の孔雀の稚児を務めていた時でさえ、沙羅にこのような醜態は見せたことがないというのに……自分が嫌になる。夫婦とはいえ、節操がない)
「飲ませてやろうか?」
幻以は九曜に聞いた。幻以はもとから弟子のことを人間だと認識していないので、怪しい状況を見咎められようが平然としている。
「いい」
九曜はベッドの上で体を移動させてテーブルの上の湯呑を取り、口元に運んだ。
お茶の華やかな香りが九曜の鼻をくすぐる。
湯呑の中のお茶は幻以の里、蠍の里の者が愛飲しているお茶で、強壮作用や鎮痛作用がある。蠍の里で暮らすうちに、九曜はこのお茶が好きになっていた。
九曜が茶を口にした時、少々唇と口の端が染みた。
その理由を考えると、九曜の頬はたちまち紅く染まった。
「おいおい、どうした? またのぼせそうだな……あ」
九曜の口の端の赤味に気づいた幻以は懐から陶器の容器に入った消毒と治癒を早める軟膏を取り出して九曜に近寄った。
幻以は容器の蓋を開けて中の軟膏を指先ですくい取り、九曜の唇に塗る。
「気づかなかった。俺のために無理をさせてしまったな……」
幻以は言いながら、わずかに頬を染めた。
「もう他の場所には塗って……そうだ」
幻以の指先は九曜の浴衣の裾をまくり上げ、有無を言わさずに九曜に後ろを向かせると、尻を丸出しにさせた。
「あっ、なにを……っ」
「ここはどうだ?」
幻以はすかさず九曜の柔らかな尻を割り広げると、肉に埋もれていた菊花を確認した。
九曜のそこはつつましいながらも未だに緩み、紅く腫れていた。
幻以は軟膏を指先にすくい取り、九曜の色づいた花弁に軟膏を塗る。
「あ……っ」
思わず九曜のそこが収縮した時、幻以の灰色の瞳は好奇に満ちて輝いた。
幻以からそこに指を沈められ、九曜は体を震わせた。
「幻以、私は今、例の薬を服用している……だから、余計な刺激は……」
切実な声で九曜は訴えるが、幻以は聞く耳を持たない。
幻以の指先は九曜の内奥を擦り続ける。
「ひっ、ん……!」
ある時、体に電気が走り、九曜は背をのけぞらせた。
ややあって、九曜は膝立ちになって泣きながら腰をくねらせ、直前の情事で傷ついた唇の端から甘露を滴らせた。
幻以の指が離れると、九曜は普段の九曜からは想像できない、汗で黒髪をまとわりつかせた、ひどく淫靡な顔を幻以に向けた。
幻以は突き動かされたように袴子(ズボン)の帯を緩めていきり立った陽物を取り出した。
九曜は幻以の竿に熟れた菊花を擦りつけて、誘うように甘やかな囁き声で最愛の者の名を呼んだ。
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