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第2話
誰もいない部屋を見渡し、藤堂は部屋を間違えたかと思いもう一度外に出てネームを確認する。
「港湾厚生局麻薬取締部捜査課…あってるよな」
部屋に戻り、空いた机が1つあるのも確認する。ここは絶対に自分の席だと思うがなにせ誰もいないから確認のしようがない。
「……ん?あぁ、今日から配属だったな」
部屋でうなだれていると、扉が開き40過ぎ位の男性が部屋に入ってきては面倒くさそうに言い、重いため息をついた。
「課長、扉の前で止まるのは止めてもらってもいいですか」
「古賀、お前また朝から何処行ってたんだ…ったく」
藤堂は2人の会話を聞きながら、大きな瞳を丸くさせるだけだった。
そして、さも自分は空気の様に横をすり抜けられただただ棒立ちをする他ない。
「新人、なにぼぉっと突っ立てんだ。お前の席はここだ」
新人と呼ばれ、藤堂は弾かれたように返事をし、後ろを振り返る。
「はい!」
その声に、驚いたのか古賀と呼ばれた男性が耳を塞ぐ。
「でかい声だすな。…頭に響くだろ」
「えーー…改めて紹介しないとな。ほれ。自分の名前くらい自分で言えんだろ」
あれから30分くらい経ち、席に全員が着いたのを確認すると課長である赤羽(あかばね)が藤堂を前に呼び、自己紹介をさせる。
「藤堂成美です。本日よりこの港湾厚生局麻薬取締部捜査課に配属になりました。まだ未熟で不慣れな点もございますがよろしくお願い致します!」
しっかりと、第一印象を大事に。その言葉を唱えながら藤堂は自己紹介を終えると、まばらな拍手は起こり、赤羽の方を皆が見た。
「とりあえず、頑張れよ。…って事で朝礼終わりだ。お前等とっとと仕事にかかれ」
赤羽はそれだけ言うと自分の席にドカリと音を立てて座り、他のメンバーたちもそれぞれの仕事に取り掛かった。
(え…終わり!?)
藤堂は鳩が豆鉄砲を食ったような顔でその場に立ち尽くす。
「んだよ。変な顔しやがって」
赤羽が眉を寄せ藤堂を見ると藤堂は彼の耳元でこう言った。
「み、皆さんの自己紹介とかは…」
「んな、合コンじゃねぇんだ。あるわけねぇだろ」
「…あ、はい。」
藤堂はその言葉を聞いてこう思う
(俺、ここでちゃんとやっていけるのだろうか…)
と……
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