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1.
体がひどく、重い。
億劫そうに瞼を開けた葵人は、眉根を寄せた。
見慣れてしまった囲まれた木組みの中、どうしてこんなにもひどく疲れているのか、覚め切ってない頭で考えていた。
何度目かの「兄さん」と呼んでしまったことで、兄の怒りに触れてしまい、"お仕置き"を気が遠くなるまでさせられたのだ。
そして、ようやく解放された直後のまどろみまでは憶えているが、その後のことは一切憶えてない。
その出来事が昨日のことだと思えるかもしれないが、断言できないとも思った。
考えに耽っている中、無意識に足を動かそうと思ったようだ。だが、思うように動かせないことに気づく。
それを確かめようと布団を剥いだ。
「⋯⋯え?」
思わず声が漏れた。
足をぴったりと閉じられ、太ももから付け根まで菱形縛りのように縛られていた。
しかも全裸であった状態に、さらに混乱を極める。
このような姿を憶えてないだなんて。
言い知れぬ不安が襲ったが、ふとあることが浮かんだ。
全身の倦怠感、特に後孔が悲鳴を上げているのは、途方もなく性行為を強要されている可能性もあるが、他の可能性もあった。
それは、恐らく⋯⋯──。
突然、扉が開かれる音が聞こえてきたことにより、思考が遮られた。
反射的に、顔を向けた。
「おはよう、葵。どう? 調子は」
目が合った途端、目尻を下げて声を掛けてきた。
恐ろしくも愛さないといけない相手が、葵人の食事であるお膳を持って、そばに座った。
徐々に感じていた心拍数が急に上がる。
「葵、布団どうしたの? 暑かったの⋯⋯?」
「⋯⋯ぁ、ううん⋯⋯。足が動かないから、どうしてだろうと思って、見てみたの⋯⋯」
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