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碧人が何に対して癪に障るのか分からない。 顔色を伺うように答えると、「そう」と短い言葉が返ってきた。 心臓が跳ねた。 何かいけないことでも言っただろうか。 心なしか落ち着かないでいる葵人に気づいているのかいないのか、続けてこう言った。 「あの時の葵は憶えてないみたいだから状況を言っておくけど、月一の発情期が来たんだ。いつみたいに積極的に求めてくるものだから、それに応えるのが大変だったよ」 「けど、可愛い反応をしてくれるから、ついつい激しくしてしまうのだけど」と愛おしげに頭を撫でてきた。 その言葉通りに、この足と後ろ手に縛った縄を天井に繋ぎ、吊り下げた状態で行為に至ったのだという。 何度もねだってきた葵人を意識が失うまで性行為をし、その格好のまま寝かせたのはつい先ほどのだとということも。 やはり、発情期だったのかと確信してしまいながらも、憶えてない行為の痕を見せつけられるのは恥ずかしい。 「⋯⋯それにしても。両足ぴったりに縛っているこの姿がまるで人魚みたい」 へそ辺りを指でなぞる。 散々発散されたはずの身体が疼き始めた。 「そして、陸に引き上げられた憐れな人魚が為す術なく、人間の欲の捌け口にされてね⋯⋯」 「⋯⋯ぁ⋯⋯っ」 太ももを縛り付けた縄になぞっているだけなのに、射精()し切ったはずの自身のがヒクヒクと反応を示していた。 まるで、その手でもいいから腫れ上がるぐらい痛めつけて欲しいとねだっているように。

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