3 / 47

3.

「発情期の時の葵はこの縛り方をいたく気に入ってくれて、解かないで欲しいと可愛くおねだりしてきたけど、そろそろ解いて、朝食にしないとね」 そう言いながら、解いていくその指を触れてくれないんだと内心残念がっていると、手が止まった。 「何、その顔は。今の葵も気に入ってくれているの⋯⋯?」 一瞬、怒られるのかと思ったものだから、拍子抜けをした。 顔に出るほどだったのかと自分に驚きつつも、その指が身体に触れたからというのが主な理由だったが、言われてみれば縄酔いもあったかもしれない。素直に頷くと、ぴくりとも動かなかった表情に笑みを含ませた。 「そう⋯⋯。いつもと違う縛り方をして良かったと思えるよ。また今度してあげるね」 いたく上機嫌になった碧人が、今度は名残惜しげに縄を解いていった。 全て解き終わった足を改めて見ると、縄の痕がはっきりとあって、それさえも疼くきっかけになってしまう。 「白い肌に赤く色づいたね。頬みたいに⋯⋯」 「あ⋯⋯ん⋯⋯」 「ふふ、可愛い」 指先で頬をひと撫でした碧人に着替えさせてもらい、当たり前のように彼の膝上に座らせられ、朝食を摂った後、そのまま体を揺らしながら頭を撫でてくる。 いつもならば、空になったお膳を持って出て行くというのに、そのいつもとは違う兄の調子に狂わせられながらも、その心地よい揺れと好きな撫でに加えて、お腹が満たされたのもあり、瞼が重くなってきた。 ここで勝手に寝てしまったら、兄に怒られるだろうか。けれども、眠気に抗うことができない。 今は寝かせて欲しい。 ふっと瞼を閉じ、眠りの世界へと誘われようとした、その時。

ともだちにシェアしよう!