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3.
「発情期の時の葵はこの縛り方をいたく気に入ってくれて、解かないで欲しいと可愛くおねだりしてきたけど、そろそろ解いて、朝食にしないとね」
そう言いながら、解いていくその指を触れてくれないんだと内心残念がっていると、手が止まった。
「何、その顔は。今の葵も気に入ってくれているの⋯⋯?」
一瞬、怒られるのかと思ったものだから、拍子抜けをした。
顔に出るほどだったのかと自分に驚きつつも、その指が身体に触れたからというのが主な理由だったが、言われてみれば縄酔いもあったかもしれない。素直に頷くと、ぴくりとも動かなかった表情に笑みを含ませた。
「そう⋯⋯。いつもと違う縛り方をして良かったと思えるよ。また今度してあげるね」
いたく上機嫌になった碧人が、今度は名残惜しげに縄を解いていった。
全て解き終わった足を改めて見ると、縄の痕がはっきりとあって、それさえも疼くきっかけになってしまう。
「白い肌に赤く色づいたね。頬みたいに⋯⋯」
「あ⋯⋯ん⋯⋯」
「ふふ、可愛い」
指先で頬をひと撫でした碧人に着替えさせてもらい、当たり前のように彼の膝上に座らせられ、朝食を摂った後、そのまま体を揺らしながら頭を撫でてくる。
いつもならば、空になったお膳を持って出て行くというのに、そのいつもとは違う兄の調子に狂わせられながらも、その心地よい揺れと好きな撫でに加えて、お腹が満たされたのもあり、瞼が重くなってきた。
ここで勝手に寝てしまったら、兄に怒られるだろうか。けれども、眠気に抗うことができない。
今は寝かせて欲しい。
ふっと瞼を閉じ、眠りの世界へと誘われようとした、その時。
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