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第1話

写真は何も言わない。思い出をそのまま昔のまま留めてくれる。斑鳩恭平。25歳は笑顔を貼り付け父と供にマスコミの前に出ていた。 「流石、除霊一家と名高い斑鳩家の息子さんですね。  お父さんも鼻が高いのではありませんか」 「ええ。自慢の息子で。このような賞をいただき嬉しく思っております」 父の心にもない言葉に気分が悪くなっていた。父がもらった賞ではない。恭平が受賞したのになんて気持ちは微塵もない。マスコミの前に出るなんてやりたくなかった。恭平の体には服で見えない場所に複数の痣や打撲の痕があった。母が死に再婚してから父は変わった。継母と一緒にぼくを暴力でしばりつけた。昨日も父が勝手にぼくの写真を賞金の出る賞に応募し最優秀賞を受賞した。心霊写真やオカルト写真の大賞を決める大会。心霊写真家としてオカルト雑誌などに細々と掲載されればそれで満足だったのに。 母さん。ぼくに何が言いたいの。 死んだ母が見える。じっと見ている。ぼくに何も言わない。ぼくには母だけじゃない他の幽霊も見えている。誰にも言ったことはないけれど。言う友もいないから。 「息子さんはどうですか?」 「えっ、ぼっぼくは、その。あの」 「申し訳ない。息子は緊張しているようでして」 会見は父の嘘の自慢話で終わった。家に帰ると父親の暴力が始まった。ぼくの2階の部屋で。会見が終わったから顔も遠慮なく殴られた。突き飛ばされて、咄嗟に首にかけていたカメラを庇う。母にもらった唯一の形見。 「まだそんな物を大事に使っているのか」 無情にもそのカメラは父親に奪われ、窓から捨てられた。捨てられたときどうしてあんな行動をとれたのか今でも分からない。あの時はすべてがどうでも良くなっていた。窓際にいた父親を押しのけ飛び降りた。夢中でカメラに手を伸ばし、その後意識がなくなった。

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