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第11話
side時雨
「すいやせん。白虎様とあの青年が消えました」
十六夜と時雨が、当主が執務用に使う部屋で書類整理をしていた所、部下の1人が駆け込んできた。
「それが狙いか。聖夜。分かってるな。
白虎様の居場所は昔の屋敷だ」
「分かった」
「連れ戻したら俺の所に連れて来い」
契約主である十六夜には白虎の居場所はすぐに分かる。2人が一緒にいるのは考え難い。何故なら白虎様は居場所を知られているのが、分かっているからだ。
「命令は命令ですから」
わたしと凪の関係は自殺を止められた側と、止めた側。止めたのは凪で自殺しようとしたのはわたしだ。暗殺者として幼少期から生きてきて、心がぽっきり折れた時、凪と出会った。初めて殺しを止められた驚きともう一度自らの頸動脈を切る勇気が持てなかった。初めて自分は生きたかったのだと気付かされた。生きたいと思うことと、やりたい事があるのは別。生きて何をしたい。まったく分からなかった。死ね無いだけ。凪に仕事を手伝え。言われた時にやる事もない。自分の暗殺を止められるのは凪だけ。本気で死にたい。思う時が来るまでここで働くことを決めた。
白虎さまといる青年を見て、凪ですら上に乗ることは滅多に許してもらえないのに、白虎様の背中に乗った青年はぼろぼろの傷だらけ。わたしに怯えていた。
まだ死ねない。
青年の顔も表情も長過ぎる前髪でよく見えなかったけれど、覚悟を感じた。わたしに興味がない。わたしがあなたを殺そうとしているのに。わたしには愉快で興味深く見えた。白虎様のために動いている。一体何をするのか興味が湧いた、
「思い出が強い場所に行ってほしい」
白虎様に願い。2階のよく先代当主が、読書をしていた部屋。中にはいまだに立派なアンティークの揺り椅子と埃を被った本が床を埋め尽くしていた。青年は揺り椅子に向かって言った。
「こんにちは」
なぜ青年が挨拶をしたのか、わたしには理解出来なかった。青年が挨拶をした瞬間揺り椅子にが独りでに揺れた。
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