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第17話
凛から欲しかった言葉は、兄ちゃんの冴に言われて、俺は結構不思議な気分だった。
ブルーロックに戻ってきて直ぐにトレーニングを言い渡され、俺達はまた身体を虐めぬく生活に戻る。
フィジカルルームを覗くと、凛がまたヨガでクールダウンをしていた。
やっぱり俺は結局は凛が一番好きなんだと、冴に告白されて気が付いた。
でも凛は俺が欲しい言葉は言ってくれないだろう。
それはきっと俺だからこそ思わないことなんだろうと思った。
『俺はお前を殺したいほど憎い』
俺はどうかしてる。
凛に『殺す』と言われると、とても嬉しい。
憎悪でも、凛が他の人とは違う俺に特別な感情を抱いているということが単純に嬉しいんだと思う。
俺がフィジカルルームに入っても凛は俺に気付いていない様子だった。
そして表情がとても強張っていた。
「顔が怖いぞ、凛」
俺が声をかけると、ようやく気付いた様子で顔を上げた。
「……五月蝿い」
やっぱり凛は俺にそっけない、というよりも当たりが強い。
その眼力はいつでも俺を獲物のように睨み、一瞬怯んでしまう。
それでも俺は負けじと言い返す。
「いいんだよ、……これは独り言だから聞き流せって」
結局のところ凛は俺を無視してクールダウンをするのだろうから、これは独り言に過ぎないんだと思ったからそう言った。
「今日ブルーロックに戻る前に冴に会ったよ。今度デートしようって」
冴はデートとは言わなかったけど、告白された以上そうなんだろうと俺は勝手に解釈した。
「糸師兄弟って強引だよな」
もしこれで凛が冴にヤキモチをやいてくれたら、そういう淡い期待をしてる俺はどうかしてた。
もし少しでも嫌だと思ってくれたら……。
「お前に隙があるからだろ」
俺の腕を掴んできた凛の手がとても痛かった。
お前はどっちにヤキモチをやいてくれるのか、とても気になったので俺は掴んだ手をそのままにした。
すると凛はとても寂しそうな表情になっていた。
鋭い眼力は変わらないのに、とても儚げでいてとても悔しそうなものだった。
これは凛の淋しいという表情か。
凛はやはり兄ちゃんを取られるのが嫌なんだろう。
なら俺は冴にも近付かないほうがいいのかもしれない。
俺はこんなに凛が好きなのに、俺の気持ちは一方通行で辛いけど、ブルーロックにいるときの凛に一番近いのは俺なんだ。
それだけで俺はいいんだ。
感情を噛み殺して、俺は苦笑いした。
「なんて顔してるんだよ、凛。……ごめん、お前の大切な兄ちゃんは盗るつもりはないから」
こうなったらきっと感情は鎮まらないだろう、そう感じた俺は、誘った。
「ヤるなら場所変えよう、凛。他の奴には見られたくない」
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