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第28話

「もしもし、冴?」 『やっと時間ができた』 冴の声を一言聞いた途端、何故か俺は妙に落ち着きを感じていた。 同じ兄弟でも凛の声を聞くと昂ぶるのに、冴の声を聞くと落ち着くなんて不思議だった。 『少し話をしないか』 「いいよ、なに?」 『世一は愚弟が好きなんだろうと俺は気付いている。だから弱みに漬け込んで世一に告白をした。俺と凛は似ているだろう』 冴の言葉はまるで懺悔をしているような、そんな雰囲気を感じた。 「そうだよ、俺は凛が好きだ」 だから俺も冴の思いに答えることはできないんだ。 『だが凛と同じように俺も世一を好きな気持ちには変わりはない。それを知ってほしかった』 冴と凛は似ていても、違う。 冴は兄体質だから年下のことを気遣うし、凛は弟体質で我儘だし、兄弟はきっとこういう関係なんだろうと感じた。 「冴は凛のこと嫌いじゃないんだな」 『愚かなままの凛は嫌いだがな』 「いいな、兄弟って。俺は一人っ子だから羨ましいよ」 『兄弟だから分かることもある。凛は俺の顔色を覗いながら慕ってきた。だから今の俺が変わったと思い込んでる。アイツの中の俺が一気に崩れていったんだろう』 まるで凛は好きなものに反発しているかのように話す冴は溜息を吐いた。 『……サッカーに恋愛は必要じゃない。恋愛する時間があるならトレーニングに費やしたほうが良いと思っていたし、それは凛にも言ったこともある。、それも邪魔をして自分の気持ちも言えてないんじゃないかとも思った。アイツの思っていることは全てが逆だ』 それはどういうことだろうか。 「イマイチ冴の言ってることが理解できないんだけど」 『世一も愚かだが、素直に言えることはいいことだ。弟は世一が好きだと思っている、だが愚かすぎて思いは伝えられて居ないだろう』 俺は呆然と聞いていたから、その衝撃の言葉に俺は対処できずに呟いた。 「それ会った朝に聞きたかったかも」 『何故だ?』 「俺は凛を諦めたんだ」

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