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第3話

「えっ!? 樹、何して……」 「!」  佑都の驚いた顔を見て、途端に我にかえる。  お、俺、ここで何てことを……。 「まさか樹、オメガだったのか!?」 「なわけないだろ! 佑都だってさっき帰り道で言ったじゃないか。俺はベータだってわかってるって」  あの時、事実なのにちょっと傷ついている俺がいた。俺はどうしたって佑都と番えないベータなんだって思うと切なくて。  今も言いながら唇が震えている。 「でもこれ、まるでオメガの巣作り……それに、今、俺のことが好きだって聞こえたけど、まさかお前」  佑都の顔が強張る。 「そうだよ! 知らなかっただろ。俺はずっと佑都をそういう目で見てた! 好きなんだよ。佑都が好きなんだ!」  もう隠していられなくて、佑都の言葉をさえぎり、両腕にすがりついてカミングアウトをする。  ジーンズのファスナーの下が張りつめているけど、見られたっていい。どうせもう、嫌われて終わりだ。 「お前、勃って……!」  祐都が俺を振り払う。肩をいからせてふぅふぅと荒い息を吐き、目を血走らせて、まるで獣のようだ。  そうだよな。気持ち悪いよな。幼馴染の服にうもれて、欲情してる俺なんか。  絶望感に襲われて立ち上がる。  すると。 「ふざけてんじゃ、ないよな?」  祐都に腕を掴まれ、ベッドに背中を押し付けられた。 「は? こんなこと、ふざけてやるかよ。て、いうか。祐都……?」  俺の脚を割って下半身を重ねている祐都のそこも、俺と同じに……いや、俺以上の質量と硬さを持って、俺のものに当たっている。 「え? これ、え……?」  今まで以上にうるさくなる鼓動を感じながら見上げると、舌なめずりをする祐都の顔。 「……樹はオメガばかり見てるから、オメガが好きなんだとばかり思ってたよ」  長い指が俺の頬に触れ、首筋を伝う。  腰をゆる、と動かして、互いのものが擦り合うようにされた。 「んっ……ゆう、と。違う……俺は、お前が好きだから、お前と番えるオメガが羨ましくて……ぁ、んっ」  唇が耳たぶに触れる。ぞくぞくとしたものが背中を駆け上がった。 「それ、ほんと?」 「ほんとだよ。でもお前は? お前こそオメガが好きなんじゃないのか?」  耳の中に直接声を入れられて、熱くなった体をよじれるけれど、佑都がこんなことをする意図がわからなくて、聞く。  からかっているだけならやめてくれよ。俺の心も体ももう限界だ。 「ばーぁか。樹がいっつもオメガを見てるから、俺こそオメガならお前に好きになってもらえたのにな、ってオメガを憎らしく見てたんだよ」 「まじかよ……」 「まじだよ」  獲物を捕らえた獣のようだった祐都の目が、優しく光る。  ちょっと泣いてるみたいにも見えた。  でも俺も同じで。  知らないうちに目を潤ませていたみたいで、祐都が目の端を拭ってくれた。

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