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第26話※ タガが外れて〈side大城〉

「セッ!? ……い、いや、ダメだって! いきなりこんなモン挿れるわけにはいかないし」 「でも、大城さんのこんなだし、それに僕だって……!」  篠崎は顔を上げ、俺の首に腕を回して自らの方へと引き寄せる。なんということだ、篠崎みずから積極的なキスを俺に——……!? 「ん、ん……篠崎……っ」 「誘っておいて、無理だったらすみません。でも僕も、もっと大城さんのこと、感じてみたい……!」 「えっ……」 「……挿れてください、お願いします」  切なげに眉を寄せ、篠崎は俺をまっすぐに見上げながらそう言った。  ……わかる、頭ではわかっている。ここは紳士的に篠崎を宥めて無理をさせないのが正解だ。  だけど、だけどもだ。こんなにも熱心に『挿れてください』とお願いされたのに断ってしまうのは、篠崎に対して失礼ではないか? せっかくの勇気ある誘いを無碍にするのは、いくらなんでもひとでなしのではないか——……!? 「……いいんだな、本当に」 「っ、はい!」 「でも……やってみて痛かったらすぐ言うんだぞ、いいな」 「はい!」  俺がその気になったことを察したらしい篠崎の表情が、ほっとしたように緩んでゆく。ちょっと躊躇いつつも、俺はかちゃかちゃとベルトを抜いて、床に落とした。  そして篠崎に覆い被さってキスをしながら、みちみちに張り詰めたスラックスの前を寛げていく。ガチガチに張り詰めたペニスを、ようやく狭いところから解放してやった。  ——う……自分でも恥ずかしいぐらいガン勃ちしてるな……。  俺の分身は、下腹にくっつく勢いで反り返っていた。思春期まっただ中の高校時代でもここまで元気じゃなかっただろと言いたくなるほどだ。    こんなものを見たら、篠崎のやる気が削がれてしまうに違いない。すっかり怯えて、「こんなものは入るわけありません」と引かれてしまい、交際関係の見直しまでされてしまうかもしれない。恐る恐る篠崎の表情を窺うが……意外なことに、俺のそれを見る篠崎の眼差しは、どことなくうっとりしているような気がする。 「……うぁ……ほんとに、おっきぃ……」 「ごめん……無駄にデカくて。怖くなった?」 「い、いえ、平気です・こんなことを言ったらあれなんですけど、……あの、ディルド(小声)を毎日見て慣れたのか、意外と、大丈夫です」 「な…………なるほど。あのディルドで……」  なんとなくモヤっとした気分で、俺は床に転がっているピンク色のディルドを睨んだ。  気のせいだろうか、ピンク色の卑猥なそれが、どことなく勝ち誇った顔をしているように見えてなんか腹立つ。  ——いや、いいんだ。いいんだよ。お前のおかげで篠崎が俺のコレに必要以上の恐怖心を抱かずに済んだんだからな……!  ディルドから視線を外し、俺は手を伸ばしてコンドームの箱を手に取った。  息を呑む篠崎の視線を感じながらゴムを嵌め、ローションを手に取って温めて……そして、再び篠崎のほうへと身を屈めた。  そして、さっきまで俺の指を受け入れていた小さな窄まりに、先端をぴたりとあてがう。少し赤みを帯びたそこは、ローションのとろみでいやらしく艶めいていた。 「っ……ぁ」 「ゆっくりするけど、痛かったら言うんだぞ」 「は、はい……」  無意識に閉じようとしてしまうらしい篠崎の膝をぐいと開かせ、細い腰を引き寄せる。そして、ぬるとろにほぐれた柔らかそうなそこに、俺はぐっと、先端を押し進めた。 「あっ……うあ」  まず感じたのは、押し返すような反発だ。無理もない、指とは圧倒的に質量が違うのだから、身体が拒否するのは仕方ないことだ。  だけど、ここまできたら挿れたい。篠崎を抱いてしまいたい。俺のこれで篠崎を満たしたいし、俺自身も満たされたい。たくさん気持ちよくなって欲しいし、気持ちよくなりたい。  篠崎が欲しい。全部欲しい——……純粋に篠崎を幸せにしたいという思いと、これまでずっと堪え続けてきた欲望まみれの感情の全てが腹の奥でぐるぐると混ざり合い、俺は堪えきれず篠崎にキスをした。 「……篠崎、好きだ」 「はぁっ……は……おおき、さん……もっと、きてください……っ」 「……いいんだな、ほんとに」 「いい、いいです……! あなたがほしいんです、僕っ……」  今、まさに自分が考えていたことを篠崎が口にするものだから、俺は心底面食らった。そして同時に、俺ばかりが篠崎を欲しているのではなく、同じ熱量で篠崎が俺を欲してくれているのだということが伝わってきて、胸が震えた。  手の中にすっぽりと収まる篠崎の腰をさらに強く引き寄せ、腰をぐっと押し付ける。すると、反発するように俺を弾き返そうとしていた窄まりに、くぽっと先端を飲み込まれ——……俺は思わず、「あっ……」と呻いた。 「んっ! はぁ、っ……おっきぃ……っ」 「……う、あ……すご……。篠崎のナカ……」  キツさはあるが、篠崎はうまく呼吸で圧迫感を逃がしているようで、食いちぎられるような痛みはない。むしろ、ひくつく内壁の動きに急かされて、強引に奥まで突き上げたくなってしまう。  きゅう、きゅうっとナカがうごめくたび、まるで俺の鈴口にキスをされているように感じて腰が震える。俺は身体を起こし、篠崎の脚を大きく開かせながら、ぐぐ……と腰を突き上げてみた。 「あ! ァっ……! はぁ……はっ、」 「……苦しい?」 「う、ううん、……っ大丈夫、です……っ」 「っ……はぁ……ごめん、もうちょっと、がまんして」  頬をりんごのように紅潮させた篠崎は、硬く目を閉じて初めての苦しみに耐えているようにも見える。そろそろここで止まるべきだとなけなしの理性が囁くけれど、篠崎とつながった悦びに震える俺の肉体は、すでに制御を失っていた。  小刻みに腰を揺らしながら、ゆっくりと奥へ奥へと暴いていく。怪我をしてしまうから、いきなり最奥を突き上げることはしない。あくまでもゆっくりと、篠崎のナカを俺の形に馴染ませるように、奥へ奥へとペニスを挿入していくうち、ようやく篠崎の尻たぶが、俺の股ぐらに触れた。 「はぁ……全部、入ったよ。……すごいな、篠崎。上手だ」 「ん、んっ……ほんと……?」 「ほんと。はぁ……やばい、俺、もうこれだけでイキそう」 「えっ……」  俺のその言葉に、篠崎が驚いたように目を瞬いた。「ん?」と首を傾げると、篠崎はちょっと恥ずかしげに目を伏せた。 「……よかった、嬉しいです。僕で気持ちよくなってもらえて……」 「気持ちいいよ、……正直、今、めちゃくちゃ動きたいけど、もうちょっと俺の形に馴染ませないと」  深く挿入したまま篠崎の脚の間に身を沈め、軽く触れるだけのキスをする。すると篠崎は、ぴくっと腰を震わせて、また少し呼吸を乱した。  そのたびにきゅうきゅうっと内壁がうごめくものだから、気持ちよくてたまらない。油断すると変な声が漏れそうになる。  ——ああああ……っ……も、やばい、搾り取られるってこんなかんじか……!? てか、まだ挿れただけだから、挿れただけでイくわけにいかないんだぞ……!!!  こう見えて俺は絶倫なほうだ。これまでのセフレたちは皆、俺のコレでたいてい大満足していたはずだ。堪えろ俺……篠崎の前であっけなく果てるのだけは絶対にいやだ……! 「は、ぅ……っ」 「……ん? どした?」 「お、おおきさんが……しゃべるとっ……おなかのイイとこ、擦れて……」 「えっ? そうなのか?」 「……なか、おおきさんのでいっぱいだから、っ……ちょっとでもうごかれると、僕っ……」 「ああ……はぁ……もう、おまえ」  まだ羞恥心が残っているのか、篠崎は両手を拳にして目元を隠しながら、途切れ途切れにそう言った。あまりにも可愛いことを言ってくれるものだから、是が非でも篠崎の顔を見たくなってしまう。  俺は篠崎の手首を取って、シーツに縫い止め、あえてじっと篠崎の涙目を見つめた。  そしてゆっくりと腰を引き……ゆるゆると、ピストンする。 「ぁ、あっ……! うぁ、あっ……」 「……っ……ああ……すごい、イイ」 「ほんと、ですか……っ」 「本当だよ。……篠崎のナカ、すげぇ気持ちいい」 「ぁ……」  俺のその言葉に、篠崎が目を輝かせる。その健気さがまたいっそう可愛くて、愛おしくて、たまらない気持ちになってきた。  感激すると、身体の感度まで上がってしまうらしい。たまらず腰の動きが少しだけ速くなると、篠崎の表情から見る間に理性が薄れてゆく。だが、まだ快楽にとろけ切ってはいないようで、俺を見上げながらいやいやをするようにかぶりを振った。 「あ、あ……っあの、んっ、顔、みないでっ……」 「……だめ、全部見たいって言っただろ?」 「だって、ァっ、ん! ん、んっ……!」  俺に手首を押さえられているせいで、顔を隠せないと言いたいのだろう。がくがくとゆさぶられながらも、顔を横に倒して唇を引き結び、少しでも声を殺そうとしている篠崎の耳元に、俺は唇を寄せた。 「声も抑えないで。……聞かせてよ、篠崎」 「ん、んっ……! はずかし……ですっ……そんな、じっと見られたら、っ……」 「こっち向いて、顔見せて」 「あっ……はぁ……っ」  ぐっと顎を捉えて上を向かせると、間近で目線が重なった。その拍子につう……とまなじりから流れ落ちる一筋の涙を、俺は唇で受け止める。 「……可愛い。大好きだよ、篠崎」 「ん、っ……はぁっ……おおきさ、ん……っ」 「亮一って、呼んで」 「りょ、りょういちさ……っ、ん、あ、そんな……!」  篠崎を穿ちながらつんと尖った乳首に指を這わせて転がすと、さらにナカがきゅぅぅんとキツく締まった。俺が腰を振るたび、とろとろに濡れそぼった結合部から淫らな音が溢れている。 「ぁ、あっ……ちくび、っ……や、やだ……っ」 「一緒にされるの好きなんだ? ほら……また締めつけて」 「そ、そういうこと、言わないでくださ……っ、ぁん、あ」  どうやら実況されるのは嫌らしい。だが、俺が何か囁くたびに篠崎の中は嬉しそうに蠕動して、まるで射精を促すように淫らにうごめく。だんだん堪えがきかなくなってきた俺は、再び上体を起こして髪をかきあげると、篠崎の腰を掴んで少し荒々しく腰をぶつけた。 「あ! ひゃっ……ん、っ……ァ、ん!」 「はぁ……可愛い。可愛いすぎる。……気持ちいい?」 「ん、っうん……っ、きもちいい、きもちい……です……っ」 「篠崎の、すごい勃ってる。こっちも触ってみようか」 「だ、だめ……だめですって……!!」  構わず俺はそれを手の中に包んだ。糸を引いている先走りを塗り広げるように軽く扱いただけで、篠崎は腰を震わせて身を捩り、「あ、だめ、あっ……イく、イくっ……!!」と蜜を滴らせる。  その拍子に内壁もきつく締まって、俺はうっかりそのまま達してしまいそうになった。……だが、奥歯を食いしばってそれに耐え、余韻に震えている篠崎の下腹をそっと撫でる。  そして性懲りも無く、またゆっくりとピストンを始めた。 「あ、やっ……待っ……んっ、あ」 「篠崎のエロい顔、ほんと可愛い。……はぁ……マジで可愛いな」 「ん、んっ……はずかし……っ」 「恥ずかしくなんかない。エロいし、可愛いし、すごく綺麗だ」 「っ……ん、そんな」 「ほんと……夢みたいだな。篠崎が俺を好きになってくれて、しかもこんなふうに抱けるなんて、俺……すごく幸せだよ」  思わず溢れ出した俺の本音に、篠崎がトロンととろけた目でこっちを見上げた。  そして、とろとろの表情のままにっこりと笑い、「へへ……ぼくもです」と言う。  それがあまりにも可愛くて、可愛くて——……俺は堪えきれず、身を乗り出して篠崎を穿った。 「あん! んぁ、はげし……っ、ぁんっ……!」 「……はぁ、はっ……どうしよ、俺……がまんできなくなって、会社でお前のこと、抱きたくなりそ……っ」 「だめ、だめですよ……っ、そんなの、ばれちゃう……」 「マジで自信ない。資料室とか、トイレとか……俺、篠崎のこと襲いそうで……っ」 「だめ、だめですよぉ! ……ぁっ……りょういちさ、……ぼく、またイきそ……っ」  篠崎の腰が浮く勢いで腰を掴み、パンパンパン! と肌がぶつかる音が響くほどに激しく打ちつけるうち、篠崎がまた泣きそうな声でそう訴えた。 「……はぁ、ァ……イキそ、俺も……」 「キス、してください……りょういち、さん……キスしたい……」  伸びてきた両腕に引き寄せられて、舌を深く絡ませ合う。最奥を突き上げながらのディープキスがあまりにも気持ちよくて、エロくて——……俺はたまらず、根元まで篠崎に埋めた状態で吐精した。 「ん、んんんーーーーっ……っ」  キスの隙間でくぐもった甘い悲鳴を漏らしながら、篠崎の腰がびくびくと細かに跳ねる。もはやペニスからは何も溢れていないけれど、俺の精液を残らず搾り取ろうとするかのような淫靡な締めつけに、俺はしばらく陶然と酔いしれた。  クラクラするほど気持ちの良い射精だった。頭の中がじーんと震えるような感覚に余韻を感じつつ、篠崎をぎゅと抱きしめる。 「亮一さん……あの、なんで、まだ硬いんですか……?」 「ごめん、ぜんぜん萎えない……。篠崎とセックスしてるの嬉しすぎて、止まんないみたいだ」 「へっ……そ、そんなことがあるんですか……?」  だが、一旦は篠崎を解放しなくては。  ずるんと、ペニスを抜き去ると、篠崎がくったりとベッドに脱力した。自分でも驚くほどにたっぷりと白濁を溜め込んだゴムを外してみるも、やはりまだ俺のそれは隆々と反り返っている。実際まだまだ物足りないし、できることなら朝まで篠崎とセックスしたい。だが、初めての身体に無理を強いるのは……。 「すごい、……まだ、こんなにおっきいなんて」 「あっ……い、いや、ごめん。恥ずかしいな、こんな」 「恥ずかしくなんてないです。……あの、もう一回、しませんか?」 「えっ!? いや、でも」  でも、と言いつつ……色っぽい目つきで俺を見上げる篠崎の顔を見てしまうと、戻りかけていた理性がパリンと音を立てて砕け散った。  俺は横たわっていた篠崎をうつ伏せに寝かせると、きゅっと盛り上がった小さな尻たぶにローションを直接垂らす。「あっ……つめたっ……」とため息をつく篠崎の背後に跨って……まだ柔らかいままの窄まりに、ゆっくりと腰を沈めてゆく。 「ぁ、うぁっ……なにこれ、んっ……ぁ、あっ」 「寝バックなら、篠崎もちょっとは楽かなと……思って、はぁ……っ」 「ぁっ……りょういちさっ……いきなり、ふかぃっ……ん、ぁ、あ」  篠崎をベッドに押し付けるような格好で、俺はガツガツと腰を使った。  そのあとも、普通のバックになり、対面座位になり、シャワーを浴びながら立ちバックをして、湯上がりに床で篠崎を抱いて——……。  夜がとっぷり暮れてもなお、俺は篠崎を離すことができなかった。

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