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第1話

 バルドゥインことバルドは、オークの落ちこぼれとして育った。  今や二メートル半もある巨体であり、破壊の限りを尽くそうと思えばできるほどには力強いが、なにせ内面が……決定的に同種族とは違ったのだ。  子供の頃から、父に動物の狩りを教え込まれても、上達しない。そもそもやる気がしないからだ。  内気で小心者のバルドは、そんなことをするよりも、野生動物を愛でては懐いてもらえることや、母が集めてくれた花で花冠を作ったりする方が好きだった。  なのに、父はうっかりオークの巣に足を踏み入れてしまった人間の冒険者達を踏み潰したり、片手で掴んで圧殺したり、生きたまま噛み砕いて飲み込んだり。  命乞いと悲鳴が飛び交う中、理不尽に生命を奪う行為に吐き気さえ込み上げて、何度も野蛮なことはやめるよう懇願した。  だが父は「オークである以上、これがお前の生き方だ」と言っては何も聞いてくれなかった。  そんな光景を見ていたからか、仲間のオークにも弱いと罵倒され、殴られ蹴られ、石を投げられ。いじめの標的にされた。  母の膝で毎日のように泣いても、彼女だけは否定せず優しかったけれど、薬草を調達して森から帰る最中に、不幸にも人間族の騎士に出くわして殺されてしまった。  その知らせを受けた父は激昂し、仲間達を引き連れて騎士の元へ向かったが……その人間族は鬼神のごとき強さで、全員ものの見事に返り討ち。  その血生臭い光景を、幼いバルドはたった独り震え涙しながら、しかし声は押し殺して隠れ見ていた。  みんなが次々と血の海の中に溺れていく様は、つらくて、悔しくて、悲しくはあったが、これが報いなのだとも子供ながらに思った。  父を含めたオークたちは、人間族をたくさん、危害を加えられてもいないのに、おもちゃで遊ぶように理不尽に殺めた。  だから人間族だって黙っている訳がない。復讐は復讐を生むだけ。  その夜を境に孤児となり彷徨っていたが、子供のオークに居場所なんてなくて。きっと非人間族というだけで、誰かに見つかったら即座に殺されるかもしれなくて。  唯一匿ってくれたのがゴブリン族だった。族長で、後に親代わりとなる彼は、ローゲと名乗った。

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