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第2話

目が覚めたことに驚いてしまった。最早この意識が覚醒する日が終ぞ来るとは思わなかったからだ。 状況が掴めず、とりあえず身を起こそうとしたところ痛みが走った。難儀なもので、機械仕掛けの体にも痛覚は残されている。一見非合理的に思えるが、痛みを感じなければ、この体が壊れるまで活動してしまうだろう。そうなっては、修復に長い時間を費やすことになる。つまり今この体は、修復が必要な状態にあると警告を出しているのだ。だが、修復など出来るはずがない。 ここは、未知の領域だ。楽園探索の旅の途中、異星人の奇襲を受け、戦闘機が故障し、不時着したことまでは推測できた。侵略の対象ではないため、この惑星に関する情報は入手していない。おそらく戦闘機は大破し、故郷と自分を繋ぐのは腕の通信機のみ。しかし、応答はなく、液晶は沈黙したままだ。このままでは、こちらから何も伝えられなければ、故郷にもこの状況は伝わらないということだ。 仮に、連絡を取れたとして、探索員一名が戦線から離脱しただけの話だ。玩具一つ欠けたところで、人々が何か思うところはあるだろうか。救助は断念せざるを得なかった。その数文字が記録されるだけだ。下手をすれば、それすら残らないかもしれない。そういうものだ。所詮駒でしかない。 ただ、渇いた笑いがこぼれるだけ。 何か期待していたわけでもない。使い捨ての自己に希望も絶望もない。結局目が覚めた所で、このまま朽ち果てるしかないのだ。戦闘機とともに散っていたか、ここで死ぬか。遅いか早いかだけの違い。 生かされた生が終わるだけ。故郷に残してきたものもない。悔いなどあろうはずもない。 痛みを感じない程度に視線を動かすと、ここは洞窟のような場所に見える。巨大な空洞。しかし不思議と光が差し込んでいるからか、暗闇ではない。 風の音が聞こえる。構成物質の大半がガスであるような惑星では、こうは行かない。環境は人類生存に適していることは認められる。この星が、侵略の対象になっていないことは、実に皮肉とも言えるか。 未知なる大地からの視覚、聴覚情報の入手は無意味である。すべての感覚を遮断してしまおう。

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