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第5話 生まれて初めて

 ああ、なんか、悔しいけど。  イイ男だな、こいつ。  ずっと張り合ってきて。  多分、誰より、こいつのことを、意識してて。  ……誰より、知ってる気がするのに、こんな表情は初めて見た。 「意味は、分かるけど……マジで、いいの?」 「なにが」 「……オレ、だよ?」  オレのセリフに、颯はオレの顔をマジマジ見つめてから、は、と笑った。 「むしろ誰より、お前には興味しかねーけど」 「――――……」 「誰より認めてるし。……こんなお前を誰かに任せるとか、絶対ぇ嫌だけど」 「――――……」  あ。ヤバい。  なんか今、ぶわ、と体温が上がった。  何だこれ。Ωって、こんな風に、なんの? 大変だな、ほんとに。  色々初めてすぎて、戸惑いしかないけど、もうその感覚を追っていくしか、今のオレにできることは無い気がする。  つかまっている颯の服を、ぎゅ、と握り締めた。   「……颯が、マジで、良いなら」  そう言って、見つめると。 「良くなきゃ誘わない」  はっきりそう返してくれた颯も、きつそう。  オレから漏れるフェロモンに煽られて、辛いんだと思う。初めてだけど、自分でも、分かる。強烈なんじゃないかな、これ。βの運転手を頼んでくれた意味もそれだと思う。  お姫様だっこの二回目は拒否して、なんとか支えられて正門前に移動、呼んでくれた車を待つ。  颯と居ると、どんどんひどくなってる気がする。ていうか……颯と会ったから、こうなったのかな? さっきまで体調が悪いと思っていた程度だったのに。……颯に、反応、した? 分かんないけど。  颯が、上がりそうな息を抑えてるのも、分かる。  オレに触れてる、颯の手も、体も、熱い。  お互いがお互いに、めちゃくちゃ、反応してる。なんか今日、硬い生地のジーンズはいてきててよかったとか、変なことを思ってしまう。  息が、荒い。オレは、抑えるのが無理になってきてる。  颯の瞳を見つめるだけで、襲ってくる衝動は、熱すぎて、怖いくらい。  ――――……抱かれたい、なんて、生まれて初めて、思ったのに。  今までのどんな衝動よりも、強い。

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