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第4話 何の因果だろ。

 突然そんなことを言われても、と思う。  でも理屈じゃなくて、感覚が、言葉で否定しようとする自分を止める。  不本意だけど、多分オレ、颯が言ったやつ。「変性」だ。  どうりで、ここずっとおかしかった。  Ωか。  オレんち、αばかりの一族なのに。途中でΩになるなんて。何の因果だろ。  でも、事実を、否定できない。  この、異様な高ぶりも、どくどくしてる心臓も。  ……颯を見てると、湧き上がってきてしまいそうな、このヤバい、奥からの衝動、も。  ごく、と喉が鳴った。 「ごめん……颯、降ろして」 「何で」 「なんかオレ、お前の側にいるの、まずそう……」 「……奇遇だな」  颯が少しだけ笑いながら、オレを、一度降ろした。 「オレも、そう思ってた。少しこのまま待ってろ。つかまってていいから」  言いながら、颯はオレの腰を支えたまま、スマホを出して手早くどこかに電話した。 「βの運転手の車を学校の正門に。できるだけ急いで、頼む」  そう言って電話を切ると、颯をオレを見つめた。 「慧、よく聞いて答えろ」 「……うん」 「これから、オレんちに、連れてっていいか?」  颯の手が、オレの頬に触れる。  颯とオレの関係で……もし高校生の時とかに、こんなことされたら、とっさにパンチを入れてたんじゃないかと思うのだけれど、今は。  その手に、ぞく、と体の奥が震えて。  ヤバい。  すぐに頬からは手を離して、颯はオレの背を支える。 「嫌なら、病院でもお前の家でも、もし好きなαが居るならそいつんとこでも、どこでも連れていってやる」 「――――……」 「だけどオレは、お前をオレの家に連れていきたい」 「颯……」  自分がΩってことも。  颯の家に誘われてるってことも、少し前までは考えもしなかったことで。 「オレの家に連れて行ったら……どうなるか分かる?」  もちろん、分かる。意味。  今までは感じたこともなかった、颯の匂いが、ヤバい。 「……オレ、そんな、馬鹿じゃねえよ」  じっと、見つめ合う。

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