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第20話 そのための体 ※

「……っん」 「慧……」  引き抜かれて、ゾクンと震えてるところを、くるっとひっくり返された。  腰を上げさせられて、あてがわれて、そのまま、また中に受け入れる。 「……ン、ァ……!!」 「慧……」  背中に、颯の手が触れる。 「背中、綺麗だな……」  囁かれるだけで、震える。 「……っひ、ぁ……っ」  仰け反って、中だけで簡単にイかされてしまった。ベッドに崩れ落ちて、ぎゅう、とシーツを握り締めたまま、荒い息を繰り返していると。颯が、すり、とうなじに触れた。 「――――……慧……」  中、気持ちよすぎて締めたまま、うなじに這わされた颯の舌に、また小さく仰け反る。 「……あっ……」  うしろの颯を、ぎゅ、と締め付ける。  握り締めてた指に、颯の指が絡んで、握られた。  うなじ。そのまま、噛まれたら――――……颯と、繋がれるのかな。  思いながら、颯の手を握った瞬間。  どく、と心臓が音を立てて、鼓動が早まった。  血が沸騰したみたいに、全身、かあっと、熱くなって。 「……っあ」  ぎゅうっと、目をつむる。  今日、何回も、この体、ヤバいって思ったけど。一番、やばい、かも。  抑えられない位、息が上がって、震える。 「……あ、……はやてっ」 「慧? ……っ……」  颯に名前を呼ばれた瞬間。  真っ白になって――――……自分の体、制御不能。 「大丈夫か?」 「……っはや、て」  絡んでた颯の手が外れて、また、ぎゅっとシーツを握り締める。  汗がポタポタ、落ちていく。濃すぎるくらい甘いフェロモンが、湧き上がるみたいな。 「……っつか、お前、やば……」  颯のが、中で余計、大きくなるのが、分かる。それを、きつく締め付けると、ますます、どうにもならなくなる体。 「……っふ、……ぁっ……はやて……」 「――――……っ」  浮かされたように、出てくる颯の名前。  オレは、颯を振り返った。 「……噛ん、で……い、よ……」  分かんないけど。  Ωの体も、ヒートも、番とかも、良く分かんないけど。  オレが、望んでて、颯も、望んでて。  今、そのための体に、なってる気が、した。  理屈はわかんないけど、そう、思った。  視線が合うと。颯は、まっすぐにオレを見つめて、頷いた。 「――――……分かった」  颯の顔。熱っぽくて、男っぽくて――――……多分、すごく興奮状態、なのに。それを抑えて、ふ、と一度息をついてる。 「――――……はや、て ……」  苦しい中で、笑みが浮かぶ。 「……後悔……すんなよな」  荒い息を抑えて。  今までのオレ達の間で交わしてたみたいな口調で言ったら、ニヤ、と笑ってしまった。 「――――……」  颯も、ふ、と唇の端を上げて笑う。 「しないし、させないから」  はっきり言われて、不意に、じわ、と涙が浮かんだので、オレはまた俯いて、シーツを握り締めた。  深く奥まで入れられたまま。    颯に、噛まれたのを感じる。  涙が、溢れ落ちる。  ――――……全部が熱くて。全部が、まっしろに、なった。  

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