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第33話 お互い、初?
「食べれないから、離れてほしいんだけど……」
「ん? ああ」
多分、ちょっと口というか顔、ふくらんでるオレ。
だってなんかさ。カッコよすぎてむかつくんですけど。
……ていうか、オレ、こんなのについてけないし。
自慢じゃないけど、恋愛経験ないんだからな!
デートはしてたよ、つきあってって子と。好きになれたら付き合おうと思ってたしさ。
結構オレ、モテたし。覚えてない位、色んな子とデートしてた。
オレがデートしてた子たちによくよく聞いたら、オレが誰にも手を出してないの、分かっただろうけど。そんないちいち聞く奴居ないし、何にもしてないとか触れ回る子は居なかったみたい。逆に何にもしてないのに、したみたいな噂は流れたりして。オレももういいやって、別に否定もしなかったし。
だから皆、オレは結構遊んでて、経験豊富って思ってるらしくて。
だから、慣れてる子なんかだと、デート初日に、誘われたりして。
はー?! 初日でホテルとか、行く奴ほんとに居んの? って、オレは内心、ドン引きしてた。
……と言うことで。オレはデートはしてたけど、そういうことは誰ともしてないし、それに、オレが好きになって、大好きだからって、デートしたことなんかなくて。
よく考えたら。
……オレが、好きだなって思う奴と、二人きりって。
これ、あの変性のヒートもどきの時を除いたら、今が初めてなのでは。
ということに、突然気づいてしまった。
しかもその相手が、なぜか、ずっと張り合ってきた颯とか、正直、今でも、意味がまったく分からない。
この、好きだという気持ちすら、いまいち、良く分からない。
「慧、これうまい。ほら」
「え、あ……」
声に惹かれて、颯の方を見ると、フォークに刺した食べ物が、口の前にあって、自然と、口を開けてしまった。
「…………」
もぐ、と。自然と食べてしまって。
「あ、おいし」
言った瞬間、超近くに居る颯が、オレを見て、ふ、と目を細めた。
「――――……っ」
急に恥ずかしくなって、颯の目の前で、かあっと赤くなったら、すごく驚いた顔をされて、ますます恥ずかしい。
「あー……なんか」
「え」
フォークを置いた颯に、腕を引かれて、そのまま、ぎゅう、と抱き締められてしまった。
「……っは、やて??」
「何な訳、その反応」
笑み交じりの、優しい声。
「こういうの照れる?」
「……っ」
黙ったまま頷くと。
「――――……やば。慧、可愛いな」
クスクス笑われて、またちょっと。いや、かなりムカつく。
「……っお前は、慣れてるのかもしんないけど、オレは、慣れてない、し」
颯から離れて、喧嘩腰に言おうとしたら。
唇が塞がれて、言葉は飲み込まされた。
ゆっくり触れた唇が離れると、颯が、触れそうなくらい近くで、クスッと笑う。
「今みたいなことしたの、初だけど。慣れてやった訳じゃない」
「っ……うそ、ばっか。慣れてるっぽい、し」
「なんか膨れてて可愛かったから、食べさせたくなっただけ。したことない」
「――――……」
「オレの元カノにリサーチしてみ? してないから」
「……リサーチできないと思ってる、だろ」
「じゃあオレの友達に聞いてみな。やる訳ないって言うだろうから」
「…………」
「こんなに人、可愛いと思うのも初だし。……つか、ヤバいな、これ」
頬に触れる、颯の手が熱い。
ていうかそんなこと言われると、もうどうしたらいいのかわからないくらい、内心、ドキドキ。
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