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第32話 知ってること

「なんかオレ達って、よく知ってる気がするのに、何も知らないんだな」 「――――……」  笑み交じりにそう言った颯をまじまじ見てしまう。  オレもさっきからずっと、そう思ってた、けど。 「ん。知らないよね、何も」  普通は知り合って、それで好きになるんじゃなかったっけ?  こんな、結婚生活の始まりって、ある??  いいのかな、これで。  颯は、オレの変性に巻き込まれて、なんか勢いで……?  いくら運命とか言っても、それって、本能とかよく分かんないやつだし、良かったのかな。 「なあ、慧、こん中で、好きな食べ物、何?」 「え。……あ、今とってくれたの、すごい美味しい」 「そっか」 「サーモン好き。たまごも。唐揚げも好き……っていうか、ここのは皆美味しそうかも」  テーブルの上を見ながら、そう言うと。 「好き嫌いあんまり無い?」 「んー……みょうが嫌い」 「はは。何その小さいピンポイント」 「だって嫌い……」 「分かった」  クスクス笑いながら、颯の手がオレの頬に触れる。 「あとは?」  何で触れるんだろ、と、ドキドキしながら、固まったまま、嫌いなものを考える。 「……なんだろ。えーと……セロリもあんまり……パクチーとか?」 「あぁ。なんとなく分かった。匂いか」  ふ、と笑いながら、颯がオレを覗き込む。 「は、やては……? 無いの?」 「オレは、辛いのあんま好きじゃない」 「あ、オレも。辛すぎるのは無理」  一緒、と笑うと、颯の手に、引き寄せられて、キスされる。 「楽しみかも」 「……?」 「慧のこと、全部、知ってくの」 「――――……」 「知らないとこから始まるのも良いよな」  …………。  ………………とくん。  ふわ、と嬉しくなって。  体温がすこし上がったような。 「とか言ってさ……なんか、オレのこと知って、すごい嫌いなとこ、あったらどうする??」 「嫌いなとこ?」 「なんか……価値観、違うとか。あるじゃん?」  心配になりながら聞くと、颯は何やら面白そうに微笑んだ。   「でも、一番大事なとこ、知ってるしな」 「……?」 「抱いてる時のお前。すげえ可愛いの知ってるから」 「――――……っ」  また熱くなる。なんかもう、顔熱くなる病、確定では……。 「あとから何が出てきても、別にどうとでもなる気がする」  そ、そういうことでいいのか、と思いながら颯を見ていると。 「それに今までオレにつっかかってたお前、ずっと好きだったし。こないだ聞いた、今まで付き合ってこなかった理由とか、ちょこちょこお前が言ってる色んな考え方とか。可愛くてたまんないから、平気だと思うけど」  ……ひえー。心臓がバクバクしてきた。顔が熱い。  颯って、こういう奴なのか。  無理、こんなの、何も返せないぞ。  ていうか、そんな近くで見つめんなってば。……はずいー。ひえ……もう無理。     (2023/9/24) お礼など♡ ◇ ◇ ◇ ◇ 順位がすべてじゃないのですが……今日、見てみたら嬉しかったので( ノД`) ふじょで、新作1位でデイリー4位。 エブリでもトレンドBL1位デイリーBL5位 今日小説全体で29位の通知が来ました👀 アルファではBL7位 小説全体で60位/ 199,369件👀 毎日いきあたりばったりで軽く楽しく書いてるので… 新作ってことで強いのと、オメガバースが人気だからなのでしょうけども、 颯と慧を読んで頂けて、うれし…🥰 嬉しかったのと、ついつい甘々颯のセリフを書きたくなったので更新♡ 読んで下さる皆さま、日々リアクションくださる皆さま、ありがとうございます🥰💖 感想頂けて、とても楽しく続き書けております…♡ お気軽に聞かせてください~💖

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