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第36話 ゆっくりとは?

 こないだオレ、どうやって、颯と向かい合って、してたんだっけ……。  なんか浮かされるみたいな中だったから、もう、なんかいまいち。  そういえば、この家にきて、結婚して初めての夜って、ことは。  ……初夜というやつなのではないだろうか?  なんか恥ずかしいことに気づいて、カチコチと固まっていると。  キスを離した颯が、ふ、とオレを覗き込んだ。 「……なあ、慧?」  じっと見つめてくる瞳を見ると、もうほんと颯はαだよなって、心底思う。αの中でも一目置かれるα。視線だけで、捕らわれてしまいそうな。  オレ、こいつに張り合いまくってたんだよなぁ。  ……思えば、頑張ってたな。オレ。うん。 「慧は、こないだのことって、ちゃんと覚えてるのか?」 「……こないだって? あの日の?」  心の中の動揺は見せないように、なんとか普通に答える。 「どうやって抱かれたかとか」  っ。どうやって抱かれたか、とか。  普通に言うなー! 恥ずかしいっつの。聞くな……! 「……なんとなく、覚えてる」 「なんとなく?」 「だって、なんか……体ヤバかったから……」 「ああ、なるほど」  颯が、オレの腰に両手を巻きつかせて、ぐいと自分の方に引いた。  うわ。筋肉が。……気持ちいい、というか。あの日散々、しがみついた体。  わー、もう……そういうのだけは、はっきり覚えてるぞ、オレ。  どくどくどくどく、心臓がうるさい。 「慧」 「……?」  なんだよ、早く言えよ、あんま見つめんな。心臓が速くなってくのが、くっつていてるとバレそうで。 「抱かれる方は初めてだとは思ったけど、セックスが初めてとは思わなくて。いくらあんな状態だったとはいっても、急いでごめんな」 「…………」  え、と、颯を見つめてしまう。  言われたことを、自分の中でリピート。  ……うわー……。  なんかオレ、颯がすごく好きかもしれない。  こういうの。言ってくれるのって。  ……嬉しいやつだ、絶対。 「だから今日は、ゆっくりする」 「ん??」 「キスから。ゆっくり、しような?」  キスからゆっくりってなに……?  颯を見つめていると、颯の唇が、オレの頬に触れる。  ちゅ、と優しく触れて、また、少しずれてキスされて……。  なんか、ちゅっちゅってされて、くすぐったいし、恥ずかしいし……! 「は。……真っ赤」 「っ……るさい……」  なんか、クスクス笑われるけど。  お前のせいじゃん……! 「――――ほんと、ここまで可愛いとか……」    優しいとしか取れない、笑いを含んだ声で囁かれると。  っマジで恥ずかしいし……!  ほぼ涙目のオレは。  なんだかすごく優しい瞳と視線が絡んだままで、唇にキスされた。 ◇ ◇ ◇ ◇ (2023/9/27) ◇ ◇ ◇ ◇ 甘すぎかなーマイッカ( ´∀` )

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