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第57話 颯が居る時 ※

「ん?」  何で笑うの、と見上げると。 「なんかすごく、色んなことを考えてそうな顔してて、面白いから」 「おもしろい……」 「あ。まあ。少し、な……?」  口元を軽く握った手で押さえてるけど、絶対、すごく笑ってるし。  むむ、とちょっと睨んでいると、颯は少し首を傾げて、オレと視線を合わせた。 「オレは、実はお前の周りの奴らに、結構妬いてたのかもなーと思っただけだから」 「え?」 「お前といつも一緒に居れるから。……オレにはいつも喧嘩腰だったろ。まあそれはそれで面白かったし可愛かったけど。なんか、楽しそうにお前と居る奴らに妬いてたのかも、って今思った」 「――――……」  え。妬いてもらってたのって、可愛い女の子じゃなくて、オレ??  瞬き複数回。  なんか、めちゃくちゃ恥ずかしいけど、すっごく嬉しくて、なんだか、ふわっと体温が上がった。 「――――……はー……」 「え?」  あれ、と思った時には、なんだかうまく、ソファの上に押し倒されていた。 「……颯?」 「お前のその、甘い匂いさ……」 「……」 「昼間も一回、したんだけど」 「――――……」  あん時かな。フェロモンとばしまくりそうだった時? 「ちょっとおさえらんない?」 「――――……っ」  組み敷かれて、真上の颯は、ちょっと熱そうに、首元を開いた。  どき、とした瞬間。  ……もっと、強くなった気がする、オレの匂い。     「……でき、ないかも」 「それ、他のαんとこでしないで」 「……他の人、反応、しないんじゃないの……?」 「衝動的に襲われる原因にならないってだけ。……強くなれば、甘い匂いは分かる」 「…………」  ……昼間、皆、分かったのかな。言っては無かったけど。 「慧」  顎を捕らえられて、まっすぐに颯と視線を合わせられる。 「もうオレのだからな」 「――――……」  なんだか急にその気になったらしい颯の、男っぽい、笑み。  どきん、と胸が。もう、はっきり言って、痛い。  心臓、痛いくらい。  きゅん、なんて飛びこえて、ぎゅん、みたいな。  またなんか、自分からふわふわ香ってくるのが分かる。  なんなんだこれー、自分でどうにかできないって、不便すぎる。  最初からΩの奴は、どうにかできんの?? ヒートは大変って聞くから無理なんだろうけど。こういうのは……。 「なんか、ほんと心配……」  ちゅ、とキスされて。 「αの特徴でさ―――」 「……うん?」 「独占欲が強いっていうのは、オレにはあてはまんないって思ってきたんだけど」 「……??」 「違ったみたい」  ……独占欲が。  …………今あるってこと?  ああ、なんか、オレが嬉しいって思うこと、これ以上言われると、こんなの止められるわけもない訳で。あ、でも待てよ?? 「あ、颯、大丈夫、かも」 「……何が?」 「これ……今んとこ、颯、居ないと、なんないから」  だから大丈夫、と安心してもらおうとしたら。  なんか。急に颯から、いい匂い。あ。これ。  と思ったら、ふー、と息をついてから。 「あー無理。風呂はあとでな?」 「え? うひゃっ」  颯の手が、服の裾から滑り込んで、肌に触れた。  びっくりして出た声に、颯がふ、と笑う。 「それも面白いけど。……もっと可愛い声、だして」  クスクス笑って、首筋にキスして、ぺろ、と舐める。服の中の手が、胸を撫でた。 「ん……ンっっ」  びく、と震えて漏れた声。颯を見上げると、クスッと笑って。 「ん、そういう声」  可愛い、と言われて、キスされる。熱い手が背中に回って、片方の手は、胸に触れてくる。 「……っ……」  分かんないな。可愛いって。  ……オレ可愛い訳じゃないと思うし。  でも。なんか、颯、可愛いって、しみじみ言ってくれるから。  まぁ……いっか。 

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