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第56話 ヤキモチ

「何て? えっと……オレの、αの友達?」  じっと見つめたまま、聞き返すと、ふ、と颯は苦笑い。 「今日、慧の周りに居たのはほぼαと、何人かはβ?」 「うん。そだったね。あ、でも、オレ、Ωの友達も多いよ?」 「知ってる」 「知ってるの?」 「お前大体いつも、友達引き連れてオレんとこ来てたろ。知ってるよ」  クスクス笑って、颯がオレの頬に触れる。   「別に引き連れて戦いにいってた訳じゃないよ??」 「一緒に皆と居る時にオレを見かけるとそのままこっち来たってだけだよな」 「うん。そう」 「――――恒例の感じだったけど。懐かしいよな、なんか」  思い出す風に目を細めて、颯がオレを見て笑う。  あれ、懐かしい思い出なの? と何だか笑ってしまうオレ。 「面倒くさくなかった? オレ」 「めんどくさいっつか……面白かったよな。つか、お前くらいだし、オレに、つっかかってくんの」  ……はい。なんか、他の奴がつっかかっていかなかった理由。  なんか、離れてから、というか。最近になって余計に分かるというか。  オレよく颯にはりあってたなーと、最近何度も、思ってる。 「……お前がつっかかってこなくなって、つまんなかったしな、大学」 「そうなの?」 「そうだよ。って言わなかったけ?」  すぽ、と抱き締められた。ぎゅ、と抱き込まれて、すり、と頭に顎をすりすりされてる感。 「……? 颯?」 「良かった、番になってて」 「……ん??」 「周りαばっかりとか、心配だから閉じ込めてたくなってたかも」 「え」  びっくりして、颯を見上げると。 「ん?」  と笑う。 「颯、そんなこと、思う?」 「思うだろ」  ふ、と笑ってオレを見下ろす。 「……それって、ヤキモチ、みたいな感じ?」 「みたいって……もうそのまんま、ヤキモチだと思うけど」  …………あ。嬉しい。  なんか颯ってさ。  オレの嬉しいと思う言葉を、もう分かってて、それを言ってくれてる気がするくらい。  いっつも嬉しい。  颯って、オレの心が読めるのかな。  かなり本気でそう思って、「エスパーですか?」と質問しながら、じーーっと見つめてみる。 「……どした? 妬かれるの嫌い?」  ふ、と笑んでオレを見つめる。ぷるぷると小さく何度か首を振った。  これは伝わらなかった。と、ちょっとおかしくなりながら。 「嫌いじゃないかも」 「かも、なの?」 「んー? ……今まであんまりヤキモチとか焼かれたことないから、なんか……ぴんとこないんだけど」 「付き合ってないから?」 「うん」 「……でも慧の周りには色々そういうの渦巻いてたと思うけどな」  何だか良く分からないことを言いながら、颯はクスクス笑った。 「慧は鈍そう……」  ぷに、と鼻を摘ままれる。 「オレも、ヤキモチ妬いたことは無い――――あぁ。あるか」 「え。あるんだ」  そっか。……ふーん。  颯にヤキモチ妬かせるとか、どんな女の子だろう。  めちゃくちゃ可愛いとか……綺麗とか?  むむ。  いーなー。  なんオレも、そんなだったら良かったのに。颯に妬かれるとか、ずるい。  ……はっ。これがヤキモチって言うのか?  むむ。  もしや人生初……。  色々考えていたら、颯が急に、ぷっとふきだした。

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